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覚めた夢の続き  作者: 神無
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呪(まじな)い

「なんて書いてあるんだろ。」



なんか呪いを文字にしたような感じがする。きっと私が妖の類だったら、何かが起きてたはずだと思えるほどの強力なもの。


おそらく私の身体に染みついた乙鬼の妖気がさわいでいることが、このもやもやの原因かもしれない。




まあ祓い屋ともあろうものが、人間の私に何かするはずもないし、疑いも晴れたようで帰ってくれたから心配はないはず。





「ってこれ水で擦ればおちるかな。」





「無理だと思うよ。」



「ん?翠…?」




背後でスタッという軽やかな音とともに、周囲をキョロキョロとしながら翠が現れた。



「翠!どこ行ってたの?」



「ああ…すまない。……何か、良くない気配がして近くの建物に身を隠していた。やはり祓い屋だったか……。」




つまり私を見捨てて逃げたってことだよね?っと瞳で訴えると、申し訳なさそうに謝った。


あれほどの祓い屋なら人か妖の区別くらいつくだろうと思っての行動だったと翠は言った。




「でも、確かに頭のきれる人間のようだ。その文字、かなり強力なまじないが籠められている。」


「え。やっぱり?さっきから気分が悪いんだよねーこれ。」



「話は一部始終聞いていたけど……。君が妖かどうかを確かめるためとはいえ、万一そうだったら君は死んでたね。跡形もなく」



「!!」



確かにそんな方法があるなら手っ取り早い方法ではあるけど、女の私にも容赦なく試すなんて心のない祓い屋なんだ。


きっと本当に妖そのものが嫌いなんだ。まあ、でなきゃ祓い屋なんてできないけれど。


うーん、でももしかしたら人間だと信じたからかもしれないけど。



「でも、別に痛くないし、そのうち消えるでしょ?」



「多分、その呪い……。一度発動しなければ消えないよ。」



「……は?発動!?なにそれ!」



「呪いは取り消す方法などない。だから、少なくとも犠牲が必要だね。」



「犠牲がいる」とさらりといつも通りの優しい笑みで言ってのけた翠。翠の微笑みは儚くて、静かな笑み。けれど張り付いた笑みともいえる。


人間は言うまでもなく、彼らにとっては同じ妖であっても弱いものにさほど興味関心はない。



 妖怪たちの集まりは頻繁に行われるようだが、長々とは続かないみたい。何故かって翠に聞いたら、図体だけ馬鹿でかい中級共が暴れ始めたり襲い掛かったりで御開きとなるらしい。



乙鬼はいったい毎回どんな無理難題を押し付けるんだと呆れたものだが、そもそも妖怪共がまともに話など聞くなんて思えないから、乙鬼には同情する。



つまり、お開きになるのも時間の問題かもしれないし、比較的早く帰れるかもしれないってこと?それはいくらなんでも早すぎか。



「あ。散った。」



「え、何が?」



「一点に集まっていた気配だよ。お開きだね。多分、集まって即何か起きたんだろう」


「え?何?かなり早いよね?もう帰っていい感じ?」




「危険なのはここからだよ。この早さだと、多分話合いも出来てないと思う。血の海になるかも」




年々ごとに長である乙鬼への恨みは溜っていくものだというが、もう出て行けばいいじゃん。あー、それは掟破りなんだっけ。


この会合を使って、大勢で乙鬼に攻撃でも仕掛けるつもりなのか、ただ単に低級や中級同士で喧嘩でも始まったかは分からない。



巻き込まれる前に帰るものは早々にその場から離れ、気配は四方八方に散った。


そう思うと、やっぱり森から出て良かった。乙鬼の家ですやすやゴロゴロとか、絶対死んでる。うん



「この右手もしばらく保留かー。早く帰って乙鬼に聞こうと思ったのに。」



「ん、あ!巳弥。いい事思いついたよ。」


「へ?」



「この森に入ればきっと、人間の君は恰好の的になる。襲ってくるものを殺しても何も罪悪感など感じないだろ?だからその手の呪いをぶつければいいんじゃないか?」



「触れる前に殺されるんじゃないかな…。興奮してる妖怪になんて会いたくないし…。」



「そうか。まあ君に死なれては、僕も大変なことになりそうだ。」


物騒なことをいいながらもにこにこと笑みを崩さない。些細な会話でも人との違いを思い知らされる。




「うーん、まあ僕が巳弥を独りにしたのがいけないし、人間同士だから問題ないとはいえ、面倒なことになってしまった。だからここはひとつ、お詫びに何か願い事を叶えよう。何かあるかい?」



「……。え?ほんと!?じゃあねじゃあね…!」


「出来ることだけね。」



「……わかってるって!じゃあ―――500年後、翠は何があったかしらないけど、私を探してるみたいなの。んで、殺そうとしてくるわけ。」



「僕が巳弥を?君、何したんだ…」


「こっちが聞きたいわ!!……だから殺そうとするのやめてね。」



あれ、でもその寸前桜の木がぶわーーーってなってこの時代に飛ばされたんだっけ。ってことは殺されないっていうか、翠は私を殺せなかったのか。



「あ、やっぱり訂正。その前に「アキ」っていう女の子を人質にして私をおびき寄せてたんだ。アキに絶対に危害加えないでね。傷ひとつつけたらただじゃおかないんだから!」



「………いろいろよく分からないけど、まあ……約束は守るよ。」



「良かった。これで一安心。ありがと!」

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