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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―神無月/合同任務―【偵察編】

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73/100

禁忌に繋がる血の気配

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、少し不穏な気配が漂うお話になります。

物語の奥で、静かに動き始めたものを感じていただけたら嬉しいです。

どうぞ最後までお楽しみください。(。•̀ᴗ-)✧

あの後、澪斗達は三階への別の道を探したが、

どこも鍵がかかっていて入ることはできなかった。


ガチャ、ガンッ!


澪斗

「駄目だ……ここも鍵がかかってる……」


「もう……

 この階の扉は、ここで最後っぽいよ……」


「そうですね……

 どうしましょうか……?」


三人が足を止め、

今後のことを相談していると――


カツン、カツン。


静かな通路に、

誰かが階段を上がってくる足音が響いた。


一瞬にして、

三人の間に緊張が走る――


「誰かいるんですか?」


姿を現したのは、

巡回にやってきた館の警備員だった。


三人は、

強張っていた体をほっと緩める。


澪斗

「すみません!

 僕たち、今日から研修で来てたんですけど、

 出口に行こうとして迷ってしまって……」


警備員

「そうでしたか。

 でも念のため、

 お店の名札を見せてもらえる?」


「あっ!はい!

 これです!」


警備員

「ありがとうございます……

 えーっと……

 天然石屋さんのアルバイトさんね」


澪斗

「僕のは、これです」


警備員

「……はい。

 あなたも同じお店のアルバイトさんですね。

 ありがとうございました」


「出口は、

 この階段を降りて右に曲がると、

 店内に出る通路があります。

 そこから行けば大丈夫ですよ」


「ありがとうございます!

 じゃあ澪斗さん、行きましょう!」


澪斗

「えっ……あ、うん。

 ありがとうございます」


そう言って、

澪斗と紡が警備員に教えられた通りに

歩き出そうとした、その瞬間――


パシッ!


突然、

警備員の手が伸び、

紡の腕を強く掴んだ。


指先に込められた力は異様に強く、

逃れようとした紡の体が、

ぐっと引き寄せられる。


「……えっ」


「キミハ、ヤッパリ、ダメダヨ……フッヘヘ」


先程までの和やかな雰囲気は消え失せ、

警備員の顔には、

異常な黒い笑みが張りついていた。


澪斗

「紡!!」


(しまった……完全に油断した!)


「離してください! なんですか?!」


澪斗

「なに呑気に相手してんの!

 悪鬼に取り憑かれてるんだよ!」


「えっ……悪鬼に……って!

 えっ、えぇぇ!! ちょっ、離してください!」


悪鬼

「ハナサナイヨ!

 オマエ、待ってタ!


 "アノ方"ノ、モトヘ、

 ツレテイク!」


その言葉に、

澪斗の表情がわずかに変わる。


澪斗

(……コイツ、

 喋るわりに賢くはないみたいだな……よし)


澪斗

「あの方?

 お前に主人がいるの?

 悪鬼なのに、聞いたことないけど!」


悪鬼

「キイタコト、ナクテモ!

 "アノ方"、スゴイ!」


澪斗

「だから!

 どんな風にすごいんだよ?」


悪鬼は一瞬だけ動きを止め、

考えるように首を傾げたあと、

誇らしげに口を開いた。


悪鬼

「オレタチニ、

 "コトバ"、オシエテクレタ!


 ソノオカゲデ、

 ニンゲンノコトバ、ワカル!


 ニゲルコトモ、

 デキルヨウニ、ナッタ!」


澪斗

「へぇ……なるほどね。

 他には、何を教えてもらったのさ?」


悪鬼

「ニンゲンニ、

 ウマク、カクレル、

 ホウホウ!


 ダカラ、

 オレタチ、

 オレイニ――


 "アノ方"ガ、

 ホシイモノ、

 アゲル!」


悪鬼の指が、

ぎこちなく紡を示す。


澪斗

「……なんで、その子なんだよ。

 どうして紡が欲しい?」


悪鬼

「ベツニ、

 コイツジャナクテモ、

 ヨカッタ。


 ホントハ、

 コノマエ、キタヤツガ、

 ヨカッタ」


澪斗

「はぁ!?

 真白様のこと言ってんの!?

 ふざけないでよ!

 駄目に決まってるでしょーが!」


「……澪斗、落ち着いて……」


悪鬼

「トニカク!

 オマエ、コイ!」


「えっ……嫌ですよ!」


澪斗

「なんで、その子のことが

 欲しいって分かるんだよ!」


悪鬼

「"アノ方"、イッテタ!


 キレイニ、ナル、

 "チカラ"、ヒツヨウ!


 マエニ、ソト、イッタ、

 ナカマ――

 ケサレソウニ、ナッタ!


 アノ、"チカラ"!


 オマエカラモ、

 カンジル!」


そう叫ぶと同時に、

悪鬼は澪斗目がけて、

穢れの棘を放った。


澪斗

「チッ……水の防壁よ!」


澪斗の前に水の壁が展開され、

飛来した棘を正面から受け止める。


悪鬼

「!!!!」


「オマエ……!

 "アノ方"ト、

 オナジ、チカラ……!

