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覚めた夢の続き  作者: 神無
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囚われた者

里には大人の男はいなくなり、子どもか女の人しかいなくなったのはすっかり空が真っ暗になった時だった。それから何か行動があると思いきや、陽が昇るまで放置状態だった。しかし、獣たちは歩き回り逃げ出さないか見回りをしているようだった。男達を追い出しているのだから、逃げ出さないか見張る意味がよく分からなかった。どうせこの女性や子供を奴隷扱いするなら、男達もすればいいのに、と。


きっと、この妖怪は用心深くそれでいて臆病者なのが見て取れる。森から出て新しい家となる場所でも作りたかったのかは知らないが、妖怪たちが里を襲った。刃向って戦いになるのは面倒だと妖怪たちは男を追い出した。男達は、妻や子供を守らんと、抵抗をみせるも妖怪には敵わず、今死ぬよりはいずれ助け出せるように策をねんと一旦里から出て行った。


一匹の獣が、里を去った男達がどこへ行くのか後を追っていたらしく陽が昇ると同時に戻って来た。その獣の声に眠れなかった里の人は体を縮めた。眠りについていた人もビクッとしながら飛び起きる。


二足歩行で歩く獣がバタバタと走る姿や人の言葉を話す姿は、やはり妖怪とは縁のない人間は恐ろしいようで、女子供は皆怯えきっていた。

その獣は、周りに指示をだしている隊長のような獣の所へ報告をしようと走っていた。


理陀リダ。奴らはしっかり村へ誘導しておいた。あそこは一番妖怪出没率が高い。いくら乙鬼様の掟があるとはいえ、いつそれがなくなるかは分からない。きっと奴らはそこで村人と共に死ぬだろ」


「ご苦労だったな。」


聞き耳をたてていた巳弥とガキンチョは、男達はバラバラに逃げたのではなく、ましてやバラバラに逃げれないように追いかけて村へ逃げるように誘導されたのだと理解した。


村を襲わないように作った掟は、今のところしっかり守られているはずで、何かあれば血の臭いや騒ぎですぐに耳に入るのだから。今の村は安全であるし、村人もやさしい人達の集まりだということは巳弥は知っている。きっと歓迎してくれるに違いない。



「おい、理陀。」


そこで自分達の森の中から戻って来た獣が、再び理陀という隊長格らしき獣に報告をしたらしい。耳元でヒソヒソと話すが、これがまた声がでかい。耳をすませなくても堂々と耳に入ってきた。


「どうした。」


「森で得た情報だ。乙鬼様がこの里のことを嗅ぎつけたらしい。奴が来る前に此処は離れたほうがよさそうだ。2・3日離れてれば帰っていくだろう。」


「……なるほどな。いつ来るか分からないな…。もういるかもしれねえし、まだいないかもしれねえ。そもそも乙鬼様の森の妖じゃなければ問題ないじゃねえか。見つかったら別の森の者だと言えば掟もクソもねえし問題ねえ。隣の森に行くぞ。里の奴らもつれて行くぞ。」



そうボソボソと、それでいて大きな声で話していいた2匹が、バッとこちらに振り返る。いったい何だと小さな悲鳴をあげる人達をよそに、その妖怪は2・3日場所を移ると言い出した。されるがままに女子供は立ち上がらせて歩かせる。5匹にしっかり囲まれているので逃げ出すのは不可能に近い。


一番後ろでのろのろとガキンチョと巳弥は歩き出した。真後ろで早く歩け!と怒鳴る獣をひと睨みすると、同じ中級だと思われているので若干ひるんでいた。やっぱりこいつら臆病だ、と巳弥は心の中で呟いた。ガキンチョにいたってはまだ眠そうだ。


「あーあ、乙鬼早く来ないから…。後から里来ても誰もいないよ、すっからかんだよ。私より早く出て行ったくせに何してるんだろ。

それに、隣の森に行ったらそこの妖怪だと思うわけだし、掟破りだと思われないよね。」


「乙鬼の森の妖怪だとしっかりと俺もお前も聞いた。問題ない」


「そこに私達が居合わせていなかったら、乙鬼問題ないと思って帰っちゃうよ。ていうか出来れば居合わせたくないよ私自身掟破りだよ!殺されるよ!」


「静かにしろ、後ろの奴に聞かれるぞ。」

「あ、ごめんなさいませ。」


人間の歩幅に合わせて比較的ゆっくりと歩いて行く獣たち。隣の森ってどこだよと山道をひたすら歩いて行く。こんなにのろのろと歩いていてはいったいいつ着くのかと途方に暮れそうになるが、当の巳弥は山道ぐらいもはや慣れっこなのでなかなか出ることのできない乙鬼の森から外の世界を堪能していた。といっても結局森の中だが、巳弥は楽しそうだった。


