激怒
なあんて言いつつ、家に一旦帰ってから朝早く森に戻ってます。
もちろん理由は引き続きアキの家にお泊りということで了承してもらった。まあ休みなんだし、家でごろごろしてるのも退屈なんだろうということにしてくれたらしい。
多分おじいちゃんは気づいてるような気がするから、もうアキの家に毎日押しかける事はなくなると思うけど。
そんなことをふと思いながら森に戻ると、突然背筋がぞわりとするほどの異様な気配を感じ、歩くのをやめて諦めにも似たため息を吐く。
そして、覚悟をきめた私は、その気配をかもし出す者に声をかけた。
私の匂いを嗅ぎ取ったのか、元々近くにいたのかは知らないが、龍華サマ直々にお出まししてくるではないか。
「巳弥、まだ長を仕留めれぬか。」
あんたに出来ないことが私に出来るわけないだろうが。自分でやれ自分で。
「って思ってるのは内緒だ内緒!」
「ほう、隠し事をすると?」
「えっ?あ、いえ!!違います違います!!ちゃんと乙鬼サ…長の一部盗って来ました!」
その言葉に、瞳に一瞬キラリとやどったような気がしたが、乙鬼サマから奪った物を出すと、さっきまでの嬉しそうな表情はどこへやら。龍華サマの表情に笑顔はない。
「おい。」
「……はい?」
「これはなんだ。」
何って、長から命からがら盗んだ(というか、しぶしぶ貰った)ものです。
そう言うと、地面に置いていた乙鬼サマの鎖が飛んできた。むろん投げたのは正面で激怒している龍華サマ。
あんなに重くてズルズルと引きずるように持っていた鎖を、龍華サマは軽々と片手で持ち上げて私めがけて投げてきたのだ。
あっぶねーよ!死ぬよ!なんつー物を投げてくるんだ本当に。
条件反射でしゃがんだため、何とか無傷ではあるが、本当に殺すつもりだったんだと思う。何故お怒りなのか私にはわからないけど。
「貴様は馬鹿か。奴の亡骸を持ってこいと言ったはずだ。それをこんなガラクタなど持ってきおって。」
「わわっそんな雑に扱わないで下さい!私の戦利品……!」
「ッチ……。しかしまあ、奴に接近出来たことは事実。今回は許してやるか…。引き続き、ガラクタではなく奴を確実に始末してこい。」
「ふう…生き延びた。」
龍華サマに食い殺されることなく無事に帰してもらえたけど、何でもいいから持ってこいって言ったのは龍華サマじゃん。勘違いしてもしかたないっしょー。
投げ捨てられて地面にめり込んでしまっている鎖を力いっぱい引っ張ってなんとか取れたはいいが、いったいどんな造りになっているのか、目に見えないほどの無数の棘があった。薔薇かよ!
おかげで手には棘が刺さりまくり。血が滲んでいる。龍華サマがぶん投げた勢いで当たってたら即死だよねこれ。
こんな危険物持ってたら危ない。早く乙鬼サマに返そう。うん、そうしよう。




