――穢れの兆し、神無月を前に
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
(*´∀`*)
ここから新しい章の始まりとなります!
最後までお付き合いいただければ嬉しです。
豊穣神社の境内は、昼を過ぎたやわらかな光に包まれていた。
私たちだけでは、
もっと厄介な事態になっていたと思います」
そう言ってから、縁にも視線を向ける。
「縁様にも、迅速な支援をいただき、
ありがとうございました」
縁は穏やかに首を振った。
「お礼を言うのはこちらの方ですよ。
ユッキーちゃんが、
無事に帰るべき場所へ帰れたようで安心しました」
そう言ってから、ふっと目を細める。
「それに――
二人とも、よく頑張りましたね」
火の童子は腕を組み、にっと笑う。
「ほんま、よぉ頑張ったわ!」
大和も静かに頷いた。
「ええ。優羽さんも、大きな怪我にならなくて本当によかった」
その言葉に、優羽は首を横に振り、静かに答えた。
「……皆さんのおかげです」
縁は一度、場を見渡してから、静かに切り出した。
「それでは、神殿の方で話しましょうか?」
―――
神殿に足を踏み入れた瞬間、外とは違う静けさが満ちていた。
ひんやりとした空気が肌を撫で、
言葉ひとつにも響きが残る。
――もっとも、その静寂を破っていたのは、
熱のこもった声だった。
「……というわけで、推しは尊いんです!」
大和はまだ、澪斗に「推し」について熱く語っていた。
澪斗
「なるほどね…推しが尊い…なんていい言葉だ…
数百年生きてるけど、初めての知識だよ、ありがとう大和君。」
火の童子
「なんや!
大和えぇ加減に推しの話は終わりや!
真白と優羽が帰ってきたで!」
大和
「噂をすれば僕の推しが…っ
じゃなくて!
お帰りなさい優羽さん!」
優羽
「ただいまー大和君、推しってなに?」
火の童子
「辞めてや優羽!
後でにしてや!
今はあの悪鬼の話や!」
大和
「火の童子、かっかするのはよくないですよ…」
火の童子
「誰がかっかさせとんねん!」
縁
「まぁまぁ火の童子、落ち着いて」
その穏やかな声に、神殿の空気がわずかに静まる。
先ほどまでの軽いやり取りが収まり、
自然と話題が切り替わった。
縁
「ところで……」
一拍置いてから、火の童子と大和を見やる。
「火の童子、大和君。
あの商業施設を以前から気にしていた、という話でしたね?」
その言葉に、澪斗は小さく顎に手を当てる。
澪斗
「僕も、そこが気になりました。
あの施設は龍神神社の守護地ですから、
本来であれば、僕や静音様が気になっていたのは分かりますけど」
そう言ってから、澪斗は火の童子へと視線を移した。
火の童子はゆっくりと頷き、
澪斗の言葉を待つように、視線を合わせた。
「ですが……
焔神社は、あの場所から距離がありますよね?」
「豊穣神社も同じく、
直接感知するのは難しいはずです」
「……それでも、異変に気づけた。
そこが、少し不思議で」
真白も小さく頷いた。
「今回の件では、僕も不思議に思っています」
少し言葉を選ぶように、視線を落とす。
「正直に言えば……
ユッキーさんの件がなければ、
僕たちは今も気づけていなかったでしょう」
火の童子は顎に手を当て、
真白たちを見渡しながら話し始めた。
「それはな――
焔神社の主神様が、炎神様やからや」
その言葉に、場の空気がわずかに引き締まる。
「実はな、
もうすぐ神無月の合同会議があるやろ?
その前に、少し様子を確かめてから思っとったんやけどな」
言い終えてから、火の童子はちらりと大和に視線を向けた。
その目には、どこか含みがあった。
大和もその意図を察したように、静かに頷いた。
そして、皆の視線を受け止めるように口を開く。
「少し前まで、あの施設では
火事除けや安全祈願で参拝や祈祷をされる方が、
一定数いらっしゃいました」
「ですが……
ここ最近、その方々の様子が、
どこかおかしくなってきたんです」
火の童子は小さく頷く。
「うちの焔神社はな、
火の用心とか家内安全のご祈祷のときは、
絵馬を書くしきたりがあってな。
その絵馬と一緒に、
皆がお神酒を奉納してくれるねん」
「最近になってその絵馬の文字から、
ほんの少し……
穢れの気を感じるようになってん」
縁は、目を伏せる。
「……なるほど」
それは、誰にも気づかれぬほど小さな違和感。
だが確かに、
穢れは人の心に――
暗い影を落とし始めていた。
やがて訪れる神無月。
神々と眷属が集う合同会合ののち、
その違和感は“異変”として姿を現すことになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
続きもお付き合いいただけたら幸いです。
次回もよろしくお願いします。(*´∀`*)




