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覚めた夢の続き  作者: 神無
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血の結び





「お前……。」



「長、この娘もしや、いやしかしあの時の娘は死んだと聞いています。そもそも何百年も生きているわけがない。」



「……。」



二人で何かブツブツ話始めたみたいだが、もう何も聞き取れなかった。すると、ぎゅうぎゅうに縛られていたロープが切られ、呼吸が楽になったことで、浅く深呼吸をした。ふわっと地面へ落ちる身体を黒い龍が支えると、横抱きに抱えなおし、どこかへ歩き出す。


場所を変えて新しい拷問でもするつもりなのだろうか。水の流れる音がきこえてきたので、次は溺れさせるつもりなのか、と少し身構えたが丁寧に支えられながら水を飲まされただけだった。黒龍の手を器がわりに口に流し込まれる水を少しだけ飲むと、再び抱えられながら次はどこかの屋内に入っていった。

木製の天井を見ながら、ぼうっとされるがままになっていると、硬い台の上に寝かされる。


ひょっとしたら、このまな板の上で私はこれから料理でもされるのか。切り刻んで粉々にする気かもしれない。動かそうとしても、全身痺れてしまっていて思うように動かせない。


自分でも悲しくなるほどの弱々しい抵抗を見せると、黒龍の男は一瞬手を止める。そして再び動かしたかと思うと、髪についた葉っぱや小枝を払い落している。




『・・・?』



さっきから何をしているのかよくわからない。おまけに水を含んだ布で肌が見えている部分を雑に拭かれていく。傷だらけで土がたくさんついているのでありがたいのだが、行動の意味が分からなかった。


暴力をふるった後は、優しくなるタイプとか?いろんな意味で怖かった。変な目でみていると、拭き終わったのか、布をポイっと放り投げる。



そして次の瞬間、上に覆いかぶさってくるではないか。



『うあ…!』


うまく声が出せなかった。いや、そんなことよりも今まで介護みたく身綺麗にしていたのはそういうことか。


汚いやつは襲いたくないから少し綺麗にしてから襲おう、ということなのか。さすがの私も全力で抵抗したが、鬱陶しそうに押さえつけられた。



押さえつけられた肩口に、思わずビクビクっと体がはね上がる。ただでさえ痺れている状態なのに、ぐっと掴まれるといっそう刺激を強く感じてしまった。




『や…あぁっ』



すっごく変な声になってしまった。趣味の悪いこの男には最高の反応なのかもしれない。恥ずかしすぎるし屈辱的だったが、以外にも肩から手を放してくれた。



おかしい。今までのこの男なら楽しそうに笑って触りまくられた気がする。それはそれで気持ちが悪いので本当にやめてほしいが、今の男の表情は何を考えているのかわからない。



少し間をおいてから、「ちっ」と舌打ちをすると、今度は触れないように覆いかぶさり、何やら顔の前で拳を握りだす。思わず目を見開いて体を固くしていると、握られた拳から赤い液体が落ちてきた。それはポカンと開いた私の口の中に入ってしまった。



『うえっ!!』




口に血の味が広がったので、顔を横に向けて『ぺっぺ!』と唾とともに吐き出してやった。いったい何がしたいのか全くわからない。血を飲んだら奴隷契約を結んだことになるとかだったらどうしよう怖すぎる

絶対口は閉じておこうと決めた。



「…ったく、悪く思うなよ。」



はあ、と面倒くさそうにため息をつくと、男は自分の手をガリっと噛んだ血を口に含み、顔を近づけてきた。

口移しで飲ませるつもりだ。そうはさせない。


口をぎゅうっと噛んで絶対あかないようにしたが、首に触れられたことでまた情けない声をあげてしまった。その隙を逃さず、男の唇が私のそれにあてられる。生暖かいものが流し込まれてくる。


『んんん…!!!』


頭をぐっと押さえられているので、飲み込むまで退いてくれないらしい。

ぬるっと侵入してきた舌を思いきり噛んでやったが大失敗だった。むしろ血の味が濃くなってしまう。



呼吸の仕方がわからず、苦しくなってきた。口も痺れて赤が混じった唾液が口の端から流れる。

涙目になりながら、諦めてゴクリと喉に流し込んだ。


血を飲んだのを確認すると、激しかった口づけはゆっくりと優しくなる。


『ふぁ』


血を飲んだのに止めてくれない。呼吸をする余裕は出てきたものの、なぜ恋人のような口づけをされているのだろう。

いやいやと顔を振ると、くちゅっと音をたててようやく離れたお互いの唇が銀の糸で繋がっていた。



『はあ、はあ…』




やっと解放された。肩で息をすると、ふと体が楽になっていることに気づいた。痺れがあるのは変わらないが、ずいぶんと体力が回復している。妖怪の血にそんな力はないはず。


乙鬼の妖力でもっている体だから、それ以外で回復出来ないはずなのだが、この男くらいの力があれば可能になる…?





「お前の中にあったあの鬼の妖力はほとんどなくなってた。だから全部吸い取って俺の妖力を入れておいた。」




『……はい?』



「でないと、干からびて死んでたぞ。」




『あんたのせいでしょうが!!やってることめちゃくちゃだから!!』


「……気が変わっただけだ。」




気が変わった?拷問を十分楽しんで飽きたとか?そもそも気が変わるどころか、人まで変わっている。

途中から意識が朦朧としててよく覚えてないが、あんなに快楽殺人鬼のような男が、ものすごく大人しくなっている。えらそうな態度は変わらないが何が起きてしまったのか理解出来ない。


いや、それでも生かしてくれるということなので、ひとまず胸をなで下ろした。






「理由を聞かせろ。」




真剣な顔をして突然何を言い出すかと思えば、いろいろと言葉が足りない。それでも何を聞きたいのかはわかった。



私は龍華様との出会いを静かに話し始めた。

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