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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―葵禁忌のはじまり ―【過去編】

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眷属たちの鎮魂歌

いつもお読みいただきありがとうございます。

最後までお付き合いただけましたら幸いです。

(*´∀`*)




―――


菖蒲あやめ

「たぁーーーー!」


真白

「菖蒲様! 足元にも潜んでいます!」


真白が叫ぶのと同時に、

菖蒲は後ろへ飛び上がる。


しかし――


足元から伸びた黒い穢れの棘が、

菖蒲めがけて鋭く伸びた。


真白

「菖蒲様!」


菖蒲

(くっ、空中では思うように避けきれないっ……!)


避けきれないと悟り、

少しの負傷ならばと覚悟を決め、

ぎゅっと目を閉じる。


えにし

「菖蒲! 諦めないの!」


火の童子かのこどうじ

「縁、結界頼むで!」


――次の瞬間。


覚悟した菖蒲に、

痛みは来なかった。


代わりに、

目の前に淡い光の結界が広がる。


結界に阻まれた穢れの棘は、

そのまま――


火の童子の焔によって、

一瞬で灼き尽くされた。


すんでのところで助けに来てくれた縁と火の童子を見て、

真白もほっと息を吐く。


「急いで来たんだけど、大丈夫だった?」


菖蒲

「縁さま! 火の童子さま! 助かりました。」


縁と火の童子の元へ、

菖蒲と真白も駆け寄る。


火の童子

「ほんで、手強い悪鬼はどこや?」


菖蒲

「はい! 今あちらで葵様が幻術にて動きを留めております!」


菖蒲の言葉を受けて、

縁は葵の方を見る。


(あれは……静音のお兄さん? って今はそれどころじゃないか!)


「動き封じてるのに手強いってどういうこと?」


菖蒲

「それが、無数の人の子の魂が融合して悪鬼になったようで、

再生回数が多く、手こずっています。」


火の童子

「ほんなら、動き留めとる間にアタイが何度でも焼き払ろうてやる!」


真白

「お待ちください、火の童子さま!

それでは何回焼き尽くせばよいのか分かりません!」


火の童子

「ほんなら他になんか方法あるんか?」


真白

「火の童子さま。

僕が集められて悪鬼になった魂を浄化して滅します。


そうすれば根源となった悪鬼が露出してくるはずです。


ですから火の童子さまには、

その根源の悪鬼を焼き祓っていただくのはどうでしょうか?」


「なるほどね〜。

真白くんなら余分な部分削ぎ落とせるから、そっちのほうがいいかもね。」


火の童子

「せやけど、真白の権能は悪鬼になってもうたら効かんのとちゃうんか?」


真白

「効かないわけではないですよ。

悪鬼になってしまったら祓っても、元には戻せないという意味です。


悪鬼になってしまった場合、

僕の浄化の権能で消滅するだけです……」


火の童子

「……ほうか。

人には戻せんが、祓うことはできるって事やったんやな。」


真白

「はい。」


そのとき、

葵が声を張り上げる。


「作戦会議は終わったかな?

そろそろ術の維持も厳しいんだけど!」


「今はこの戦術が一番いいかも!

とにかく葵くんが抑えてる間に行ける? 火の童子! 真白くん!」


火の童子

「誰に言うとんねん! 行けるに決まっとるやろ!

真白、頼むで!」


真白

「はい! 葵さま! もう少しだけ頑張ってください!」


「簡単に言ってくれる!」


真白は静かに目を閉じ、

深く息を吸い込み集中する。


喧騒も、

悪鬼の唸り声さえも――


すべてを意識の外へ追いやる。


ただ、己の内に宿る“浄化”の力だけに集中する。


胸の奥が、淡く、あたたかく灯った。


春の陽だまりのような、やわらかな光。


真白はその光を、そっと両手へと巡らせる。


掌が、淡く白銀に輝きはじめた。


それから――


葵が動きを留めている悪鬼へ向けて、両手をかざす。


足元に五芒星陣が浮かび上がった。


清らかな光で描かれた陣が、静かに回転し始める。


次の瞬間。


天へ向かって、巨大な白い柱が立ち昇った。


まるで、天と地を繋ぐ御神木のように。


光はやさしく、

けれど絶対的に、

悪鬼を包み込んでいく。


白い光に照らされ、

またたく間に黒い悪鬼の塊は小さくなっていく。


光が、さらに強くなる。


その刹那、

この場のすべての音が消えた。


そのとき、微かに声が聞こえた気がした。


「――――……」


泣き声。


助けを求める声。


苦しみに歪んだ、無数の“人の子”の魂の声。


真白は、そっと目を細める。


「……大丈夫です」


やさしく、語りかけるように呟いた。


「もう、苦しまなくて大丈夫ですよ……」


幼い子ども。


母親。


老人。


さまざまな姿の、穢れてしまった魂たち……


『……ありがとう……』

『あたたかい……』

『もう……痛くない……』


かすかな声が、風に溶ける。


泣いているようで、笑っているような、そんな安堵の響き。


真白の頬を、一筋の涙が伝った。


「……どうか、安らかに」


澄んだ鈴の音のような余韻が響き、

悪鬼を覆っていた無数の魂は、やがてすべて、


光へと還っていった。


真白は――

祈るように、最後の力を込める――


悪鬼を形作っていた黒は、

影そのもののように剥がれ落ち、

触れられた端から砂となって崩れ、


光が中心に集結して行く。


そして光が終息し、

あとに残ったのは――


黒く、濁った、核だけ。


憎悪と怨嗟が凝縮した、根源の悪鬼。


真白が、静かに振り返る。


「……火の童子さま。

 お願いします」



穢れてしまった魂たちの声を聞いた火の童子は、

怒りに震えていた。


それは激情ではない。


胸の奥で、じわじわと燃え続ける、

消えることのない業火のような怒りだった。


そして――


怒気をはらんだ、低く静かな声で告げる。


火の童子

「まかしときぃ……」


短い一言。

だがそれだけで、場の空気が張りつめる。


火の童子は、

ゆっくりと悪鬼へ片手をかざした。


次の瞬間。


轟音とともに、

最大限まで高められた焔が解き放たれる。


爆ぜるような業火が、

悪鬼を丸ごと包み込んだ。


火の童子

「輪廻に帰れんようになってもうた魂たちに詫びろや……


 お前だけは――絶対に許さへんからな……」


その声に宿るのは、

怒りというよりも、裁きだった。



悪鬼は、

火の童子の怒りをまとった炎の熱に焼かれ、



絶叫に似たうめき声をあげる。



だが――



火の童子は、

その様子さえも冷ややかな眼差しで見つめたまま、



一切の情けをかけることなく、



悪鬼の塵ひとつ残さず、

すべてを焼き尽くした。



まるで、

嵐が通り過ぎたあとのような静寂。


火の童子は、

ゆっくりと腕を下ろした。


その背中から、

怒りの焔はもう消えている。


残っているのはただ、

小さな、深い疲労だけだった。


真白は、

そっと胸に手を当てる。


さきほど光に消えて行った魂たちを思い出し、

小さく目を伏せた。


淡い陽の光が、

雲の切れ間から差し込む。


あたたかな光が、

四人の足元を静かに照らしていた。


まるで――


輪廻に還ることは叶わなかったが、

穢れからは救われた魂たちの、

「ありがとう」が、


まだここに残っているかのように――



お読みいただきありがとうございました。

また次話でお会いできれば幸いです。(*´ω`*)

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