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覚めた夢の続き  作者: 神無
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約定違反

「!!!……ってあれ?」



電気に当てられたように跳ね起きると、つい先ほどとは違う場所にいることに動揺を隠せなかった。



え?どこ此処。あ、いつもの乙鬼の家だよね。あれ私さっき雪乃ちゃんと乙鬼と村の一本道にいなかったっけ。



もしかして夢落ち?え、どこからどこから?会合した辺りから?


いやいやでもちゃんと波紋のおっさんの呪いみたいなやつ乙鬼のオーラで被せてるから、そこまでは現実なんだよね。



「あ痛たた」


首がズキズキと痛む。そういえば、途中で記憶途切れてるし、気絶した?


ってことはこれ夢じゃないんだよね。だったら、こうしちゃいられない。




「雪乃ちゃんが……!!!!」




掛けられた布を吹き飛ばす勢いで飛び上がり、戸の方に走り出す。そのまま戸を開けて急いで雪乃ちゃんの元に向かうはずが、そのまま戸に突っ込んだ。





「うええっ!?乙、うあぎゃ!!」



否、正しくは、戸の前で胡坐をかいて通せんぼするように目を瞑っている人物に突撃する形になってしまった。


一歩目から助走をつけて走ったせいで突然ストップすることが出来ずに足を滑らせた結果だ。


戸にもたれて胡坐をかいている人物の胸板に頭から突撃すると、コンマ数秒後、髪の毛をわしっと掴まれた。



「乙鬼……、痛い。」


「何をしている、お前は。」



呆れ半分、不機嫌な顔をした彼と目を合わせられる。髪の毛いたいから掴まないで、と言いたくても気まずさで言いづらかった。


それでもこれだけは聞かなくては。


「雪乃ちゃんは……どうしたの?」



「……。」


「乙鬼!!!答えて!!」




そのままの体制で両手で胸倉を掴み、声を荒げて応答を催促する。乙鬼は無表情のまま顔を背ける。



「殺してない。」


「ほ、ほんと……?」



良かった、と掴んでいる手を離し、そのまま乙鬼にフっと力が抜けたようにもたれ掛かる。



「で、でもなんで!?なんで?」


「殺してほしかったのか?」


さも忌々しそうに眉間にしわをよせてどんどん不機嫌になる乙鬼。



「め、めっそうもない!!ありがとう乙鬼……!!本当にありがとう……。」


「……泣くほど、嬉しいのか。」


「う、う……ズビ。あ…鼻水ついちゃっだ。」



「言いながら俺ので拭くな。」



泣き笑い状態でテンション任せに乙鬼の首に腕を回して頬をスリっと擦り付けた。


胡坐をかいていた乙鬼は片膝を立てて、尻尾でもふりふりしてそうな巳弥の頭にポンっと手を乗せる。すると相変わらず鼻をズビズビさせた巳弥は嬉しそうに笑った。



「だいすき。」



「……!」



不意打ちだと言わんばかりにため息をつく乙鬼に反して、安心しきったように眠る彼女を見ると再びため息がでた。



鼻水と涙で顔面はわりと悲惨なことになっているが、その表情を静かに見る乙鬼はふと口元を緩めた。


そしてそのまま巳弥の背中にゆっくりと腕を回す。




―――――――ドンッ



「!!」


背中に軽い振動を感じた乙鬼は、はっと我に返った。背中には戸があるので、誰かが来たのかと、巳弥を部屋の真ん中に寝かせると、戸を開けて外を確認した。



「乙鬼様!戻られたんですね。それで、巳弥は……。」


「眠っている。」



乙鬼の言葉に、訪ねてきた葵も安心したように「そうですか」と答えた。



「それにしても、あいつ、あんなところで何してたんですか?」


「………。気に入った木の上で眠っていた。」



「え……。それなら、いいんですが。ハア……あの自由人め。」



げんなりと脱力する葵は、また明日来ますといって自分の住処へと戻っていった。その後姿を見えなくなるまで黙って見つめた。


いなくなったのを確認すると静かに戸を閉める。





―――――――――--―

-―――--




「み、巳弥を、……どうするの!?」




「お前には関係ない。」


掴みあげていた首から突然手を離し、見えない速さで横たわる巳弥の首元に手刀を入れ肩に担ぎ上げ、そのまま雪乃に興味がなくなったかのように背を向けて歩き出した。


戸惑いを隠せない雪乃は、考えるより先に口が動いていた。



「なぜ、私を殺さないの?」



きっと答えてくれないか、気が変わって殺されるか。身構えた時、背を向けて歩いていた彼が立ち止まってゆっくりと振り返った。



「この馬鹿女に感謝するんだな。次はないと思え。この女から聞かされたはずだ。その約定を村に伝えるがいい。森に入った者は殺すと。」



質問の答えにはなっていなかったが、これ以上は聞き返すことは出来ず、静かに頷いた。


そのまましばらく動けずにいたが、ガサガサという物音に驚きすぐさま村へ向かって走った。


生贄として乙鬼と対面した自分が生きて帰れたなど、自分自身信じられない。けれど、そんな相手に取引ができた巳弥は本当にすごい子だ。


――――きっと誰も信じてくれないわ。だから、まだ終わってはいない。




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