出発前の小さな確認
いつもお読みいただきありがとうございます(*´∀`)
最後までお付き合いいただければ幸いです。
最後に皆でお茶を飲んで解散してから二日が経ち、日もすっかり落ちた頃。
笑成
「縁さん、お疲れ様です!」
縁は元気にやってきた笑成に優しい視線を向けながら、笑成を出迎える。
縁
「これは笑成さん。
先日は、ありがたい提案をありがとうございました。」
笑成
「いえいえ、私に出来ることがあればさせていただきたいだけですから、」
縁
「それで今日はお仕事の帰りによってくださったのかな?」
縁がそう問いかけた瞬間、
笑成の中からユッキーが姿を現し、
元気いっぱいに笑成へ告げた。
ユッキー
「縁様こんにちはです!
さぁ笑成!
縁様にお話するのよ!」
縁
「ふふっユッキーちゃんこんにちは」
すっかり見慣れたやり取りに縁の心が癒されていると、
笑成
「縁さん店長にこの間のアルバイトの件お話した所、
ぜひ来てほしいとお返事を頂けたので、
そのお話に寄らせてもらいました!」
縁
「こんなに早く……
ありがとうございます。
本当に助かります、笑成さん」
笑成
「それで面接に来てほしいとのことで、
ご都合のよろしい日をお伺いしたくて……
あと、誰が来るのかも
把握しておきたくて。
一応、私の知人だと
お話ししてありますので」
最後にそう付け加えると、
笑成は急な話で申し訳なさそうに、
もう一度だけ、ぺこりと頭を下げた。
縁
「そうでしたか。
それでは早速、明日はどうですか?
笑成さんのお店で、
アルバイトとして潜入していただく者も、
もう決まっていますし」
笑成
「かしこまりました!
明日で大丈夫です。
それで、どなたがいらっしゃるのでしょうか?」
縁
「それはねー」
───翌日面接当日
縁
「おはようございます。
今日は笑成さんの所へ面接に行ってもらうんだけど、
紡君と澪斗君、二人とも準備は大丈夫かな?」
縁に問われた紡は、
少し緊張した面持ちで返事をした。
紡
「はい! 頑張ります!」
澪斗
「僕も大丈夫です。
まさか現世でアルバイトする日が来るとは思いませんでしたが。」
縁
「笑成さんの話では、
店長さんと面談するだけで
良いそうだから、落ち着いてね。
それと、
紡君は高校生、
澪斗君は大学生になってるそうだから、
話を合わせといてね。」
澪斗
「紡が高校生は納得ですけど、
僕が大学生は無理ありませんかね?」
蒼
「……澪斗……
顔、幼いから……
大丈夫……」
縁
「私も蒼君に同感だね。
澪斗君はまだ大学生くらいの見た目だから大丈夫!」
「夕方からの18時〜21時で、
なるべく多く働けるようにしてもらってね」
紡
「かしこまりました! 縁さま!」
澪斗
「僕も了解です。
それにしても、僕だって結構な年生きてますけど、
まだ幼いほうですかね?」
蒼
「……澪斗……幼く見える……
眷属たち長生き……
だから見た目若いのは……仕方ない……」
澪斗
「確かにそうですね。
僕も早く、
縁様のような貫禄のある眷属になりたいのですけど。」
縁
「うーん、あと五、六百年も経てば、
貫禄はついてくると思うよ。
それと――
今日は君たちの班が調査する番だから、
くれぐれも無理せず、気をつけてね。
紡君は、主神様の御守は持ったの?」
そう問いかけながら、
縁は紡の胸元へと視線を向けた。
縁からの確認に、
紡は一瞬だけ背筋を伸ばし、
胸に指先をそっと宛てる。
紡
「はい、縁様。
こちらに、ちゃんと下げております!」
小さく微笑みながら答えるその声には、
わずかな緊張と、
任を預かっているという自覚が滲んでいた。
縁はそれを確かめるように、
穏やかに頷く。
縁
「うん、よかった。
他に忘れ物はしてない?
何かあったら、狐の窓で知らせてね。」
その言葉に、
紡はこくりと大きく頷いた。
縁
「澪斗くん、蒼くん。
とにかく紡くんは“不器用”だから、
よく見てあげてね。」
その言葉に、
澪斗は思わず紡の方へ視線を向けた。
少し首を傾げ、
上から下まで改めて眺めるようにしてから、
小さく息を吐く。
澪斗
「紡って、そんなに不器用なの?」
突然向けられた視線に、
紡は一瞬だけ目を瞬かせる。
紡
「そ、そんなことは
ないと思うのですが……。
たまに失敗はしますけど……」
語尾が少し弱くなったのを見て、
澪斗はくすりと笑い、
軽く肩をすくめた。
澪斗
「ふ~ん。
まぁ、紡も蒼くんも、
怪我したら僕のところへすぐに来てね。
さすがに致命傷は、
僕の力じゃ治せないから。」
紡
「は、はい!」
蒼
「ありがとう……
でも、澪斗と紡が怪我しないように……
悪鬼や穢れは、蒼が焼くから……
安心して……
だから、側にいてね……」
縁
「蒼くんの言う通りだね。
油断せずに、
なるべく蒼くんと一緒に行動すること!」
「紡くん、なにか困ったり分からないことは、
先輩眷属の澪斗くんと蒼くんに
すぐに聞くこと!
分かった?」
紡
「はい!」
澪斗
(縁様……
まるで紡のお父上みたいな過保護ぶりだな。)
澪斗がそんなふうに
縁と紡の様子を見つめていると、
縁が澪斗に視線を向けながら、
穏やかに告げた。
縁
「澪斗くんも、
中堅だからって油断しないでね!」
そう言って最後に念を押すと、
縁は優しく澪斗の頭を撫でた。
澪斗
「えぇ!
僕はもう子供じゃないですよ!」
縁
「あっ!
ごめん、つい流れで」
縁に抗議したものの、
少し照れた様子で澪斗は、
澪斗
「僕は無理はしないし、
紡と蒼くんにもさせないので安心してください。
そんなことしたら、
静音姉さんが怖いですからね……」
澪斗の言葉を聞きながら、
縁は微笑みを浮かべながら、
鳥居の前まで来ると、
その場に立ち止まり、
三人を見送るように静かに佇んだ。
やがて、
紡たちは朱色の鳥居へと歩き出し、
その向こうへと姿を消していく。
縁は、
小さくなっていく三人の背中を、
最後まで見届けるように見つめ続ける。
――もっとも。
現世に降りたばかりのトラブルメーカー・紡が、
本当にその任務に出て大丈夫なのかと考え始めると、
縁の胸には、
早くも小さな不安がむくむくと湧き上がってきた。
(……大丈夫かな。
ちゃんと挨拶できるかな。
知らないものに触って騒いだりしないかな……)
気がつけば、
心配の内容は任務とはまったく関係のない方向へと
どんどん広がっていく。
(これが親心ってやつかな?)
縁はそんなことを考えながら、
小さく息をつき、
自分で自分に苦笑したのだった。
最後までお読みいただきほんとうにありがとうございます(*´∀`*)
次回もお付き合いいただければ幸いです(*´ω`*)