 ナゼ!!」


悪鬼は驚きながらも、

ごくり、と喉を鳴らし、

澪斗をじっと観察した。


そして――

歪んだ笑みを浮かべた。


「オマエ……

 "アノ方ニ似テ――"」


その言葉を、

遮るように――


「……お前……

 焼き尽くす……


 紡、離して……」


蒼の周囲に、

静かに青い炎が揺らめき、

悪鬼の体を包み込む。


「蒼さん!!」


悪鬼

「ギャアアア!!

 アヂィ!!」


たまらず、

悪鬼は紡の腕を離し、

警備員の体から抜けるようにして、

扉の向こうへと逃げ去っていった。


「……逃げちゃった……

 ごめん……」


澪斗

(っ!しまった!逃げられた!)


澪斗

「……いえ、大丈夫ですよ蒼さん!

 むしろ助かりました……」


「紡、ごめんね。

 ちょっと情報を引き出したくて、

 すぐに助けられなくて……」


「いえ! 大丈夫です!

 あのくらいの悪鬼なら、

 僕でも祓えたと思いますし……


 でも、あの悪鬼……

 最後に澪斗さんのことを見て、

 "あの方に似て――"」


「紡、腕大丈夫?

 少し穢れついてる……


 早く、

 豊穣神社に戻ろう……」


「えっ!

 ほんとですね!

 早く戻って、

 縁様たちにも報告しましょう!」


「……うん……そうだね……」


紡と共に階段を降りていく蒼の背中を、

澪斗は少し後ろから見つめていた。


澪斗

(気のせいじゃない……

 蒼さんは、

 悪鬼と紡が言おうとしたことを遮った……


 "あの方に“似てる”って……

 でも、どうして?)


−−−


蒼は、少し後ろを歩く澪斗をちらりと振り返った。


何かを考え込むようなその横顔を見つめながら、

蒼の脳裏には――

あの日、火の童子に告げられた言葉が蘇っていた。


火の童子かのこどうじ

「あんな、澪斗のことなんやけどな!

 今回の禁忌の眷属な……

 もしかしたら、

 澪斗と静音の血縁者かもしれんねん……」


その言葉に、

蒼は思わず目を見開いた。


「……澪斗の、家族……

 ってこと……?」


火の童子

「いや、まだ可能性の話や。

 ほんでもし、そうやとしたらやな……」


一拍置いて、

火の童子は続けた。


「静音がな、

 澪斗に“記憶封印の術”を

 かけとるんよ……」


「……えっ……

 なんで……?」


火の童子

「……哀しいことにな。


 そいつのこと、

 澪斗は大好きでな。

 よう懐いて、

 後ろばっかり追いかけとったんよ。


 せやからな……

 禁忌の眷属になってしもうた後、

 静音が、

 澪斗まで落ちたらあかん言うてな……

 それでや……」


「……澪斗、かわいそう……

 でも……静音も、かわいそう……」


小さく呟いてから、

蒼はぽつりと続けた。


「……蒼、

 静音の言うこと、

 分かる気がする……


 蒼も……

 もし火の童子が

 禁忌の眷属に落ちたら……

 一緒にって、思う……」


火の童子

「それはあかんやろ!」


間髪入れず、

火の童子が声を張り上げた。


「誰が大和の面倒見るねん!

 それに心配せんでも、

 アタイは落ちる前に燃え尽きるから

 安心せい!


 ……てか、落ちるか!」


「ふふっ……

 確かに……

 禁忌の眷属の火の童子は、

 想像できない……」


火の童子

「せやろ?」


そう言ってから、

少しだけ声を落とす。


「……そんなことでな。


 もし対面した悪鬼が、

 澪斗と血縁者のことを

 匂わすようなこと言うたら……」


そこまで、

いつもの調子で話していた火の童子は――

次の瞬間、

一切の笑みを消した。


火の童子

「その時は……

 すぐに、焼き尽くしてくれるか?」


その真剣な眼差しに、

蒼はただ事ではない何かを感じ取った。


けれど――

その頼みを、

断る理由などあるはずもなく。


蒼は、

力強く頷いた。


「任せて……

 蒼の焔で、

 焼き尽くして……

 澪斗、守る……」


火の童子は一瞬だけ目を細め、

それから、

いつもの豪快な笑顔に戻った。


火の童子

「ありがとうな、蒼。

 ……すまんのう」


「……蒼、

 初めて火の童子に

 頼まれた……


 嬉しい……」


火の童子

「おっ!

 確かにそうやな!


 それだけ蒼も、

 成長しとるってことや!」


そう言いながら、

火の童子は蒼の背中を

バンバンと叩き、

豪快に笑ったのだった。


───


(……火の童子。


 悪鬼には逃げられちゃったけど……

 ちゃんと、出来た……


 ……良かった)


約束を果たせたことに、

蒼はほっと小さく息を吐く。


そして――

そっと視線を前へ向けた。


三人は、

それぞれの思いを胸に抱えたまま、

何も知らぬ夜へと歩みを進め――


豊穣神社へと、

帰っていったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


少しずつ明らかになっていく違和感や繋がりが、

今後どのような形になるのか――

次回も、見守っていただけたら嬉しいです。(っ´ω`c)



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