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覚めた夢の続き  作者: 神無
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企み

「おい人の子。龍華様が御呼びだぞ。」



「へ?」




只今、桜の木でまったりとくつろぎ中。―――だったのに、あっさりと眠気すら払ってくれたのは、昨日会ったばかりの龍華様のしもべ、目玉だ。


ハッと幹にあずけていた背を起こし、辺りをきょろきょろしたが目玉は見当たらない。もしかして幻聴?会いたくなさ過ぎて幻聴まで聞こえるなんて私ってば……。




「おい!此処だ!」



「え。」



声のするほうを向いてみる。すると、木からかなり離れたところに奴はいた。遠いよお前。何故にそんな離れてるんだ。



木陰から半分顔を出してこちらを見てくる様は、さながらおばけ。いやこいつオバケだった目玉一つだし。まばたきすらしないその目玉はじっとこちらを見つめるだけ。いいなあドライアイに困らないんだ~。と頭の片隅で思いつつ、龍華サマの呼び出しが来たなら行くしかあるまいと枝から飛び降りた。




「まったく人間のくせにあんな強力な妖気の中で眠りこけるなど、恐ろしい奴め。」



「それほどでも」



目玉について行きながら、白蛇が今にも噛み付かんと威嚇しているのを、止めようか止めまいか考えつつ、とりあえず龍華様には会わなくてはならないので、また後日にしようと白蛇を服の中に押し込めた。



そんなこと考えられているなどと思いもしない目玉は隙だらけのまま前を歩き、私を待っているという龍華サマの元に到着したのだった。




「巳弥。未だ仕留めれぬか。」



「はい?」



「長の骸を持ってこいと言っただろう。」



「え、それって……」


―――なんだっけ。



いや、いやいやちゃんと覚えてるけども!でもそれって長に会う前に言われた任務であって、龍華サマをあそこまでズタボロにした長のどこに隙があんだよ!!


あまりに無理すぎてもうなくなった役目かと思ったわ!


か弱き乙女にそんな命がけの任務与えるんじゃねえよ!と思わずでそうになった口をごくりと飲み込んだ。




「お言葉ですけども…絶対無理じゃないすかね。」


「奴の首でも何でもいいから差し出せ。出来ないなら今ここでお前を喰ってやる。」



「行ってきます。」




返ってきた龍華サマの言葉に、思わずあっさりと頷き踵を返す。背後で、目玉も連れて行くがいいとか言われたけど、むしろ邪魔なのでいらないと言って走ってきてしまった。



目玉はどうやら、私が乙鬼サマの住処に入ろうとしたことは特に事故としか思っていないらしく、報告などはしていないようだった。



とりあえずは一安心。しかし問題は、どうやって乙鬼サマの骸を持っていくかだ。彼を敵に回す気はさらさらないので、正しくはどうやって騙すか。



違う妖怪の首持っていっても、顔全然違うから普通にバレるし…。それかその辺の妖怪の顔面ズタズタにして判別できないようにすれば…。ってなんで私こんな惨いこと考えてるんだろう。




「いや、待てよ。身に着けてるものでもよくない?」



そうじゃん。(首でも)「なんでもいい」って言ったんだから、何でもいいんじゃん!!ははっ


そうと決まればいざいざおさの元へ!



「乙鬼サマー!」



戸を壊さないように元気よく中に入ると、彼は部屋の中で壁にもたれ、立てた肩膝に片腕を乗せて座っている。俯いた状態だった。いつもは瞑っている目が見えるのだが、今回は前髪でよく見えなかった。俯いてるので、恐らく今回は本当に寝ているのだと思う。




だとしたら、結構チャンスだ。寝ている間に、ちょいと身に着けているものを拝借できる。ちゃんと返せるかは分からないので、ある意味窃盗。



足音を抑えて、忍び足で近寄る。スースーという音が聞こえる。良かったちゃんと寝てる。



何を盗ってしまおうか、静かに歩きながら考えていると、彼の着ている黒色で、金の刺繍が施された羽織が肩にかかっているだけだったことに気がついた。


わりとあたたかくなっているから、羽織を肩にかけるだけにしたのかもしれない。



こんなにも都合よく脱いでくれるなんて…!罠か!罠なのか!?と思いながら、静かに羽織に手をかけた。



布の擦れる音がやけに響いたが、何とか彼から奪うことに成功した。




「よっしゃッ!」



小声で思わずこぼれると、ガッツポーズをしながら羽織を抱きしめるようにギュっと握り締める。



あとは、外に出てさっそく龍華サマに届…




「おい。何してる」




「…………。」




喜んだのも束の間、背を向けて忍び足で歩く一歩目で、背後から声がかかった。



もちろん乙鬼サマ。しっかりと羽織を掴んでます、確信犯ですはい。



自分の羽織と、私を交互に見た後、再び問うてきた。そりゃ自分の羽織が盗まれれて、尚且つその瞬間を目撃してしまったら理由が気になるのは当たり前ですとも。



でも、どうやって言い訳しよう。羽織盗んで何するつもりよ私!!どうする。龍華サマのことは言えない。でも、言わなかったら絶対これ変。


いや待てよ。私、乙鬼サマの盗撮もしてるんだった。からの羽織も盗むってもはや完全なストーカー。


きっとアルバムのこともバレてるんだろうし、もう危ない奴としか思えない。自分が怖い。



滝汗を流しながら、乙鬼の顔をおずおずと見つめる。やはり彼の表情は、どこか蔑んだような顔だ。なんというかドン引き、みたいな。やっぱりストーカーだと思われてるんだ。




ならもう仕方ない。開き直ればいいじゃないか。




「えと、あの…。」


「………」





「乙鬼サマのことが好きすぎて、羽織の匂いをかぎながら寝たらいい夢みれそうでつい………。」



え、おいおい何言ってんだよ私


どうしよう。もう固まってるよ乙鬼サマ。吃驚しすぎなのかもうドン引きしすぎでフリーズしてるのかもうかなりヤバイ。


さあドン引きでも何でもするがいい!なんとしても任務がバレるわけにはいかないんだー!




なかなか話し出さない乙鬼に、どんどん焦りと共に大量の汗が出てくる。足までガクガク震えそう。もうこの森から追放されるかもキモがられて。



どうしようかと硬直していると、ふいに彼は無言で立ち上がった。そのままこちらに歩いてくる。



「!?」



ヒッどうしよう!!




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