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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―神無月/合同任務―【偵察編】

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開かない扉と、残された気配

本日もお読みいただきありがとうございます。

とても嬉しいです(∩´∀`)∩ワーイ

荷物を取り終えた

澪斗みなと、紡、蒼の一行は、

前回、真白たちが先へ進むことができなかった

三階へと続く扉の前に立っていた。


人気のない廊下は、

昼間にもかかわらず妙に静まり返っている。


空調の音だけが、

低く、一定のリズムで響いていた。


澪斗は扉の前に立ったまま、

その向こう側をじっと見つめる。


澪斗

「……ここが、前回

 真白様たちがたどり着いた場所だね……」


扉自体は、ごく普通の従業員用の扉だ。



それでも――

その向こう側だけが、

どこか“隔てられている”ように感じられた。


少し後ろで、

蒼がぽつりと呟く。


「……この奥、

 行けなくて……

 この少し下で、

 悪い物、燃やしたって……

 火の童子、言ってた……」


言葉は途切れ途切れだが、

その内容が示すものは重い。


澪斗は小さく頷き、

ゆっくりと息を整えると、

背後を歩く紡へと視線を向けた。


澪斗

「紡は、真白様と同じ権能だったよね」


一瞬、間を置いてから、

慎重に問いかける。


澪斗

「どう?

 瘴気の気配は……ある?」


紡は、

少し背筋を伸ばし、

扉の前へ一歩進み出た。


目を閉じ、

意識を静かに落ち着かせる。



空気の流れ。

床から立ち上る気配。

扉の隙間に残る“名残”。


紡は、意識を研ぎ澄ませて探る。


……けれど。


しばらくして、

ゆっくりと目を開いた。


「えっと……」


戸惑いを含んだ声。


「……感じませんね」


澪斗が、わずかに眉をひそめる。


「真白様たちのお話だと、

 この先から、

 かなり濃い瘴気の気配が

 あったと聞いていましたが……」


扉の向こうを、

もう一度見つめてから、

首を横に振る。


「今は……

 全く感じません」


沈黙が落ちた。


澪斗は扉に視線を戻し、

ゆっくりと言葉を選ぶ。


澪斗

「……消えた?」



しかし、その瞬間――

扉の向こうから、

ほんの一瞬だけ。


“何かが、息を潜めた”

そんな錯覚が、

三人の間を、静かに通り抜け、


同時に背筋を、冷たいものがなぞった。


――“何もない”はずの空間に、

視線だけが、残っている気がした。


けれど確かに――

なにかに“見られた”という感覚だけが、

三人の間に残っていた。


紡は、思わず息を呑み、

無意識に一歩、身を引く。


澪斗は、反射的に扉から視線を逸らし、

周囲へと気配を探るように目を走らせた。


蒼は、万が一に備え

澪斗と紡をすぐに守れる位置で、静かに警戒していた。


そこには、何もいない。

それでも――


空気だけが、

一瞬、重くなっていた。



蒼が、

警戒しながら小さく首を振る。


「……消えた、より……

 隠れてる、感じ……」


その言葉に、

澪斗の胸の奥で、

小さく何かが引っかかった。


(消えたんじゃない……

 “いないふり”をしてる?)


扉の向こうは、

相変わらず、静かだった。


静かすぎるほどに。


澪斗は、

ドアノブへと手を伸ばしながら、

小さく息を吐く。


澪斗

「……行ってみるしか、なさそうだね」



澪斗は、言いながらゆっくりとドアノブへ手を伸ばした。


金属の冷たさが、指先にじんわりと伝わる。


一度、小さく息を整えてから――

静かに、力を込める。


ガチャリ。


やけに大きく響いたその音に、

三人の肩が、わずかに強張った。


だが、扉は動かない。


もう一度、確かめるように回す。


ガチャ、ガチャ。


鈍い感触とともに、

拒むように止まっている。


澪斗は、ゆっくりと手を離し、振り返った。


紡と蒼の視線を受けて、

困ったように、澪斗は小さく肩をすくめる。


「……鍵、かかってる」



紡は、張り詰めていた肩の力を抜くように、

小さく息を吐いた。


「鍵、ですか……。

 さすがに鍵は、どうすることもできないですね……」


扉を見上げながら、少し困ったように苦笑する。


その横で、

蒼が首をかしげるように小さく一歩前へ出た。


「……蒼の、熱で……

 とかす?」


真剣そのものの声だった。


澪斗は一瞬だけ想像し、

すぐに苦笑して首を振る。


澪斗

「いやいや。

 さすがに鉄の扉を溶かしたら大事だよ」


視線を廊下の先へと向けながら、続ける。


「警報とか、監視とか……

 人の世の“面倒なもの”が、

 一気に動き出しそうだしね」


軽い口調とは裏腹に、

その目は慎重だった。


澪斗

「ここは無理せず、

 どこか別の道を探したほうがよさそうだ」


そう言ってから、もう一度だけ扉を振り返る。


開かないはずの扉の向こうに、

まだ“何か”がいる気配を、

完全には振り切れないまま――。


澪斗は、歩きながらも思考を巡らせていた。


(……さっき、扉に手をかけた瞬間。

 ほんの一瞬だったけど――

 確かに, 何かの気配があった)


錯覚ではない。

あの奥には、まだ“残っている”。


(やっぱり……

 あの扉の先に、何かがあるのは確かだね)


無言のまま考え込み、

足取りも自然とゆっくりになっていたその背中を、

蒼は静かに見ていた。


やがて、小さな声がかかる。


「澪斗……大丈夫?

 ……さっきの気配、気になる?」


その言葉に、

澪斗は、はっと我に返る。


一瞬だけ視線を彷徨わせてから、

いつもの調子を取り戻すように、軽く笑った。


澪斗

「えっ……あぁ」


「別の通路から行けるところがあるか、

 考えてただけですよ」


そう言って歩みを進めるが、

その声には、ほんのわずか――

隠しきれない警戒が混じっていた。




−−−




澪斗たちが立ち去った気配を、

扉の向こう側から、じっと窺っている者がいた。


足音が遠ざかり、

空調の音だけが戻ってくる。


しばらくして――

低く、息を吐く音が、闇の中に落ちた。


「……行ったか」


その者の傍らで、

影のように寄り添っていた悪鬼が、

不安げに身を震わせる。


悪鬼は、

縋るようにその者へ手を伸ばした。


その小さな手を、

不安を拭うよう優しく包み込みながら、

その者は、やわらかな声で告げる。


「もう大丈夫だよ」


まるで幼子を宥めるように、

穏やかに、言い聞かせる。


「あの者たちは、去って行った。

 もう、ここには戻ってこない」


悪鬼は、

恐る恐る顔を上げた。


悪鬼

「……もう、

 こわいこと……ない?」


その問いに、

その者は一瞬だけ目を細め――

すぐに、優しい微笑みを浮かべる。


謎の人物

「あぁ。何も心配はいらない」


悪鬼の額に、

そっと手を添えながら。


「さぁ……戻ろうか。

 私たちの“住まい”へ」


そう告げると、

その者は悪鬼の手をしっかりと握り、

優しい笑みを向けた。


悪鬼は、

その笑顔に縋るように頷く。


やがて二つの影は、

扉の先に広がる暗闇の中へと、

静かに溶けていった。


――その場所に、

再び沈黙だけが残される。


だが確かに、

そこには“何か”が、

潜んでいた。


最後までお読みいただきありがとうございました。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

次回もお付き合いいただければ幸いです。

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