失くした物
「アキーー!!どこにいるのー?」
森の中は恐ろしいというので、声を出さずに探そうか考えたが、この広い森だ。早くみつけなくては、暗くなってしまってからでは見つけることが出来なくなるため考えた末、大声で呼ぶことにした。
しかし、こうも早く声に反応した何者かが現れるとは思わなかった。
「おいおい……。お前の臭いがしたから来てみれば……お前こんなところで何やってんだよ……。せっかく「外」に運んでやったのに戻ってきたのか?」
「私の臭い…?あぁ!あなたさっきの……えっと、独り言ブツブツさんだ。」
「んなっ!なんつー覚え方してんだよてめえは!!」
どことなくショックを受けているのと、私が死んだフリしているのをいいことに独り言でブツブツ呟いていたのを聞かれたのが恥ずかしいのか、やけに興奮しながら怒ってきた。
「えー、じゃあ名前は?妖怪に名前あるの?」
「あ?……まあな。つーか、聞くってことはお前また此処に来る気じゃねえだろうな。」
「え、だめ?」
名前を聞くと、今の今まで怒っていた彼は少しだけ寂しそうな顔をした。しかし、一瞬のことですぐに不機嫌な顔に戻る。
「……葵だ。」
面倒くさそうに答えてくれた彼は背を向けて、「もう此処には来るな。」と低い声で言う。
私は彼の正面に回りこみ、理由を問うた。すると、ギロリと睨んで私の腕をぐいっと引っ張りそのまま引きずるように歩き始めた。
「ちょちょちょ!!何々!?」
「ああ!?帰んだよ!森には二度と入んじゃねえぞ!死にてえなら別だけどな。」
こちらを見もせず、ずんずんと進んでいく。あまりの速さに足も付いて行かずに、本当に引きずられているようだった。
しかし、葵と名乗る彼は、突然ピタリと立ち止まった。そのまま錆びたネジをギギギ…と無理やり回すかのように首をこちらに向けた。
やっと立ち止まれて大きく息を吐き呼吸を整え、葵の顔を見上げた。その表情はまさに、幽霊でも見たような驚きよう。
「な、何よ。」
「お、お前……やっぱり死んでね?」
「……。」
こいつは突然何を言い出すのか。桜の木で寝てたときも、お前はもう死んでいる。とか頭のおかしいことをいっていた。やっぱりこの妖おかしい。
手を握り気づいたようだが、それだけで何故死人だといわれなければならないのか。
頭にきたので、グーで葵の頬をぶん殴ってやった。不意をつかれたのか、クリーンヒットしそのまま地面にバタリと倒れてしまった。痛そうだったから心の中では謝っておいた。
「痛ッつ……。お前、血が通ってねえんだよ。今握った時にな……。」
「は?そんなことないし!!心臓だってちゃーんと鳴って……。?」
「……?」
「ない!!!!!」
「………だろ…?」
どうしよう。手は温かいのに、血は通ってないらしいし、心臓ばくばくしてない。首に手を当てて脈をはかろうとしても、振動が何も無かった。
あたふたしていると、葵が一人で何やら顎に手を当てて考えるポーズをする。すると、すぐに何か納得したのかこちらに向き直った。
「話せば長くなるし、教えれねえこともあるから簡単にしか言えないが。要するにお前は死んで、魂は「あのお方」の妖力がお前の身体に入り込んでるおかげで生き延びているってところか?」
「ん?どゆこと?簡潔すぎてさっぱりわかんない。てか、あのお方って誰?」
「まあこれ以上は言えねえな。」
「はあああ!?死んでるとか超失礼なことぬかしといて、そのまま帰れですって!?信じらんない!!」
葵自身信じられなかったようで、頭をポリポリかき始める。
「わりい……。やっぱ、帰らなくていい。ちょっと翠呼んでくるから待ってろ。」
「すい?誰か知らないけど、早くね?妖怪の森に女の子一人残して待ってろとか酷いわー。」
「どの口がいいやがる!!一人でここに入り込んで来ておいて酷いもクソもあるか!!」
再び怒り叫びだす葵だが、飛んでいく寸前に「すぐ戻る」と言い残し、飛び去っていった。




