信用
「巳弥……この私に嘘をついたな。」
「ええっそんなことしませんて!私だって自分の命が惜し…じゃなくて、えっと……。蛇さんから聞きました。これ本当です」
「蛇だと?お前の首に巻きついてるそれが喋ったとでも?」
「ああ違いますって!この白蛇の主ですよ」
先ほど興奮のしすぎのせいで半身が人の姿とは程遠くなっている。鱗のような痣が肩から腕までおりて、指は尖った長い爪が伸びている。秀麗な顔もそのせいで、半分龍になりかけなのに、さらに歪められた顔は直視できないほど恐ろしい。
あれから、驚く翠等3人に対して向かい合うように龍華の隣で、どうしようと突っ立っていた時、すばやく龍華に連れられてどこか分からない森の奥に連れ去られてきた。
葵が追いかけようとしたのを視界の端に捕らえたが、その時龍華が口から真っ黒な瘴気を吐いたせいでそこから追ってくることはなかった。そして現在、どこだか分からない森の奥深くに居る。
「ああ、朱里だな…奴は長の味方だ。となると……はめられたのか…?いや、長は敢えて仲間に違うことを言っておいたのか。」
「朱里って蛇の親玉さんのことですか?うーん、それはどうですかね……」
おそらくそれは違う。朱里と呼ばれるあの男は、詳しくは知らないようだった。長が翠にしか詳しい居場所を言っていないことを彼は知っていた。だから、身を潜めてるということしか知らなかったに違いない。
「そもそもお前、あの狼と顔見知りだろう。何故黙っていた?よもや長と結託してるのではあるまい?」
「へ?え、狼て誰ですか?」
「さっきお前を連れて行こうと近づいた奴だ。」
言われてみれば彼は狼みたいだ。何の妖怪なのか特に興味もなかったので考えたりしなかった。
確かに知り合いだが、向こうは自分が無くした前の記憶があるが、特に話を聞いたわけでもないので個人的には知り合ったばかりのようなもの。
しかし、龍華はますます信用できないという表情で警戒心を露にする。
信用ないならないでいいからさっさと帰してほしい。そう切実に訴えたいが、そんな状況じゃなかった。
「知らない間に知り合いました。」
「……。」
呆れて言葉もでない。そんな顔を半分の美しい顔がしている。
最後に「お前は油断ならん」という疑い深い眼差しを残して、竜巻に巻き込まれるようにどこかへ消えていった。
傷が深くて、話すのも疲れたのかそのままどこかに帰ってしまったらしい。
「ちょっと待って私此処に置き去り!?!?」
一瞬にして静寂が訪れた森の中、嘆きの声が木霊した。




