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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―葵禁忌のはじまり ―【過去編】

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残された琥珀糖

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、

真白の「力」と「やさしさ」に

少しだけ触れていただけるお話です。


穏やかな空気の中で交わされる、

眷属たちのひとときを、

どうぞゆっくりお楽しみください。(*´∀`)

静音の、

火の童子への怒りは、

真白のおかげで、きれいに消えていた。


何度言っても無茶をする火の童子への苛立ちも、

怪我をしたことへの焦りと心配も、

いまはもう、欠片も残っていない。


ただ、穏やかな気持ちがあるだけだった。


静音は、その不思議な感覚を確かめるように、そっと息を吐く。

胸の奥が、すう、と軽い。


こんなにも心は軽くなるものなのかと、

小さく驚きながら。


そして――


気づけば自然と、

もう少しだけ、真白の力のことを知りたいと、

そう思っていた。



「あの、少し聞いてもいいですか。

 真白さんが力を使えば浄化できるのなら、

 その琥珀糖はなぜ必要なのですか?」



ただ、純粋な疑問だった。


静音は、その優しい力を、

もう少しだけ知りたくなったのだ。



静音の問いに、

縁と真白は、ふと顔を見合わせる。


真白は一瞬だけ言葉に迷う。



真白

(……どこまで詳しく話してよいものだろうか)



真白は、それを確かめるように、

そっと縁へ視線を送り――


縁が頷くのを見て、

ようやく、こくりと小さく頷いた。



「そうだよね〜、そこ不思議に思うよね」


やわらかく微笑みながら、

縁はそっと真白へ視線を送った。


「真白くん、お願いしてもいい?」



真白はこくりと小さく頷くと、


真白

「僕の力は……今のところ、僕にしか扱えなくて……」


「なので、この琥珀糖に神気を込めて、

 誰でも使える形にしているんです」


「この飴を食べてもらえれば、

 神気が体を巡って……

 僕がそばにいなくても、穢れを浄化できます」



真白が言葉を終えると、

どこか照れたように小さく息を吐く。


説明は少し苦手なのだろう。


その様子を見て、

縁がくすりと笑った。



「そういうこと!

 飴にしてあるから、より効率的に配れるしね」



静音はわずかに目を見開き、

驚きながらも、真白へ静かに視線を向けた。


静音

「……自分の神気を、飴玉に?」



理屈は理解できる。


だが――

それは、簡単にできることではない。



そこへ――



火の童子

「なぁ、それって、えらい難しいことやないの?」



「普通はね!

 僕たちが同じ事をしようとしても出来ないよ。

 自分の神気を別の物に込めるなんて」



火の童子

「せやろ?」



「でも真白くんはできるんだよね〜。

 すごいよね」


縁はどこか自分のことのように、嬉しそうに笑う。



静音

「どういう原理なのか、教えていただきたいです。

 同じことができれば、

 龍神の眷属がいなくても、回復の飴などが作れそうですし」



けれど――

当の本人は。



真白

「静音様……何といったらいいのか……」


困ったように眉を下げる。


「自分でも、よく分からないのです……

 感覚でやっているに近いですね……

 すいません」



真白の答えに、

静音は小声でぶつぶつと何かを呟きながら、

真剣な顔で考え込みはじめる。


気づけば、

すっかり自分の世界に入り込んでいた。



火の童子

「俗世で言うところの天才肌ってやつやな……」


感心したような眼差しが真白へ向けられる。



真白は、照れたように小さくまばたきをして、そっと視線を伏せた。



その様子を見守っていた菖蒲の傍らに、

淡い光を帯びた狐の窓が静かに開く。


――他の地域からの連絡だった。



菖蒲は、

わずかに視線を伏せた。


名残惜しそうに、

一同をゆっくり見回してから、

小さく一礼する。



菖蒲

「縁様、申し訳ございませんが、

 私と真白は次の地域へ向かわねばなりませんので、ここで」



「あー、そっか。

 菖蒲、助太刀ありがとうね。すごく助かったよ。」



菖蒲は、

ほっとしたように微笑んだ。



菖蒲

「いいえ、皆さんがご無事で何よりです。

 火の童子様はほどほどにお願いいたしますね!」



火の童子

「なんや!もう行ってまうのか!真白はここにおってくれ!」



静音

「火の童子様、菖蒲さんと真白さんにもお勤めがあるのです。」



そして、


静音は、にっこりと笑って。


「それに、火の童子様がこの後無茶をなさらなければよいだけの話ですよ」



その笑顔に火の童子は冷や汗を流し、

固まったまま、


とても小さな声で返事をした。



火の童子

「はい……」



その様子を見ていた真白は、



真白

「あの、静音様、火の童子様、この琥珀糖、たくさんありますので、少し置いていきますね。穢れを感じた際には、食べてください。」



真白の気遣いに、



火の童子

「真白はほんまにええ子や……」



胸の奥が、

じんわりと熱くなる。


(……こいつに何かあったら、アタイが全部燃やしたるわ)


そんな乱暴な決意が、

いつの間にか胸に根付いていた。



「ごめん!ちょっと菖蒲と真白くんを次の地域に送ってくるね!

 すぐ戻るからここで待ってて」



菖蒲

「縁様よろしいのですか?」



「もちろんだよ、元はと言えば火の童子が無茶して菖蒲たちに援護お願いしたんだから!」




真白

「縁様ありがとうございます。


 静音様、火の童子様、御身を大切に。

 それでは失礼いたします。」



真白は静音と火の童子に小さく頭を下げると、


菖蒲とともに縁の転移の陣へ歩み寄った。



足元に、転移の陣が淡く灯る。


光が、ゆっくりと二人の姿を包み込み、



――



次の瞬間、


真白と菖蒲の姿は、

春霞のように溶けるように消えていた。




火の童子

「なんかアタイまで心が軽くなった気がするねんけど……」



静音

「きっと真白さん自身からも浄化の神気が溢れていたのではないでしょうか?」



火の童子

「なんや不思議な小僧やったな。」




そう言いながら火の童子は、


真白にもらった琥珀糖を、


太陽にかざしながら、




その穏やかな余韻に、


ただ静かに浸っていた――



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


戦う力ではなく、

「浄める力」や「寄り添う力」もまた、

眷属としての在り方のひとつなのかもしれません。


少しでも、

心がふっと軽くなる時間になっていましたら嬉しいです。


また次のお話でお会い出来たら嬉しいです(*´▽`*)

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