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【実は狐の眷属です!真白と紡ぎの神社日誌】  作者: 稲荷寿司
【小さな守り星再び!】

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眷属たちが結んだ縁

今回もお読みいただき、ありがとうございます。

読んでいただけてとても嬉しいです。(*´∀`*)


軽い笑いが落ち着くと、

公園には、ふっと静けさが戻った。


遠くで車の音がかすかに響き、

木々の葉が風に揺れる音が、

その隙間をやさしく埋めていく。


ユッキーは、

その光の端で、

少しだけ距離を置くように浮かんでいた。


皆の輪の中にいるのに、

どこか一歩外側にいるような感覚。


それが、

少し前までの自分の居場所だったことを、

ユッキーは思い出す。


――人でもなく、

――神社の眷属でもなく。


ただ、

「守られる側」として、

誰かの内に在るだけの存在だった。


それでも今は、

こうして声をかけられ、

名前を呼ばれ、

笑顔を向けられている。


それが、

胸の奥をじんわりと温めていた。


(……不思議ね)


ほんの少し前まで、

怖くて、

心細くて、

必死に助けを求めていたのに。


今は、

この穏やかな時間が、

終わってしまうことの方が、

少しだけ――

胸の奥が、

寂しい。


ユッキーは、

無意識に視線を巡らせた。


優羽のそばに寄り添う大和。

相変わらず言い合いをしている澪斗と優羽。

それを面白そうに眺める火の童子。

そして、

皆を静かに見守る真白。


(……あたし、

 こんなにすごい方達に

 助けていただいたのね……)


その輪の中に、

自分も混ざっていいのだろうか。


そんな小さな不安が、

胸の奥で揺れた、そのとき――


「……相変わらず、口が減らないわね」


「それ、そっくりそのままお返しします」



ユッキー

(優羽ちゃんは、

 澪斗様とは

 仲良くないのかしら…?)



ユッキーがそんな事を考えていると、


真白が

穏やかに

ユッキーに話しかけた。


「ユッキーさん。悪鬼も祓われましたし、

 もう……笑成さんの中に戻っても大丈夫ですよ

 笑成さんが目を覚ます前に戻ってしまった方が

 いいでしょう」


ユッキーの光が、小さく揺れた。


(……でも……また、弾き出されたり

 しないかしら……)


その不安を察したように、

真白は

やさしく続ける。


「大丈夫ですよ、

 ユッキーさん」


「もし、

 また弾き出されても……その時はまた、

 僕たちの元に

 助けを求めに来てください」


「僕たちは、何度でもあなたを助けます」


「そうですよ!」


優羽も、

にこっと笑う。


「ユッキーちゃん。だから、心配しないでくだい!」


火の童子が、

胸を張る。


「なんやなんや!あたいかて、ユッキーのことは

 気に入ったさかいな!」


「いつでも連絡しぃ!なぁ、

 大和!」


「ええ、

 もちろんです」


大和は

即答した。


「優羽さんがまた怪我をするのは、嫌ですから」


「僕だって!」


澪斗も、

勢いよく言う。


「連絡いただければ、すぐ行きますよ!

 ユッキーさんとは……通じ合うものを

 感じましたし!」


「……だそうですよ」


真白が、

穏やかに微笑む。


ユッキーの光が、

小さく、

震えた。


(皆さん……ほんとに、ありがとう……)


(とっても、嬉しい……でも……これで、もう会えな      

 くなるかもしれないと思うと……)


その想いが、胸いっぱいに溢れた、


その瞬間――


ユッキーの光が、ふわりと強く輝き始めた。


「……?」


光が脈打つように揺れた。


「おや?」


淡い光は、次第に確かな輝きへと変わっていく。


火の童子が、

目を見開いた。


「こりゃ驚いた……!

 わてら眷属との絆が生まれて、

 霊格が上がりよったで!」


澪斗も、

息をのむ。


「……本当ですね」


「これなら、ユッキーさんは笑成さんの中から出も、

 消滅せずに自由に、外へ出られますよ」


それは、守られるだけだった存在が、

縁に導かれるまま、自分の意志で


この世界を渡り歩けるようになった、

ということだった。


その言葉に、

ユッキーの光が、

驚いたように揺れた。


(……え……?)


(それなら……また、みんなに会いに行ける……?)


「ええ。

 あなたが望むなら」


真白は、

やさしく微笑んだ。


ユッキーの光が、

ふわりと弧を描くように揺れた。


感謝の想いが、

やさしく胸を満たしていった。


言葉にすれば、

きっと足りなくて、

うまく伝えられないから。


その想いを、

精一杯の光に込めて――


ユッキーは、

一人ひとりへと、

小さく、丁寧に輝きを向けた。


(優羽ちゃん……

 守ろうとしてくれて、ありがとう)


(大和さん、火の童子様……

 笑成を助けてくれて、ありがとう……)


(澪斗様……

 笑成を治してくれて……ありがとう……)


そして――


(真白様……手を差し伸べてくれて……

 本当に、ありがとう)


最後に、

にこっと笑うように、

光がやさしく弾む。


(……さよならじゃ、ないわ)


胸の奥に芽生えた感情は、

別れの寂しさよりも、

確かな温もりを帯びていた。


(この縁がある限り、

 きっと、また会いに行けるのよね!)


そう思えたことが、

何よりも嬉しかった。


次の瞬間、ユッキーの光は


細く、やさしく伸びて――


眠る笑成の胸元へと、

静かに、溶け込んでいった。


小さな公園を渡る風が、

木々の葉をやさしく揺らす。


昼の光は

変わらずそこにあり、

けれど、

その下に流れる空気だけが――

確かに、

少し変わっていた。


各神社の眷属たちと、

新しく結ばれた縁が、

静かに満ちていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


続きもお付き合いいただけたら幸いです。

次回もよろしくお願いします。(*´ω`*)


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