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覚めた夢の続き  作者: 神無
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邂逅

 白蛇が引っ張る方向へと足を進めていくと、森の外に出た。そしてすぐにピタリと足を止めた。里に妖怪が襲ったとは聞いていたが、とにかく沢山いたことに驚いたパッと見た感覚で15匹はいると思われる。上級の妖怪ではなく、獣の姿だが、言葉は話せるらしい。中級くらいとみた。木の陰に身を潜めて耳をすませていると、近くで話していた獣の声が聞こえてきた。


「女や子ども、弱そうな奴はこっちに集めろ!刃向ってきそうな男は始末しとけ。」


「此処はもう俺たちの里だァ」



 里の人々を強い弱いでわけているらしい。里を皆殺し、というよりは弱そうと区別されている女子供は、召使いにでもするつもりなのか生かしておくらしい。男たちは始末するというよりは、皆逃げてしまっているが、妖怪はとくに追うということをしない。追い出したいだけなのかもしれない。しかし、戦おうとする者もいるが少ないせいで、刃向うものは返り討ちにされ、人の力ではどうしようもなかった。



「うわ―…さすがにこれだけ妖怪がいれば、勝ち目ないかもな…。」


 はやく乙鬼来て退治してあげてよ。てかもういるんだよねこれ。男の子に化けてるんだよね見たい見たい見たい。

こうしちゃいられない!いざとなったら既にいるであろう乙鬼が助けてくれるに違いない!ってわけで行ってきまーす!!




勢いよく緊迫した空気の中を飛び出して行った巳弥。


「お前たち!!里を襲って何してるの!!早く出て行きなさい!……ってなんか説教ぽくなっちった。てへ」


 突然の場違いの女の登場に泣く子も黙り、妖怪と人間全ての視線が巳弥に集まった。そこで一番に声を発したのは、妖怪の指揮をとる者だった。


「おい女、この里の女か?悪いが見られたからには帰らせるわけには行かねえな。」


「あ、しばらく此処にいるつもりだから大丈夫大丈夫。人探しに来たし。あ、人じゃないか。」


 森での生活ですっかり獣に慣れてしまった巳弥。しかも一緒に生活しているのは上級妖怪でしかも妖界の長なのだから、獣程度に怯えたりはしない。しかし、しっかりと相手の動きを見ながら警戒はしていた。するとその獣は何を言うでもなく、クンクンと巳弥を嗅ぎ始めたではないか。いったい何をしているのだと、自分自身着物に鼻を近づけるが分からない。嗅ぐのをやめた獣は探る目をしながら巳弥に質問した。



「お前、人間か?少しだが妖気を感じる。それも相当な力の…。もしかして貴様、半妖か。」


 意外な質問に巳弥は目を丸くした。森の生活が板について、すっかり葵や乙鬼の妖怪の匂いというものが染みついてしまったのか。しかし、この状況は面白そうだということで、すぐに満面の笑みを浮かべて答えた。



「うん!それそれ。私、半妖なんだ。」


「そうか、やっぱりな。森から出てきたからおかしいと思ってたんだ。それにしても俺たちと同じ半端者か。お前、妖怪のなり損ないみたいなもんだろ。俺たちも、言葉を話せるのに人の形になれない獣の姿だ。せっかくだ。お前もこの里を乗っ取ったら、新しい俺たちの家にしようぜ。」


「えー嫌だね。でも、この里の人達を追い出したり危害加えたり迷惑かけないなら考えてもいいけどー?」



 巳弥の言葉に妖怪は唇をかみしめた。これは賛同し難いようで、交渉不成立。ちゃっかり人を助けられると思ったが無理だったらしい。

やはり此処にいるはずの乙鬼に頼むしかないか。と、すっかり女と子どもだけが集められた方へ頭を向ける。


「……ん?」


そこで見覚えのある顔があるような気がして、足早にそちらへ足を進めた。



「あれ。もしかして……。が、が……」



ガキンチョ!!




 声にならずに口を鯉のようにパクパクさせていると、何故か不機嫌そうなガキンチョがこちらを睨んでいた。なんで此処にいるの、とか何故怒っているのかなど、聞きたいことが一気に出てきてしまい、指をさすことしか出来なかった。

いつも乙鬼にそっくりな和装でお高くとまっている子が、今は紺の地味な和服で、震えている女、子供の中にとけこんでいた。


 指をさして口を魚のようにぱくぱくしている巳弥を不思議そうに見る獣たちが、その指差す方を見る。ガキンチョを差していることに気付いた獣が、そのガキンチョを引っ張り女、子供の中から引きづりだした。


 煩わしそうに獣の手を払いのけようとしたのを巳弥は見逃さなかった。一瞬獣へ向けられた殺気に、やはり妖怪なんだなと理解した。ただの子どもだと思っている獣は、ガキンチョの扱いが雑すぎるので、巳弥は何とはなしに危ないと思った。ほかでもない獣の妖怪が。すぐにそちらへ走って、ガキンチョの方へかけよる。