 いつのまにか一番後ろをのろのろと歩いていた二人だが、時間がたつにつれて先頭をあるく獣の後ろを歩いていた。やはり山道を歩くことがない人々には過酷な道なのだろう。なんせ女性と、子供しかいないから疲労がうかがえた。


 時々丸そうな石を見つけては石けりをしていたが、先頭を歩いている獣の足によく当たるので睨まれる。


「……おい、女。石蹴って歩くな、いくら同じ半妖でも容赦しねえぞ。」


「いや、わざとだし。暇つぶしに」


だるそうに欠伸をしながら、いつ採ったのか木の実をパクパクと食べて酸っぱそうな顔をする巳弥に腹を立て彼女の胸ぐらを掴むが、近くを歩く獣に止められて不機嫌に足音をたてながら再び歩き出す。


「ちょっといじめすぎたかなー。」

「…中級とはいえ妖怪で遊ぶな。気持ちは分かるがな」


「え、分かるの?」


助ける気も皆無だったガキンチョが歩くのに飽きたと言わんばかりに眠そうにする。そういえば全然寝ていなかった。しかし歩いている人達のほとんどは恐怖で一睡もしていないから、疲労は限界にきていると思う。


「あーなんか喉かわいてきた。だからきっとこの人達も喉かわいてるに違いない!」


「なんだその無理矢理な解釈は。……心配するな。もうすぐ着くだろ。この山は水場がよくある。温泉も」

「温泉!?あるの!?てかもう目的地ついてるの!?どこまで歩くの!?」


「そろそろだろ、…うるさい。」


そろそろだ、という言葉を信じて元気よく歩き出したものの、着いたのは昼ごろだった。体力限界で倒れる人がちらほらといる。


「2・3日この山で生活してもらう。かなり広いから、逃げ出そうとしたって無駄だぜ」


「はい質問!」


ビシッと手を挙げて獣に話しかける巳弥に周りの人々の視線が一点に集められた。怪訝そうな顔をした獣に、周りはビクリと肩を震わせた。


「ご飯は出ますか!…ないと皆、餓死すると思うので。でももちろん獣さん達が用意してくれるんでしょ?」


「……いいだろう。魚くらいは用意する。」


きっと怒りだすだろうと思っていたが、以外にもすんなり話が通ったことに多少なりとも動揺した。


話が終わってすぐに獣はどこかへ飛び去った。このまま放置してどこへ行くのかと、まだ残っている獣達の話に聞き耳をたてていたところ、里へ戻って乙鬼が現れないかを確かに行くらしい。現れて何もないことが分かってそのまま帰って行くのを見届けなければ、里には戻れないからだ。その他は餓死されては困るとのことで食料調達。一匹は残って見張りをするらしい。


遠くへいかなければ自由に行動していいらしく、迷わず戻ってこられるなら、上のほうまで登ってもいいようだ。ただし、山を下るのはなしで登るのみ許された。見張りがいるといってもほとんど立ってるだけで監視されてる感じはしない。里の人達は子供を抱きしめて立ち歩くことなくまとまって地面に座っている。


「ねえねえ、ガキンチョ」

「なんだ。」


「何で私達さ、皆の輪の中に入れないの?里の人間じゃないからかなー?ひどいよねこれー仲間外れだよねー。あそこで見張りしてる寂しそうな獣さんと3人で仲良くする?」


「しない。馬鹿か。」


「え…そんな簡潔に言わなくても。」


「大声で自分は半妖と言ったのは誰だったか。それに俺まで中級と一緒にするな。」


言われてみればそうだった。だからあからさまに距離を取られていたのかと納得する。理由が分かったところで、スッと立ち上がり見張りの獣に散歩してくると話して歩き始めた。ガキンチョには止められたが、すぐに戻ると言ったので激しく引き留められはしなかった。


妖怪も人も住んではいない広い山の中に歩ける道という道はなく複雑で、時々滑り落ちながら登った。空腹もあり、怖くて歩き出せない人のためにも何か食べ物を採ってきてあげようとしていた。


しかし登るということに必死で食料どころではなくなっていた。汗をぬぐい一息ついた時にはどこまで登ったのか分からなくなっていた。


「あ。……しまった。えっと、どこだろ此処。いや、たぶんまっすぐ登ったしこのまま降りれば戻れるよね、うん。」



―――――――

―――


しばらくして2匹の獣が戻って来た。人間が食べれるものをとってきたらしい。茸や草や木の実だ。誰も動こうとしない中、ガキンチョは草をもさもさと口へはこんだ。


「ほらよ、飯だ食べろ。食えないなら自分でとってくるんだな」


「…?おい、半妖のガキ、もう一人のうるさい女はどうした。いつから消えたんだ?まだ散歩してるのか?」



「……。あの方向音痴女…。」






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