家紋
「―――――わたしはいったい何度寝れば気がすむんだ。」
「全く驚いたぞ巳弥、学校帰りはまっすぐ帰れといつも言ってるはずじゃ!それなのに、お前は森のまん前で地べたで寝るとは何事じゃ!!」
森の中にいたはずなんだけど、全く目が覚めるたびに別の場所に移動してるなんて、夢遊病は恐ろしい。病院行こう、今すぐ行ってこよう。ちょっとばかり遠いけど。
おじいちゃんが、道端でぐっすり眠っている私を発見し、大層驚いた顔をして見下ろしていた。一瞬、おじいちゃんの顔がぼやけていて、顔は見えないけれど、何か赤い髪の毛を見たような気がする。ひどく寝ぼけていたのか幻覚を見た。
妖怪に襲われたのか!!としつこく聞かれたが、自分自身覚えていないので、「眠くなったから眠りました」と適当に言っておいたら今にいたる。
とはいっても、制服は古臭くなって色あせて所々というかほとんどボロボロに裂けていた。それにどう見ても制服にこびり付いている赤い染みは血のように思える。なのに傷口は全くない。
もしかして神隠しにでも合って、そこから記憶がなくなったのかもしれないとか考えてみたが、時間は何も経過していないし、学校から帰ってくるのが少し遅かったから心配しただけだとおじいちゃんは言っていた。
「そうだ!!おじいちゃん、森に妖怪がいたよ。でもあまり危ない人じゃなかった……?いろんな意味で危なかったけど。」
「……?お前、森に入ったのか?」
鯉のように口をパクパクとさせていている。500年間も、森は恐ろしいところだと伝説にまでなっている森に、入ったよ!なんて呆れて物も言えないはずだ。
「……お前、その腕どうしたんじゃ。見せてみろ」
「ああこれ?……えっと、なんだっけ?」
腕には、三つの輪のような紋が刺青のように描かれていた。ぎゅうッとおじいちゃんは腕を握り締めて、信じられないという表情をする。額から、汗が流れていた。握る手にも、汗がにじんでいた。
「どうしたの?」
「これは、我が波紋一族に代々伝わる家紋。そしてこれは禁術じゃ。これが使えたのは、初代当主のみ。初代当主は数百年前の人だぞ……。巳弥、お前……本当にあそこで寝ていただけか!?」
「え、これうちの家紋なの!?え?祓い屋!?ってことは私も波紋の祓い屋!?」
「昔言ったじゃろうが!!今は、妖怪に会うこともないはずじゃから、お前が祓い屋になる必要はない。」
なんだろう。よく分からないけど、相当びっくりしている。でも、だとすると私は数百年前の人にこの呪いみたいなのかけられたってことだよね?
制服も古くなっているし、妖怪も自分のことを知っているような口ぶりだった。実際私の名前だって知っていた。
しかし、もう一度森に行こうとは思わない。
「……!!」
「何か、おもいだしたか!?」
「アキが……!!アキ忘れてきた!!行ってくる!!」
いったいなんの話だとおじいちゃんは口をあんぐりと開けて、様子を見ているだけだった。
それをいいことに、着替えるのをやめてすぐに家を出た。




