表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覚めた夢の続き  作者: 神無
46/143

浸蝕

「妖力が…?こいつにですか。」


乙鬼に担がれ、森へと戻って来た巳弥は、いまだ眠ったまま目覚めない。


「最終的にとどめをさしたのは、朱里の白蛇だ。だが、あの中級妖怪には劣っていない。そして、俺に狙いを変えた。」


「乙鬼様にですか…!?……我を忘れた、ということですかね。でもそんなものだけで身体能力が上がるわけもない。」




 そもそも、巳弥には妖力があったのだと乙鬼は言う。それを聞く葵は驚くばかりだった。巳弥に触れると、かすかにまだ妖力が感じられた。


 しかし、それは普段から感じていたもの。乙鬼の「気」だった。乙鬼とずっと一緒にいることが多々あるし、本来は乙鬼である「ガキンチョ」と会ったりしていた巳弥にその匂いのような気というものが染みついても不思議はないと気にしていなかったからだ。





 葵は、朱里が貸したという白蛇に何か関係があるのかと、会いにいったが、彼は道案内に貸してやっただけだという。白蛇にそんな力はないのだと言い切った。



葵の訳が分からないという態度にをよそに乙鬼は、さっきまでの巳弥を思い出していた。戦う彼女は、舞ってるように花までもが幻覚でみえた。その花は、桜の花だったことを思い出し、そこで全てが分かった。


「そういうことか。」


「…え、乙鬼様、何か分かったのですか。」


ぽかんとしたまま葵が乙鬼の独り言に反応して聞き返す。彼は立ち上がり、開きっぱなしの戸から出て行くときに、ふと立ち止まった。



「巳弥をあの桜の木に近づけるな。」


「え、桜って…あなたが妖力で作り上げた、あの桜の木ですか。なぜ…」


 突然言われたことについて行けずに、再び聞き返すも今度は反応が返ることはなく、乙鬼はどこかへ行ってしまった。



 それと同時に巳弥の意識が覚醒したようだ。カッと目を開き素早く起き上がる突然の行動に葵は警戒しながらも異常がないことを確認する。


「……!!葵…大変…っ」


「!?……どうした?どこか身体がおかしいのか!?」


「子どもに化けた乙鬼を見つけられなかったの。何で帰って来てんだろ私…。ん?どうやって帰ってきたの私?」


「……そこからか。」


 巳弥のひとことで、彼女は何も覚えていないことが分かった。暴走してしまった時のことは、話さないほうがいいだろうということで、特になにも言わなかった。



「あははっははは!!」

「……どうした?」


「さっきから朱里の白蛇が何か体中もぞもぞ動いててさ。あーかゆいかゆい。」


「くすぐったいんじゃなくてか。」


 胸元を豪快にぼりぼりと掻き出す様はもはや女とは思えず、乱れまくった着物のまま外にでていく彼女に、どこへ行くのかと聞く。


 案の定彼女はいつも通りの日課となっている「昼寝の場所」へと向かおうとしていた。行くなと言ったが即答て拒否されてしまう。こうなったら無理やり行けないようにしても必ず行く。

 怒られるだろうが乙鬼様に報告だけはしなければ、と諦めるがひとつだけ彼女に聞いてみた。


「お前って本当に人間なのか?」

「は?うん。葵頭でも打ったの?乙鬼に怒られたとか?」


 何気なく聞くと、すでに歩きはじめていた彼女は立ち止まり振り返り、妙に心配されてしまうが余計なお世話である。


「わっちょ!」


 くねくねと身体をよじりながら再び妙な行動を取り出す巳弥。すると、しゅぽんッと出てきた白蛇が彼女の手に巻き付いて引っ張っていくではないか。しかし、彼女が行こうとしている方向とは別方向なので、葵はナイス白蛇、と思いながら嫌々どこかへ引っ張られて進んでいく彼女を見送った。








「何しに来た。」


「何でだろう。君のペットに聞いてくださいませ。」


 蛇に連れられるままに山を登って行くと、着いた先は朱里の元。そんなこと全く知らない朱里は巳弥を迎えてはくれない。


「いや、何かもうすっかり私が白蛇さんの飼い主だと思ってたよ。やっぱ親の所が良いのね。」


 しゅるしゅると手からポトリと落ちると地面をするすると這いずりながら、朱里の元へと帰っていく。


 一匹でもモソモソと体のなかでされるだけでかゆいのに、いったい朱里はどれだけの蛇をその身体に宿しているのだろう。というよりむしろ身体の一部だったりするのかもしれない。


「……何してる。」


「あ、いや…ちょっと身体検査を…。」


 着物の中は蛇だらけなのかと、胸板や腕をぺたぺたと触るが何もなかった。きっと皮膚からにゅるりと召喚されるのだと巳弥は勝手に解釈することにした。


「先程、葵が来た。……話は聞いた。身体に違和感はないか?」


「……おお!そうだ!」


「……あるのか?」



「何と…!蛇に締め付けられて身体にアザが!寝てるときとかねー本当酷いんだよその蛇。むかついたから寝返りうって体重かけてやったわ!ふはは」


「そんなことするからだ。」


 しかしその白蛇に助けられていたと乙鬼が言っていたらしいので感謝している。何故自分が覚えていないのかは疑問で仕方がない。朱里に聞いてみたが全く分からないらしい。それでも少し気になることはあるようで、少し考えるように巳弥を凝視しながら話始めた。


「今さっき此処にきた時から思ったが、…臭いが濃くなった。」


「え、それ最近よく言われる。いや、でも今は仕方ないよ2・3日水浴びとかしてないし。」


「違う。妖気だ。…それも乙鬼様の。」


「えッえ…!な、何もしてないからね私達…多分。」


「何考えてるんだお前は。あのお方から何か言われていることはあるか?」


 朱里の言葉に、ふと「桜の木」に近づくなと言われていたのを思い出す。それを朱里に伝えると、すんなりと納得したようで乙鬼と同じように近づかないほうがいいと答えた。


 白蛇も返したことだし、獣達を倒して帰ってきたばかりで疲労がたまっている。そろそろぐっすり安眠できる場所へ帰ろうとしていた時に朱里からもそんなことを言われてしまうと、おとなしく帰ったほうがいいような気がしてくる。


 それに、眠気よりも空腹の方が勝っていたので葵に何か狩ってきてもらおうとそのまま来た道を戻ることにした。


「逆方向だ。今一度連れて行くがいい。」


歩く巳弥の背後から朱里がそういうと同時に、いつのまに来たのか、白蛇が足元からスルスルとよじ登り、巳弥の首へと巻き付いた。そのままぐいぐいと方向を示してくれる。


「ぐッちょ…あの白蛇さん。そこ手首じゃないから。く、ぐ…っ首だから…!締まるっ」



そのままの状態でやっと帰り着いたころには酸欠で死にそうだった。それをみて心配してくれた葵だが、焼きあがった鳥の肉を並べてなぜかパタパタと扇いでいたのは何故だと聞いてみた。


「そらだってお前、眠気より食い気だろ?匀いにつられて戻ってくると思ってな。」


「く…よくお分かりで…。」





 ほかほかの鶏肉を食べながら、帰り際に朱里が言ったことを思い出していた。



  「――――桜の木は乙鬼様の妖気の塊


   それは並の妖怪を殺すほどのものだ。そんなところにただの人間のお前が居て何も起きないということはない。


――――お前は必ずその妖気に喰われる。……そうなるのは、時間の問題だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