返した物
じんじんと痛む手を我慢して羽織を腕にかけて、鎖を引きずって歩く。普通に持っているだけなら痛くなかったが、めりこんだ鎖を思いっきり引っこ抜く時に、よく切れるように造られた棘が手に刺さってしまっているせいで、引きずるのも一苦労だ。
それでもすぐに乙鬼サマの家には到着。中に入ろうと戸の取っ手を握ろうとすると、それよりも早く戸が開けられた。
「……。」
「…あ、乙鬼サマ。ただいま帰りました。おじいちゃんも多分許可くれたから、しばらくまた居れるよ。……って、どうしたの?」
話を聞いているのか、聞いてないのか、彼の視線は私の身体、足元、肩、腕などいたるところをじいっと見ている。多分話しは聞いてなかったと思う。
でも、なんだろう。もしかして匂うとか?
「……乙鬼サマ?」
「怪我をしたのか。」
「え、なんで?」
「―――――血臭がする。」
た、確かにトゲトゲ刺さってますけども。まさかそれで出てきたのかな。どんな鼻してるんだろう。
「どこを怪我したんだ。」
「あ、えっと手、です。」
手を差し出そうとする前に、彼に強引に手を取られた。まじまじと両手を凝視する彼は、いったい何でできた傷なのか分かったらしい。目線は明らかに、手から足元にある鎖に移された。
「お前、そんなに強く握るほど重かったのに何故持ち歩く?」
「あぁ…いやそれは…。」
龍華サマに献上しようと思ったからです。
しかし、龍華サマはいらないと激怒だったので、私が貰おうと思ったけれど、使えるものでもないので、返却。
羽織と、鎖を手渡した。鎖は雑に扱ってしまっているので、少し傷ついてしまっている。どうもすみません。
羽織はぶかぶかだったけど、丁寧に扱っていたので、多分怒られないと思う。
羽織を受け取った乙鬼サマは、ふと思い出したように意地の悪い笑みをうっすらと浮かべて口をひらいた。
「なんだ、もう不要か。安眠するんじゃなかったのか。」
……!そういえばそうだった。龍華サマに献上するということを内緒にするために、適当に思いついたことを言っておいたんだった。
それはもう後先考えずに、乙鬼サマのストーカー発言を何度もしたんだっけ。
しかも忘れてたけど、実はこっそり切れた髪の毛も数本ゲットしてたんだった!!!ポ~ケットの中には髪の毛~が数~本♪入っちゃってる。
なんだっけ、この髪、枕に埋めて乙鬼サマの夢を見たいとか言ったんだっけ。だめだこれヤバイやつだ。
でも今更変に言い訳しても多分無意味だよね。
ならばもう開き直ろうではないか。
「えっと、それはもう…うふふ…っいい夢見れました。髪は、返してももう使えないし、これは私の枕の中に再び入れておくことにします!」
「……。」
まさか開き直るとは思っていなかったのか、意地悪そうに笑っていた彼は、唖然として、どこか引いた表情をしていた。
その瞬間私は、全力で後悔した。




