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覚めた夢の続き  作者: 神無
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逃亡

そんなこんなで天使と別れさっそく着いた長の住処。不法侵入しても殺されるどころか、怒られすらしないと聞いて早くもお泊りの部屋が見つかった。


白蛇もぐるぐると体を丸めてスヤスヤと眠ってしまった。そんなにここがお気に入りなのか。


大荷物の中にはもしものときのために地面で寝ても問題ないように枕と寝袋をもってきた。コロネパンのようにもこもこした寝袋の中に足を入れてあったまる。まるでパンの中に入ったソーセージのような気分だ。


なんだろう、すごくおいしそう。そういえばご飯食べてないんだった……。お腹すいたなぁ。



腹の虫がなった。まるで牛が鳴いているような奇怪な音に、白蛇が目を覚まして警戒している。ごめんその音、私の腹。

しかしその警戒も一瞬のことで、すぐに何故か私のほうに視線を送ると、再び頭をぐるぐる丸まった体に置いて眠ってしまった。え、もしかしてわかったの!?

なんなんだその、「もう慣れた」的な反応は地味に傷つくな。


すっかり寝ているのをいいことに、恨めしげに睨みつけてやった。警戒したら警戒したで突然暴れられても困るけど。


この白蛇は時々モモンガのようにびょんびょん飛んでくることがある。羽でも生えてんじゃねーのと思ってしまうほどだ。なので今そんなことされると、ソーセージパンになってる私はとてもじゃないが身動きが取れないので危険なのだ。



すやすやと眠る白蛇をまじまじと見つめていると、だんだん目蓋が重たくなってきた。今日はもうおさも不在みたいだし、また今度ルームシェアの許可もらえばいいや。



ゆらゆらと襲い掛かる眠気に逆らわずに、うとうととまどろみの中におちていった。



すやすやと眠りについてどれくらい経ったかは分からない。おそらく十分くらいしか経っていないだろう。


意識が覚醒したけど、目は開けなかった。自分と、蛇以外の気配を感じたからだ。その気配は風のように動くのを感じた。布の擦れる音とともに、自分の近くに何者かが座ったのが分かった。



どうしよう。起きたほうがいいだろうか。変な妖だったら、食われるかもしれない。だってほら今ソーセージ……



「―――巳弥」



「!!」



突然ポツリと名を呼ばれた。独り言のように漏れたその声は、知っているものだ。間違いなく、長のもの。やばいこれ家主帰ってきちゃった。ぐっすり寝てるとかやばくないかこれ。



しかも、不幸なことに名を呼ばれて思わずビクッと反応してしまった。絶対に起きてると気づかれた。


体を硬直させて目を瞑っていると、突然頭に何かが触れられた。スルスルと髪の毛をすかれる。手ぐしだと思われるそれは途中でつっかえたようで、髪の毛に些細な衝撃が走る。


髪の毛ごわごわだったのかな。なんだろうロマンのかけらもないこの状況。ちゃんとトリートメントしとけばよかった。



「――――狸寝入りか」



「……っ」



やっぱりバレてましたか。あはは


むくりと起き上がり自分の背中側で座っていた長のほうに向き直る。思ったより近くに座っていた長と目が合う。とたんに胸がドクンと波打った。なんだろうこれ。


じっと思わず見つめてしまう。彼の真紅の瞳は、無表情の中にも燃えるように輝いている。血のようにも見えるそれは時折恐ろしいと感じるが、その瞳の奥は透き通る水に揺らめく金の輝き。灼熱の炎のように強い瞳はとても美しかった。




「……どうして此処にいる?」



「えっ……とそれはしばらく森に住むなら此処にいればいいって言われて!」


「誰にだ?」


「天使な鳥に。」


「……?」



えっと確か、千世っていってた。そのまま千世さんにいわれたと言うと、特に気にもとめずにすんなりと納得した。


やっぱり此処にいてもいいんだ。良かった。地面で寝なくていいんだ。ぱちりと目覚めたら顔に虫が乗ってるとか最悪な事態になることないんだ。



本当によかった。こんなにあっさり此処に住めるのも、記憶があったころに長や他の妖怪とうまく付き合ってたおかげだ。たぶん。



いやでも、おじいちゃんはこの森の長のことをそれはもうかなり残虐で冷酷だとか述べていたけど、全然そんな感じではない。


雰囲気は確かに身震いするほどの威圧感がある。しかし、私の言葉に耳をむけるし、話したら応答してくれる。


それもやっぱり、かつて知り合ってたからなだけなのだろうか。他の妖怪には冷徹なのだろうか。会って間もないのでよくわからなかった。





「ねえ、えっと…乙鬼サマ。私の記憶がなくなる前は、知り合いだったよね?」



「……。それがどうした」



「もし記憶が戻ったらどうする?」



なんとなく聞いたのは、疑問があったからだ。翠が言っていた。記憶を消したのは、長との約定をやぶった罰なのだと。


妖怪の中で約束とはとても軽くできるものではなく命を持って守らなければならない。たとえそれが些細なことでも。


だから私のしたことは殺されても文句言えないのだとか。それなのに、今ここにいる張本人は、殺そうともしてこなければ、この家を寝床することにすら何も感じていないようだ。



でもきっとそれは記憶をなくしてるからなのだろう。だから記憶を戻したら、殺されるのかな。ならば、ここにいていいというのは記憶が戻ったかどうかの監視をするためとか?



ドキドキしながら、長の返答を待った。すると、彼は立ち上がり去り際に爆弾を落としていった。



「――――逃がさない。」




「…………。」




背を向けて戸から一歩外に出ると、一瞬にして消えてしまった。瞬間移動する速さでどこかに行ってしまったのだ。今はそんなことはどうでもいい。


ぽかんと開いた口が塞がらない。



何それ何それ!?どゆこと!?逃がさない?何それどういう意味!?


頭がパニック状態だった。爆弾発言をされる前に思っていたことから考えると、やっぱり記憶を戻したらその時に殺されるってこと!?それで逃がさない!?




「えええぇええぇえ!!!!」




―――――もう帰ろう。急いで帰ろう。


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