「あー獣さん。この子も、えっと…妖怪だから。そう、半妖なの。」


「ああ?何だと……。―――確かに、臭うな。お前は人間の臭いのが濃いが、この餓鬼は妖怪の方が濃い。というかお前ら…臭いが似てるぞ。」


「え?似てる?」


ガキンチョと自分の方を交互に嗅ぐ獣の言葉に疑問に思って髪を鼻に近づけてクンクンと嗅ぐが、やはり分からない。何で似てるんだろう。


「そうか、お前ら兄妹か!!」


「え?ああ、そうそう兄妹って違う!姉と弟!!見れば分かるでしょ!」


「だれが兄妹だ。」


そこで初めて、呆れた顔をしていたガキンチョが口を開いた。先ほどのように、じとりと睨むように巳弥を見た。


「お前、なぜここにいる。」


「この里が襲われてるってことは聞いてる。それで乙鬼が、そいつらは掟破りの妖怪かどうかを調べにいったんだけど……。」


獣に聞こえないようにボソボソと話す。そこで、ガキンチョの両肩をがっしりとつかみ真剣な表情で見つめる巳弥に、睨むのをやめて瞳で続きを催促した。


「い、乙鬼が子どもに化けたみたいなの!その可愛らしいであろう姿を見に来たのだよ!!おわかりかな?」


「……さっぱり分からんな。」


「ガキンチョって乙鬼大好きっ子でしょ?あの中に乙鬼いる?」


そういって先ほどまでガキンチョが紛れていた方を指さすが、ガキンチョはいっさいそちらを見ることなく溜め息をついた。


「確か…乙鬼はお前と契約をしなかったか?森から出なければ村は襲わない、と。村がどうなってもいいのか。」


「ぐ…ッそれは。」


「今は乙鬼の気配はない。お前が此処にいることが分かったら、…掟破りは獣どころかお前だ。村を滅ぼしに行くかもしれんぞ。」


帰ったほうがいいんじゃないか、と言うガキンチョの目は冗談ではなさそうだった。少し怒っているような感情も感じとれた。妖怪は約束を守ると聞いたので、破ってる自分を好ましく思うはずがない。きっとそれで怒っているんだと巳弥は感じた。


「乙鬼が来なくても、ガキンチョがチクリそうだし…。可愛い姿見たかったけど、諦めようかな。そのかわり、乙鬼には黙っててよね、お願い!」


「さっさと帰れ。」


くるりと女、子どもの方へ戻ろうと歩きだすガキンチョの背を見て自分も森の方へと帰ろうとした。しかし、突然獣に呼び止められた。


「おい、半妖。どこへ行く」


「え、ああ。ごめん私やっぱり帰らなきゃ。」


それじゃあね、と手をふり森に入るとその獣に髪を引っ張られた。そのまま元の場所へと戻される。

「え、痛いっ!!まだ何か用!?」


乱暴に地面に投げ捨てられたことに頭にきたので、怒り口調で聞き返す。


「お前、この森の妖なのか。」


一匹の獣の言葉に、周りで好き勝手やっていた獣たちの動きがピタリと止まりこちらにわらわらと集まってきた。いったいなぜだろう。


「そうだけど…なに?」


全員が顔を見合わせる。違うと言っておいたほうがよかったパターンだと瞬時に気が付いた。しかしそういったところでこの森に帰ろうとしていたのだから無駄だったかもしれないが。


「悪いが、乙鬼様にもらされてはかなわん。この里を手に入れるまで此処にいてもらう。」


それって、共犯者?と聞き返したかったが恐ろしくて言葉がでなかった。森から出ただけでなく裏切りに加担していたなんて思われたら間違いなく殺されかねない。ここは死んでも森に帰りたいところだ。が、引っ掛かることがある。


「乙鬼、…様にばれちゃいけないってことは、あなた達もこの森の妖怪なの?」


「当然だろうが。いっとくがバラそうってなら此処で殺しておいてもいいんだぜ」


「全力で遠慮させていただきます。お口にチャックですね。おまかせあれ」


 共犯に見られるわけにはいかないが、此処で殺されるわけにもいかないので女、子供達と共に行動するということでこの里にしばらく居なくてはならなくなった。しかし思わぬことにあっさりと、獣たちは乙鬼が支配する森の妖怪ということが発覚したので追い払ってもらえば問題ないだろう。

 ガキンチョの所へしぶしぶ戻ると先ほどの成り行きをしっかり見ていたようだった。


「こうなれば仕方ない。お前という奴は本当にどうしようもない馬鹿だな。」

「はあ…私…乙鬼に殺されるかもしれない…。確かに来たのは私だけど、考え直して帰ろうとしたし、捕まっちゃったんだから仕方なくない?」


「開き直るな。今回だけは見逃してやる。貴様のおかげで重要な情報が聞けたからな。」


「え?ああ…あの獣たちが乙鬼の森の妖だったってこと?ていうか、見逃してやるってどういう意味!?…本当にチクるつもりだったの!?ひど!」


ガキンチョと話していると、「そこ、うるさいぞ!」と獣が叫んでくるので仕方なく黙り込む。別に怖くわないが、周りの子供が泣き叫ぶと獣が何をするか分からないので周りに迷惑はかけられない。


しかし、巳弥は内心わくわくしていた。周りの男の子や女の子をちらちらと見渡しながら、化けてる乙鬼はいないのかと探してしまう。それに気づくガキンチョにペシリと頭をたたかれる。彼の気配はまだしないと言っていたが、探さずにはいられない。此処にいれるようになったのだから探さなきゃ損だと燃えあがっていた。


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