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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―葵禁忌のはじまり ―【過去編】

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祓いではなく、救い—— 葵と真白

いつもお読みいただきありがとうございます(*´∀`*)

最後までお付き合いいただければ幸いです。


−−−




あれほど荒れていた戦場が、

嘘のように静まり返っていた。


崩れた家屋。

焦げた柱。

黒く焼けた地面。


風が吹くたび、

焼けた土埃がさらさらと舞い上がる。


真白

「火の童子さま……ありがとうございました」


胸の奥から、

自然とこぼれた言葉だった。


火の童子かのこどうじ

「えぇねん……気にせんでえぇ……」


ぶっきらぼうに答えながらも、

その声はいつもより少しだけ静かだった。


そして、

遠くの空を眺めながら、ぽつりと呟く。


火の童子

「なぁ真白や、輪廻に帰れんかった魂は……

 最後は苦しくなかったんやろか?」


彼らが少しでも苦しまなかっただろうかと、問いかけるように。


救いを確かめるような、

祈りに近い声だった。


真白は、

ゆっくりとうなずく。


真白

「はい……最後には皆、穢れの怨嗟から解放されて……

 光と共に、穏やかに消えていきました……」


"あたたかい"と、


"ありがとう"と。


そう言いながら。


えにし

「……悲しいね……」


縁の小さな声が、

やけに響く……


「悪鬼にさえならなければ……

 輪廻転生の救済も、ちゃんとあったのに……」


いつもの軽い口調はなく、

ただ静かに、悔しさがにじむ。


菖蒲も、

焼け跡を見つめながらそっと言った。


菖蒲あやめ

「この状況では……

 亡くなる前には、とても穢れていたのでしょう……」


飢え。

恐怖。

絶望。


積み重なった負の感情が、

人の魂を、ここまで歪めてしまったのだ。


誰が悪いわけでもなく。


けれど、


確かに救われなかった命があった。


そこへ――


瓦礫を踏む、かすかな足音が近づいてきた。


振り向くと、

焼け跡の向こうから、

一人の青年が歩いてくる。


崩れた瓦礫を飛び越えながら、

落ち着いた足取りで。


どこか飄々としていて、

けれど芯の通った気配をまとったその姿に、


縁がふっと目を細めた。


「葵くん、久しぶり〜!」


声をかけられた青年――葵は、


縁と、そして火の童子へ、懐かしむように視線を向けると、


にこやかに微笑んだ。


「縁さま、火の童子さま。

 ほんとに久しぶりですね。」


火の童子が、にっかと笑う。


火の童子

「相変わらず元気そうやな、葵!」


葵は、やわらかく目を細める。


「なかなか、お会いする機会がありませんでしたからね。」


穏やかな声だった。


縁が、それにつられるように、

くすっと笑う。


「ほんとだよ!

 静音とはよく会ってるけど、

 葵くんとは神在月に出雲へ出向いた時くらいだもんね~」


真白と菖蒲は思わず顔を見合わせ、首を傾げた。


真白

「縁さまは、葵さまとはお知り合いなのですか?」


縁はあっさりと答える。


「うん、もちろん知ってるよ! 静音の双子のお兄さんだよ!」


真白・菖蒲

「えっ――」


思わず、

真白と菖蒲の声が重なった。


二人はそろって葵を見つめる。


静音にどこか似た面影。


けれど、

雰囲気は対照的で、どこか飄々としている。


菖蒲が慌てて背筋を伸ばした。


菖蒲

「し、失礼いたしました。

 豊穣神社の眷属、菖蒲と申します。」


真白もぺこりと頭を下げる。


真白

「同じく眷属の真白です。」


葵は柔らかく目を細めた。


「ご丁寧にどうも。

 助太刀、とても助かったよ。

 ありがとう。」



そして――


ふと、

葵は真白の方へ視線を向けた。


まだ光の余韻が残っているように、


真白の身体から、

淡い白い光が静かに漂っていた。



「それにしても……

 さっき君の光の力、すごかったね。


 君の浄化の術なのかな?

 僕は初めて見る力だ。」



その声には、

素直な驚きと、どこか楽しげな響きがあった。



ただ純粋に――


「すごい」と思ったからこその言葉。



真っ直ぐ向けられたその視線に、

真白は一瞬、戸惑ったように目を瞬かせる。



それから、どこか照れたように、

葵に答える。



真白

「……僕の権能です。


 人の心の穢れや、眷属の穢れなどを祓い、

 浄化する力でして……」



言いながら、

視線がそっと地面へ落ちる。



真白

「元の姿には戻せませんが……


 せめて、

 苦しみからだけでも解放できればと……」



最後の言葉は、

ほとんど祈りのように小さかった。


そう言って、

そっと視線を落とす。



助けられなかった命。

還せなかった輪廻。


その重みを、

すべて自分ひとりで背負っているかのような横顔だった。



葵は、

しばらく何も言わずにその姿を見つめる。


やがて、

静かに口を開いた。



「……真白くんはさ。」



真白が顔を上げる。



「自分の力を過小評価しすぎじゃないかな?」



葵は

柔らかく微笑みながら、



「さっきの悪鬼討伐だって、


 救われた魂のほうが、

 ずっと多いと思うよ。」



その言葉に、

真白は目を見開いた。


葵は、

小さく頷く。



「君の光、

 あれは“祓う力”っていうより……


 ちゃんと、“救う力”だった。」



そして、

穏やかに微笑んだ。



「……優しい力だね。」



短い一言。


けれど、

それ以上の言葉はいらなかった。



ただ、

真白という存在そのものを、

まるごと肯定する響きだった。



戦場の焼け跡に、

ほんの少しだけ、

穏やかな空気が戻る。


風が静かに吹き抜け、

焦げた匂いが、

ゆっくりと薄れていく。



張り詰めていた緊張が、

ほどけるように消えていった。



まるで――


ここに残っていた魂たちも、

ようやく安らいだかのように。




最後までお付き合いいただきありがとうございました。


次回もよろしくお願いいたします(*´∀`*)

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