【小さな守り星再び!】エピローグ
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
(*´∀`*)
最後までお付き合いいただけましたら、幸いです。
ユッキーが笑成の元へ帰った
その、少しあと。
気を失っていた笑成の指先が、
かすかに、ぴくりと動いた。
「……ん……」
閉じられていた瞼が、
ゆっくりと震え――
やがて、薄く開いた。
「……あれ……?」
ぼんやりとした視線が、
空を映し、
木々の揺れる影を追う。
それから、ぼやけた視界は
二つの影を映し出す。
「笑成さん!」
「あれ…?優羽さん…私…」
笑成は、
少しだけ首を動かし、
不思議そうに瞬きをした。
真白は、笑成を落ち着かせるように、
やさしく声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「あの私……家に帰る途中だったはずなのに…」
「送っていく途中で倒れてしまって。
ですから、この公園で、
目が覚めるまで休ませていました」
「そうだったんですね、すいません!」
「いえいえ!
やっぱり体調が悪かったんでしょう」
笑成はなにか引っかかるような
感覚になったが、
(体調悪かったからかな…
でも今はとても身体が軽い。
それだけじゃなくて――
心まで、
どこか澄んだような気がした。)
真白は、笑成を気遣うように
声を掛ける。
「笑成さん、歩けそうですか?」
笑成
「あっ、はい!
大丈夫です!
なんだスッキリして、
逆に元気なくらいですね!」
真白と優羽は、
元気そうな笑成の姿に
ほっとした表情を浮かべた。
それから三人は、
笑成の自宅に向かって
歩き出した。
笑成の自宅に着いた真白と優羽は、
笑成に
天然石のブレスレットは
しばらくは自宅では
つけないように告げた。
笑成は不思議そうな顔で
真白たちの話を聞いていたが、
なんとなく自分でも
そうしたほうがいい気がした。
「わかりました!
あのブレスレットは
家では着けないようにします!
むしろ家に持ってこないようにします!」
「真白さんと優羽さんには
ほんとにお世話になりました。
今度お礼に伺います!」
真白は、やんわりと首を振った。
「本当に、お気になさらないでください。
私たちは、ただ……」
「たまたま居合わせただけ、ですから」
優羽も、
真白の言葉を引き取るように
続ける。
「そうそう!
だからお礼とか、
ほんとに大丈夫ですから!」
笑成は、
少し考え込むように
視線を落とし――
それから、
真白と優羽に
視線を向けると、
「でも……それじゃ、
私の気が済みません!」
真白と優羽が、
同時に目を瞬かせる。
「こんなにお世話になったのに、
お礼もしないなんて!」
けれど、笑成は
引かなかった。
「それでも、です!」
笑成の目には、
真剣な光が宿っていた。
「理由はうまく言えないんですけど……
ちゃんと、
お礼をしないといけない気がして」
一瞬、
真白と優羽は
顔を見合わせる。
――ユッキーさんの影響、でしょうか。
真白がそんなことを
思っていると、
優羽が小さく息をついて、
ふっと表情を緩めた。
「……わかりました!」
真白が、
わずかに目を見開く。
「優羽さん?」
「じゃあ、こうしましょう。
お礼じゃなくて――」
にこっと笑って、
優羽は言った。
「今度、
私たちの神社に、
遊びに来てください!」
「参拝だけでいいです。
それなら、
気を遣わなくて済みますし」
笑成は一瞬きょとんとし、
それから、
ぱっと表情を明るくした。
「はい……それなら!
参拝した後に、
お抹茶をいただきに行きます!」
昼下がりの穏やかな日差しのなか、
三人のあたたかなやりとりを、
心地よい風が
そっと撫でていった。
−−−
その頃、
真白たちの豊穣神社では――
縁
「この度は
急な連絡になってしまったのに
対応していただき、
ありがとうございました。」
大和
「いえいえ。
あそこの商業施設は
少し前から、
焔神社でも
気になっていましたから」
火の童子
「その通りや。
一度様子見に
行ってみよかー、
言ってた時やったから、
丁度よかったわ!」
縁は穏やかに頷き、
集まった面々の顔を
ゆっくりと見渡した。
縁
「澪斗君も、
優羽さんのこと、
ありがとうね」
澪斗
「いえ。
僕も静音様に
様子を見てこいって
言われて行っただけなので、
気にしないでください」
「それに思いがけず
真白様にも
お会いできたので、
役得です!」
縁
「ふふっ。
澪斗君は
相変わらずですね」
「それに、
ユッキーちゃんの
ご主人の件も
ありがとうございました」
澪斗
「皆さんの話を聞いた上で、
少し
笑成さんの記憶を
調整しただけです」
「安心してください。
夢だと思うくらいに
してありますから」
火の童子
「澪斗や。
あたいな、
気になったんやけど――
なんで全部、
消さへんのかなーって」
大和
「はい。
僕も気になりました。
なにか理由が
あるのですか?」
澪斗は少し考えるように
視線を落とし、
指先で髪をいじりながら、
静かに口を開いた。
澪斗
「僕の能力は
治癒と記憶の制限なんですけど、
“消す”というよりは、
記憶を封印する術に
近いんです」
「だけど、人の子って、
意外と“心”で
覚えていることも
多いんですよ」
「完全に
忘れさせたとしても、
匂いや、
音や、
感情が
引き金になって、
思い出してしまうことがある」
縁
「なるほど……
それで、
夢だったかもしれない、
という形に」
澪斗
「はい。
その方が、
夢か現実か
曖昧になって」
「人の子の言葉で言うと……
“デジャブ”ってやつになって、
深く気にしなくなるんです」
火の童子
「へぇー!
そないな理由が
あったとはなぁ。
感心やわ!」
大和
「本当ですね。
……ただの
真白様好き
じゃなかったんですね」
澪斗
「ちょっと!
大和君まで
からかわないで
くれる?」
大和
「違いますよ。
澪斗様。
僕も“推し”を
尊く思う気持ちは
分かりますから!」
澪斗
「……え?
推し?
なにそれ?」
大和
「澪斗様……
推しというのはですね――」
火の童子
「はじまってもうた……
こうなったら
長いねん、
大和は……」
縁
「それでは、
火の童子。
お茶でも淹れながら、
真白君たちの帰りを
待ちましょうか」
火の童子
「おっ!
相変わらず
気ぃ効くやん」
「あたいは
縁推しやからな!」
湯気の立つ湯のみが並び、
賑やかな声が、
いつもの境内に
溶け込んでいった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回のお話でユッキーのお話は終わりとなります!
エピローグまでお付き合いいたきありがとうございました!
またどこかのお話でユッキーに会えればと思います!
次回もお付き合いいただけましたら幸いです。
よろしければ、物語を追っていただけるようブックマークしていただけたら嬉しいですε-(´∀`*)ホッ




