自由行動
「げっほ!げっふ…うっ…。」
「吐き出すなよ。そのまま飲みこめ。」
「まっず!これ…まっず!!苦いし酸っぱいし腐ってるのこれ!?」
巳弥自身がとってきた木の実をいざ食べようとガキンチョにちゃっかり毒見をさせてから口にポイっと木の実を運んだが想像以上に不味いものだった。
やはり食料は葵にとって来てもらわなければと再認識したが、ガキンチョはひょいひょいと口に実を運んでいく。巳弥は顔を引きつらせながらその様子をながめていた。
「そっか、そういえば葵や乙鬼も草食べてたわ。普通に食べてたわ。」
毒のあるもの以外なら何でも食べれるんだと半ば諦めながら、とにかく空腹なので再び木の実を口に運んだちびちびとかじりながら食べた。
「ねえねえこれって放置?もう里には人いなくなったし、やっぱり奴隷も必要ないって思われてこのまま放置なんじゃないの?
まだ明るいけど暗くなったらどうすんの?視界真っ暗って危なくない?この季節に夜外で寝るって人間にはかなり寒いと思うんだけど…」
乙鬼が残りの2匹も片づけたのかなーっと、くどくどと質問を重ねるが、ガキンチョは無言のままだった。
この森には妖怪は出ないようだが、もう冬になる時期に外で眠るのはなかなか辛かった。近くに小川が流れているので水には困らないし、いなくなった妖怪が持ってきた食料と、巳弥が持ってきた赤い色の実がある。
里の人の近くで、石で火をおこしたから少しは温まれるだろうと安心した巳弥は、怯えられているのでガキンチョの所に戻って横になった。
「……。」
「……山登り疲れたから早いけど寝るね、おやすみガキンチョ。」
「……起きろ。寝るな。なんだこの腕は」
「んーん…抱き枕…。」
そういって横になっているガキンチョのすぐ隣に寝転がり、抱き枕のようにガキンチョに張り付いた。
此処にも火をたけばいいのにとガキンチョは言うが、巳弥はこれがしたいだけのようだ。多分彼女自身は外で寝ることなど日常茶飯事となっているのでそこまで寒くない。
はあ…っと小さな溜め息が聞こえたが気にせずに巳弥はすやすやと眠りについた。彼自身とくに暴れたりしなかったのをいいことに都合よく抱き枕にされていた。
巳弥が次に目を開いたのはすっかり陽が落ちて暗くなったころ。月明かりに照らされていても一面の闇の中で出歩こうとする人はまずいない。
それにもかかわらず遠くから山を登って戻ってくる足音が聞こえた。岩などを飛び越えてくる足取りは人の者ではないと分かった。
バッと起き上がり抱き枕代わりにしていたガキンチョをゆすって起こそうとしたが、すでに目を開いていた。もしかしたらまったく寝てないのかもしれない。
「来る。」
静かに言うガキンチョの顔は真っ暗で見えないが、きっと真剣だ。パチパチと燃える灯りの代わりとなっている火を消化すればもしかしたら獣は自分達を見つけられずに通り過ぎていくかもしれないと、火を消したがガキンチョは無駄だと言った。
「辺りを暗くしたところで俺たちがここにいることは臭いで分かる。それに暗闇でも見えるしな。」
「え…。」
里の人は皆静かに体を縮めて固まっていた。足音はだんだんと大きくなり、ついにはピタリと音が止んだ。
暗くてよく見えないが、確かにそこに立っているという何者かの気配はした。それは間違いなく里に乙鬼を探しに行った二匹。
「おい、見張り達はどこ行った?」
「ま、すぐ戻るだろ」
低い声で問う獣。声のする方でだいたい獣がどこに立っているのかが分かった。その獣はもう里に行くらしく、夜明けとともに山を下りるといった。
「え?ってことは朝まで寝てておっけー?」
「勝手にしろ。」
巳弥の問いかけに獣は答えると、再び巳弥はガキンチョに飛びついて眠りについた。帰ってきた獣はもういないことを知らないため、消えた三匹を探しにどこかへ行ってしまった。
乙鬼が現れたようなので残りの二匹もそのうち始末される。そうなれば里の人も元の生活に戻れるということで、わりとくつろいでいる巳弥だが、彼女のいない間に起こった出来事を見ていた里の人々は一刻も早く「この場」から立ち去りたそうだった。
―・―・――・――・―
―――・――・――
「いたた…頭と身体がいたた…。なんだろう動物になった気分」
地べたで寝るのは寝苦しく、頬には砂利の痕がついて砂だらけだった。
「案ずるな。元からお前は動物みたいだった。」
「え!それって小動物?兎とか猫とかリスとか?」
「芋虫」
「それ虫だよね。」
髪についた砂をぱらぱらと払い、着物をぱんぱんと叩く。起き上がって両手を真上にあげて伸びをした。早起きか、はたまた眠れていない里の人は川で水を飲んでいた。
「はあ…お魚さん達はいいなあ。私も泳ぎたい。この汚れを取りたい」
「飛び込め」
「いやいやいや。飛び込むほどの深さないよね!?せいぜい足首までだよね!?この寒さ飛び込めと!?まったく…そんな子に育てた覚えはないわよ!」
「お前に育てられてたら大変なことになっていた。良かった。」
「しみじみと言わないでよ!!!」
朝早くから二人で口論していると、山の斜面から小石がごろごろと転がってきた。それと共に昨夜どこかへ行った獣がこの森を出るぞといいながら滑り下りてきた。
やっとかというように重い腰を上げて先頭に続いてぞろぞろと歩きだした。
滑り落ちていくように木の幹に捕まったりしながら降りて行くがペースが速いせいで置いて行かれてしまうのではと皆必死だった。
そうなると危ないので巳弥達は最後尾をついて行くが、それが余計に怖いのか皆急いで転がるように降りて行った。
「え、なんで私達そこまで怖がられてんの?もはや急いで獣さんの所に逃げてる…気がする。」
「仕方ない。」
意味深に話すガキンチョに疑問に思いながらも気を抜くと滑って転げ落ちるので降りるのに必死だった。




