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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―神無月/合同任務―【偵察編】

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澪斗班のはじまり

今回のお話は、

澪斗班として動き出した初日の出来事になります。


ゆっくりとした空気感も含めて、

楽しんでいただけたら嬉しいです。(*´ω`*)

境内を後にし、皆で並んで歩きながら社殿を離れていく道中。


澪斗みなとは、ふと思い出したように笑って言った。


澪斗

えにし様、なんだか紡のお父上みたいだったね」


その言葉に、紡は一瞬だけ目を瞬かせた。

思いがけない言葉だったのか、わずかに驚いたような表情を浮かべる。


「そうでしょうか?」


澪斗

「うん。忘れ物はないか、とか。

 僕も初めての外任務の時は、よくああやって心配されてたよ」


懐かしむように続けた澪斗の声は、どこか柔らかい。


紡は少し考え込むように視線を落とし、

反省するような調子で、ぽつりと口を開いた。


「それは……僕が普段から神社の備品壊したり失敗が多いからだと思うんですけど…」


紡は、言いながらチラリと視線を澪斗に向けると、


「澪斗さんは失敗とかしそうにないですけど…」


澪斗

「そんなことないよ、僕だって幼い頃には色々やらかしてたから、

 それでよく怒られたりしたかな。」


「えっ!澪斗さんがですか?!

 そう言えば以前に、

『姉さん怒ると怖いの思い出したって』仰っていましたよね」


澪斗

「そうなんだよ、姉さんは怒ると怖いんだけどさ…

 姉さんじゃなくて……」


澪斗はそう言いかけて言葉を止め、


「あれ……?」


眉を寄せ、歩みを止めた。


「……誰に、だったっけ……?」


思い出そうとすればするほど、

記憶の中に、ぽっかりとした空白だけが残る。


確かに、そこに誰かがいたはずなのに。

大切で、当たり前のように隣にいた“誰か”が。


けれど――

その名も、声も、顔も。

どうしても、掴めなかった。


澪斗は、困ったように小さく笑う。


「……変だな」


その一言だけが、静かな道に落ちた。


あお

静音しずねじゃないなら…

 主神様か、他の高位眷属じゃない?

 蒼も、覚えてない眷属によく怒られてたよ…」


「蒼さんもですか?!」


「うん、蒼…

 焔の制御下手でよく周り燃やしちゃって…」


澪斗

「えっ、蒼くんが?

 火の童子様じゃなくて?」


「うん…蒼が、

 でも火の童子が色々教えてくれて…

 今は大丈夫。」


「なんか僕だけが駄目な眷属かと思ってたんですけど、

 お二人にも同じような時期があったと聞いてほっとしました!」


澪斗

「あのね紡。

 眷属だって、最初から落ち着いて

 なんでも出来るわけじゃないよ。


 生まれてから生を重ねて、

 少しずつ成長して、

 今の自分たちになるんだから。」


「…紡は今いっぱい失敗してもいい時期…

 現世に降りてきたばかりは特に、

 そのために古参の眷属が側にいてくれる…

 だから安心して…」


澪斗

「そうそう、そういうこと。


 ……っと、時間だね。

 ちょっと急ごうか」


そういって歩き出した澪斗の背中を見つめながら、

蒼は先日の火の童子かのこどうじとのやり取りを思い出していた。



−−−



火の童子

「蒼や、明日は澪斗と紡と調査の日やろ?」


「うん。」


火の童子

「その中じゃ蒼が一番古参の眷属や、

 なんかあったら遠慮なく燃すんやで、」


蒼は少し戸惑いながら、火の童子を見つめる。


「でも蒼は、火の童子と大和いないと心配…」


不安そうにする蒼に火の童子は優しく、


火の童子

「心配せんでえぇ、

 この長い時を一緒に居たあたいが言うんや!

 自信もつんや!


 それとな、

 こっちが本題なんやけどな

 澪斗なんやけどな――」


蒼は火の童子からの話を聞き終えると

珍しく驚いた表情になったが、


「…分かった…

 澪斗なんかあったらすぐ知らせる…」


火の童子

「ありがとう、蒼も気ぃつけなあかんで、

 蒼になんかあったら、

 あたいも大和もブチギレてまうからな!」


そう言うと火の童子は

蒼の背中をバンバン叩きながら豪快に笑った。



−−−



それから一行は笑成えなと合流し、

面談を受け晴れてアルバイト要員になった。


澪斗

「ねぇ、さっき面談したばかりで、

 もうレジの練習って……

 人の世の中は、どれだけ人手不足なの?」


「ま、まぁ……一時間だけですし。

 これが終われば、建物の中を案内してくれるって

 言ってましたし……」


二人が小声でそんなやり取りをしていると、

ちょうどその時――


「これお願いします。」


軽やかな声とともに、

一人の客がレジへとやって来た。


澪斗は、ほんの一瞬だけ目を瞬かせた。

そして――


すぐに背筋を伸ばし、

柔らかな笑みを浮かべる。


澪斗

「いらっしゃいませ。

 お客様、袋が有料になりますが

 ご利用はいかがいたしますか?」


その声は落ち着いていて、

先ほどまでの戸惑いが嘘のようだった。


商品を受け取り、

手際よくバーコードを通しながら、

視線と声の高さを自然に合わせていく。


「お会計、〇〇円になります。

 ポイントカードはお持ちでしょうか?」


支払いが終わると、

袋詰めまで流れるように済ませてから、

にこやかに一礼した。


「ありがとうございました、

 またお願いいたします。」


完璧だった。


横で見ていた紡は、

思わずぽかんと口を開ける。


「……え?」


澪斗はレジの表示を確認しながら、

何事もなかったように小さく肩をすくめた。


澪斗

「ほら。

 基本はどこも同じだからね」


(すごい…

 澪斗なんでも出来る…

 火の童子言ってた…

 龍神の眷属優等生…)


蒼がそんなことを思っているとも露知らずに、


澪斗のその背中は、

とても“初日”とは思えないほど、

堂々としていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

澪斗・紡・蒼、

それぞれの立場や距離感が、

少しずつ見えてきた初日になったかと思います。


次回も、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

(*´∀`*)

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