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覚めた夢の続き  作者: 神無
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面倒事

もうすこしまったりと山の空気を吸っていたかったのに、ガキンチョに起こされてしまった。もう少し寝ていたかったので、聞こえてないふりをして寝ていたら、額に衝撃があった。ガキンチョが手でも乗せているのかと思ったら、足が私の額に乗っていた。要するに踏みつけられたという事だ。




人の顔を踏みつけるなんてどんな神経しているんだと、朝食をとりながら考える。早起きしたガキンチョが狩りに行ったようで、また鳥と魚と川の水を取ってきてくれた。感謝しているが、それとこれと話は別だ。



「なんだ芋虫。まだ怒ってるのか」


「誰が芋虫だチビッ子!!私の名前は巳弥!ミヤよ!!それに、人の顔叩くならまだしも、踏みつけるなんて…!!それでも人間なの!?起こし方ってもんがあるでしょうが!」




「芋虫が目の前でごろごろ寝てたから踏んだ。起きない奴が悪い。望み通り、今度から叩いてやる。」



この少年のしつけ方を間違えたこのチビッ子の親の代わりに、巳弥はくどくどながながと行儀について説明してあげた。その間ガキンチョは、私が説明しているのをいいことに堂々と私の分の魚を食べていた。



「ちょおおっと!!それ私のぶんじゃないの!?」


「お前が食べないのが悪い。」


しばらく言い合いをして、怒った私は外に出てガキンチョを待たずに歩き始めた。


「おい芋虫、どこに行っている。」


「え?こっちから来たじゃん。」


「馬鹿か。そっちは道がないだろ、死にたいのか方向音痴め。」



「ぐっ…我慢よ巳弥…私ならできる…!」


「何を言ってるんだ」




方向音痴ゆえに別の道なき道へ歩いて行こうとする。それを繰り返すうちに、ガキンチョはついに無視して私とは違う正しい道を先に歩いてしまった。諦めて大人しくガキンチョに着いていくことに決めた。いつも通りの会話をしながらなんとか夕方には都に到着した。


あれだけ貶されて黙ってはいられないが、何だかんだ温泉まで連れて行ってくれて食糧調達も帰り道の誘導まで全てしてもらったガキンチョには非常に感謝している。




都のいつもの待ち合わせ場所に着いて、それぞれの家に帰ることになった。四日ぶりに家に帰るためミツさんをまた心配させてしまったと反省するが、土産話がたくさんできるとうきうきしながら帰った。


ガキンチョとは、明日は会わないことになった。「これだけ家を離れた。おそらく面倒なことになっている。」と言って明後日に再び集まることになった。家庭の事情ということで敢えて突っ込まずに帰った。


ミツさんが迎えてくれると思っていたが、村は騒々しかった。自分が離れている間に何かあったのかと、村人が集まっているところへ走った。いつ何が起きるか分からない。だから予想していなかったわけではないが、まさかこんなにも気分よく帰って来た日に、村ではあんな悲劇があったなんて。


5・6人の人達が血を流して倒れていた。村長が薬を持ってきて、数人で手当をしている。どうやら皆命に別状はないようだ。肩を切られた人や足を鋭い爪のようなもので引っかかれた痕、手や腹を切られた人がいた。その5・6人の中には先日母親を殺されてしまった雪乃ちゃんもいた。




私はすぐに雪乃ちゃんの所へ駆け寄り、傷の手当を手伝った。彼女の傷は手だけだったので安心する。重傷な人は3人で、村人は手際よく薬をぬって一つの家に彼らを寝かせて看病していた。雪乃ちゃんは父親のいる家へ帰っていった。


ミツさんの家へ戻ると、少し疲れた顔をしていた。しかし、笑顔で「おかえり」と言ってくれた。何があったのか聞くと、突然森から狼や羽のはえた妖怪が出てきて村を襲ったという。人の姿をした妖だったら、きっと死人が出ていたに違いない。といってミツさんは震えていた。


そういえば以前ミツさんが言っていた。普通の獣の姿をした妖怪はそれほど殺傷力もないが人と変わらぬ姿の上級妖怪はかなり危険だと。


しかしなぜいきなり村を襲ったのか。襲った妖怪は、村人たちが一丸となって戦い、森に逃げて行ったそうだ。


今後も緊張状態が続きそうだなと村は警戒を強めた。きっと明日ミツさんは村を出るなと言いそうだ。次に会うのが明後日で良かった。


次の日村長は「今日は外に出るのは危ない」と、村の人全員に外出禁止を命じた。ミツさんと家の中で大人しくしている間、妖怪のことについて聞いてみた。



『ねえミツさん、森の妖怪について聞きたい。』



「何が知りたい?私もそこまで詳しいわけではないがねぇ」


『なら、森の長については?』


「森の妖怪を率いている長か、それなら知っている。乙鬼(いつき)という鬼の大妖怪さ。」


『乙鬼…。』



人間でも妖怪にも容赦なく殺してしまう恐ろしい鬼なのだとミツさんは言う。面倒事を嫌い、だからこそきっと無駄な殺生はしないが気分次第。

血のような赤い髪と目をもつ妖で額の左側から角が生えている。人と同じ姿形をしていて、外見は二・三十代。妖術以外では主に鎖を使う。この姿を見た人間は一人だけいて、「乙鬼」の特徴を村人に教えたそうだ。獣に引きずりこまれてしまい森を彷徨っていた時に、その乙鬼という森の一番の権力者に出会ってしまったそうだ。襲われた所をなんとか逃げ延びたが、瀕死状態で翌朝に帰らぬ人となったという。


この森の長が現代まで語り継がれる伝説となる。その鬼といずれ現れる少女を引き合わせないように出来ないものか。こんなにも優しい村の人たちを守りたい。



話をひたすら聞いた後は、妖怪が昨日みたく襲撃してきたときのために備えられている武器の場所を教えてもらい、そこに置かれていた弓矢だけでも射ぬけるようになろうと決心した。

しかし外に出ているのが村長に見つかり怒られてしまった。しかし朝すぐに練習出来るように、常に持ち歩く許可をくれたので、ガキンチョと遊んでるときや、朝はたくさん練習することにした。



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