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覚めた夢の続き  作者: 神無
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返却

「うっわー相変わらず満開の桜…。これ散ってるのになんでなくならないんだろ」


木の周辺は一面の白で、そこに絶対的な存在感を持つ大木の桜が咲き乱れている。静かに降る雪は、桜の結界内には降り落ちないらしく、そこだけ春が来ているかのようだった。


大分木登りが得意になったが幹につかまって登るのはなかなか苦労するので今度、踏み台になるものはないか探してこようと決めた。




頑丈な枝の上に座り、足をぶらぶらしながら空を見上げる。雪女が来ると雪が降る葵が言っていたがそれは本当だった。遠くの空は雲ひとつなく晴れている。むしろこの辺りしか降っていないのかもしれない。


となると、雪女はこの辺りにいるということだ。


心配しなくても、この領域に入って来れるのは自分と、この木をつくり出した乙鬼くらいなので、その他の妖は上級でも好き好んで入りたい場所ではない。

 


 此処にいれば森の隅に隠れるよりは、かなり目立つが安全であるし、巳弥にとってはかなり居心地が良い。数日振りの気分に心を休ませていたそんな時――――――。


地を蹴って飛び跳ねるような音が、真下から聞こえた。



揺らしていた足をピタリと止めて、低級は入って来られないはずだ。と一瞬に緊張を走らせ、おそるおそる下を見た。



「………ッえ!?」




木の幹に抱きつくようにひっつき、足は地についたまま、枝に座る巳弥を見上げていた。無表情なその顔は、先ほど会った蒼白な顔の少女。首は頭を支える力がなくなったかのように、ぶらんと背中の方へ垂れ落ちているようだ。


―――そもそもいつから居た?


目があっても依然と体制を変えずに大きく開かれた瞳をじっとこちらに向けている。


普通この領域に入って来れても、相当気分が悪いはずだ。葵だって迎えに来てくれるが、腐ったものでも食べて腹を壊したような表情をする。


この少女は無表情。此処にいても大丈夫な妖がいるなんて、相当な妖力でもあるのかと考えたが、すぐにその考えは消えた。



 髪と着物以外はほとんど真っ白を連想させる少女の顔から、ジュウッ…という肌を焦がす奇妙な音を立てながら、パリパリと剥がれ落ちては小さな煙をあげて蒸発していく。


 下級の妖怪は、瞬時に燃えては消滅するが、彼女は中級くらいだろうか。じわじわと妖気に殺されていっている。



「ねえ…!早くここから出ないと!!肌が…」


幹を伝って、降りようとするものの、少女が抱きついているのでこのまま降りると少女に激突するので降りれない。だからといってここから飛び降りることも出来ないので、木登りをもっと練習しておけばよかったかもと思った。



早く離れて、と叫んでも全く聞こえていない。というよりは、目が合っているし聞いていることには間違いないが、その気はない。ということだろうか。




ふと、少女の口が小さく開きぶつぶつと呟いている。叫ぶのをやめて耳をすませた。


「返しにきたよ。だから代わりのモノをちょうだい」


「え…?」


あっという間に白い肌は、爛れて血がにじんでいる。血走った目をカッと見開いて手を伸ばしてきた。


「うわッ!!!」


巳弥の足首をかなりの力で握りしめ下に引きずり降ろそうとする。突然の出来事に、崩れ落ちる巳弥。枝と幹に捕まってかろうじて真下に転落することはないが、細い手は尚引きずりおろそうと勢いよく引っ張ってくる。


「ッ痛いっ!!ひっぱらないで落ちる!!」



「返しに、きたよ。代わりにあなたを持って帰る。」


「はあ…!?くッ…、代わり…持って帰る…?」



―――雪女は気に入ったものを持って帰る。



彼女自身が言っていた言葉だ。となると彼女が雪女。そう思ってみたら、着物姿で雪に埋もれているのに平気そうな顔に真っ白な肌。他の妖怪は隠れているのに少女一人平気な顔で森を歩く。元々雪を連想させていたのに何故気づかなかったのか。



「雪…女…。」


静かに呟いた巳弥の言葉に、少女は不気味に笑った。


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