焔の神が許さぬもの
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炎神
「おお……
久しぃーのう、火の童子よ」
「蒼も、
息災そうでなによりや」
蒼
「炎神様……
お久しぶりに、ございます……」
少し緊張した様子で、
蒼は深く頭を下げる。
炎神
「ふふ……
蒼は、えらい立派になったやないか」
「ここにおった頃よりも、
ずいぶん顔つきが変わったで」
蒼
「……ありがとうございます、
炎神様……」
その言葉に、
蒼の声は控えめながらも、
どこか誇らしさを帯びていた。
火の童子
「ほんでな!
炎神様、さっそくなんやけどな!」
火の童子は、
現世で起きた出来事を、
身振り手振りを交えながら説明する。
悪鬼のこと。
精霊を取り込もうとした異常な行動。
豊穣神や龍神も動いている現状。
そして――
留守居役と討伐員の手配を、
頼みたいということを。
炎神
「……そりゃ、
なんとも不思議な話やなぁ」
「精霊を取り込んで
強くなるやなんて……
わしも聞いたことあらへんわ」
炎神は顎に手を当て、
少し考えるように目を伏せる。
炎神
「せやけど……
豊穣神に、龍神までもが
動いとる言うんやろ?」
「ほな、火の童子。
増員の件は、
まかしときぃ」
火の童子
「さすが炎神様や!」
炎神
「それにや……」
炎神はふと、
蒼へと視線を向ける。
炎神
「蒼も、
よう頑張っとるみたいやな」
「いつも、ありがとうな」
蒼は少し驚いた表情で、
「主神様に
お礼を言われるなんて……」
火の童子
「ほんまやで!主神様に
ありがとう言われるんは……
えらい照れてまうわぁー!」
炎神
「ははっ。
礼くらい言わせぇ」
「わしら主神が
現世に降りんでも
平和が保たれとるんはな――」
「現世で頑張っとる
眷属と、
焔の一族のおかげや」
そう言ってから、
炎神の声音は、
少しだけ低くなる。
炎神
「せやけどな、火の童子、蒼」
「わしら炎神の眷属は
確かに強い」
「……けどや。
どんなときでも、
悪鬼を侮ったらあかん」
「油断した瞬間に、
足元すくわれるもんや」
「そこんとこは、
肝に銘じとくんやで」
火の童子
「……御意」
炎神
「豊穣神のとこの
優羽ちゃんもな」
「他の眷属の間でも、
頑丈で有名やったやろ?」
「それが今回、
えらい怪我した言うやないか……」
「かわいそうに」
炎神は、
小さく息を吐きながら続ける。
炎神
「現世で活躍してくれるんは、
ほんまに嬉しいことや」
「せやけど……
御身も、大切にせなあかんで」
そう言いながら、
炎神は立ち上がり、
火の童子と蒼の前へ歩み寄る。
そして――
二人の頭を、
大きな手で、
やさしく撫でた。
その仕草は、
主神としてではなく。
子を見守る、
温かなものだった。
炎神
「ほな、そろそろやな。
焔の一族の者が、
寂しぃ思いしとるけん、
帰ってやりぃー」
火の童子
「それもそうやな!
あたいらが天界帰る時、
大和がなんや寂しぃんが
顔によぉー出とったしな!」
蒼
「……大和、
寂しそうだった……」
「……早く、
帰ってあげたい……」
炎神
「はっはっ!
そりゃ可哀想や!」
「今代の神主は、
大和言うたか?」
「若いのに跡を継いで、
えらいもんやなぁ」
「わしがよう褒めとった、
そう伝えといてな」
そして、
少し声の調子を和らげて、続ける。
炎神
「ほな……
これからも息災でな」
「いつでも、
帰って来てええんやで……」
そう言いながら、
炎神は最後に、
火の童子と蒼の頭を
何度か、やさしく撫でた。
別れを惜しむような、
温かな仕草だった。
その眼差しは、
まるで我が子を送り出す父のようだった。
火の童子
「炎神様!
また近いうちにな!」
蒼
「……蒼も、
また炎神様に
会いに来ます……」
二人はそう言い残し、
焔の気配をまといながら、
外界へと戻っていった。
―――
火の童子と蒼を見送ったあと、
神殿に静けさが戻る。
眷属
「炎神様。
焔神社へ送る
留守居役と討伐員の手配、
完了いたしました」
炎神
「ほうか。
ありがとうな」
炎神は、
務めを終えた眷属に礼を述べると、
ゆっくりと玉座に腰を下ろした。
その脳裏には、
先ほど火の童子から聞いた話が、
静かに巡っている。
(……精霊を取り込もうとする悪鬼、か)
(おそらくは、
名を失った神……
あるいは、
禁忌の眷属あたりやろな)
(名を失った神の仕業なら、
わしら主神にも
何かしら兆しが出るはずや)
(……それが無い、
ちゅうことは)
(どこぞの
禁忌の眷属の線が、
濃いかもしれんな……)
炎神は、
肘を玉座の肘掛けに置き、
顎に手を添えた。
炎神
「……火の童子と蒼が、
無事に解決してくれるんが
一番やけどな……」
低く、
しかしはっきりとした声で、
続ける。
炎神
「……万が一の時は」
「わしが、
許さん」
その言葉には、
主神としての威厳と――
我が子同然の眷属を想う、
確かな怒りが宿っていた。
炎神は、
天界の高みから、
現世へと流れる焔の気配を感じながら、
己が生み出した眷属たちが、
これ以上傷つけられぬようにと、
静かに、
しかし強く――
事の行く末を見守り続けるのだった。
最後までお読みいただきほんとうにありがとうございました(*´∀`*)




