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【実は狐の眷属です!真白と紡の神社日誌】眷属と主神様が織りなす物語  作者: 稲荷寿司
【実は狐の眷属です真白と紡の神社日誌】        ―神無月/合同任務―【偵察編】

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雨上がりの境内  ― 次に動くための話し合い ―

今回もお読みいただき、ありがとうございます。

(*´∀`)





大荒れの天気が、ようやく落ち着いたころ――


境内には、雨に洗われた土の匂いが残り、

折れた小枝が、あちこちに散らばっていた。


遠くで、雫が葉を打つ音だけが、

静かに、境内に響いている。



古参眷属である火の童子かのこどうじえにしは、

張りつめていた胸をなで下ろすと同時に、

どっと押し寄せるような激しい疲労感に襲われていた。


長きにわたり境内を守ってきた二人にとっても、

今回の騒動は、

想像以上に消耗の激しいものだったのだ。



そんな二人の心身の疲れを感じ取った真白は、

そっと琥珀糖を差し出しながら、

紡に目を向けた。


「紡。お茶を入れてきてくれますか」


「はい!」



澪斗が火の童子と縁に向かって、

先ほどの取り乱しについて深く頭を下げている間に、


「……すみませんでした」


「もうえぇよ」


火の童子の一言に、

縁が静かに頷いた。



その間に、

紡は人数分のお茶を手早く用意し、

再びその場へと戻ってきた。


湯呑みが一つ、また一つと配られ、

その場に、ようやく落ち着いた空気が戻る。



こうしてようやく、

今後についての落ち着いた話し合いが、

再開された。



澪斗

「龍神神社が代々守護してきたこの土地で、

 今年に入って、

 初めて悪鬼の気配が現れ始めたのですが……」


一度、言葉を切り、

澪斗は静かに息を整える。


「ただ……

 土地に根付いたものではないと、

 静音様も主神様も判断されていました」


「被害が目立っていなかったこともあり、

 しばらくは様子を見る判断をしましたが……

 まさか、他の神社にまで

 影響が及んでいたとは……」


澪斗は、わずかに唇を噛みしめる。


「……認識が甘かったです。

 申し訳ありません」



真白

「澪斗さん、それは違います」


真白は澪斗の方へと視線を向け、

わずかに微笑むと、

ゆっくりと首を横に振った。


その表情には、責める色はなく、

どこか穏やかな光が宿っている。


「昔と違い、今は人々の移動手段も増え、

 行動範囲も、格段に広がっています」


火の童子と縁、そして澪斗へと、

順に視線を向けながら、

静かに言葉を重ねる。


「そう考えれば、

 この段階で異変に気づけたのは、

 むしろ、早かった方ではないでしょうか」



大和

「僕も、その通りだと思います」


大和は小さく頷き、

真白の言葉を受け取るように続けた。


「移動が便利になった分、

 災いも、思わぬ形で

 広がる時代ですから」



火の童子

「ほんまやなぁ」


火の童子は、どこか懐かしむように

視線を宙へ向けた。


「あたいらが若い眷属やった頃は、

 車や電車なんぞ、

 まだなかった時代や」


「空を飛ぶ飛行機を初めて見た時は、

 えらい感心したもんやで。

 人の子の可能性っちゅうもんにな」


小さく笑いながらも、

その声には、

長い時を見守ってきた重みが滲んでいた。



「まったくだね」


縁は、ゆっくりと目を閉じ、

遠い記憶をなぞるように続ける。


「僕は、電車が走り出した時が忘れられないよ」


「あの頃の人の子はさ、

 努力を惜しまず、

 諦めない純粋な心を持つ者が多かった」



真白

「暗い時代も、確かにありましたが……」


真白は、静かに頷きながら言葉を継いだ。


「それでも、人々は希望を捨てず、

 懸命に生きていました」


「あの頃の魂は、

 必死な光が、

 焼け跡のあちらこちらで瞬いていましたね」



優羽

「あの焼け野原になってしまった光景は……

 私も、忘れられません……」


優羽は、胸の前でそっと手を握りしめ、

遠くを見るように視線を落とした。


「あんなに哀しい景色は……

 もう二度と、見たくないですね……」



澪斗

「そうだね……」


澪斗は短く息を吐き、

言葉を選ぶように、ゆっくりと続けた。


「焦土と化した土地の土地神様や、

 宿主を失った精霊たち……」


「恨みを媒体に増幅した悪鬼の討伐も相次いで、

 主神様たちも僕たち眷属も、

 本当に大忙しだった」


一瞬、言葉が途切れる。


澪斗は視線を伏せ、

唇を噛みしめるようにしてから、

かすかに息を吸った。


「幼子の亡骸が、

 そこかしこに倒れていたあの光景は……」


声が、わずかに震えた。


「……今でも、忘れられないよ」



火の童子

「あん時はな……」


火の童子は、

どこか空虚な声音で呟いた。


「各地の神社や天界からも、

 総出で招集されたからな……」


「もう二度と……

 あんなことが起きんように……」


その声は、

いつもの豪胆さが身を潜め、

祈るように、静かに続いた。


「……祈るしか, あらへんな」



真白

「……それでも」


真白は一拍置き,

皆の言葉を胸に受け止めるように,

静かに口を開いた。


「そこから, わずか数十年で立ち直った

 人間の可能性は,

 やはり, 素晴らしいものです」


「眷属の身ながら……

 胸が, 熱くなりました」



「本当にね」


縁は小さく息を吐き,

皆を見渡すように視線を巡らせた。


「人の子は, やっぱり強い」


「だからこそ,

 今回の件は慎重に,

 しっかり精査しなければならないね」



その言葉を受け,

真白は静かに視線を落とした。


しばし考え込むように沈黙し,

やがて, 覚悟を固めたように口を開く。


真白

「なるべく早急に,

 調べる必要がありますね……」


「そうなると,

 どうしても人手が足りなくなります」


真白は顔を上げ,

縁と火の童子の方を見て続けた。


「主神様にお願いして,

 豊穣神社も留守居役を何体か,

 手配していただかないと……」



澪斗

「うちの神社も, 同じくだね」


澪斗は頷きながら,

状況を整理するように言葉を添える。


「火の童子様のところは,

 大和君の同族が多いから,

 普段から人手には

 困らないんじゃないかな?」



大和

「はい」


大和は一歩前に出て,

はっきりと頷いた。


「うちは人手がありますので」


「火の童子様はもちろん,

 皆さんのお力になれるよう,

 いつでも協力させていただきます」


境内を包む夕刻の光が,

静かにその色を変えながら,

時の流れを告げていた。




次回もお付き合いいただけましたら幸いです。

(*´∀`*)

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