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【実は狐の眷属です!真白と紡ぎの神社日誌】  作者: 稲荷寿司
【小さな守り星再び!】

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49/50

祓いの後、和らぐ空気

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

(*´∀`*)


公園には、

やわらかな昼の光が差し込んでいた。


木々の葉が風に揺れ、

先ほどまでの緊張が、

少しずつほどけていく。


その空気の中で、

澪斗みなとが、感心したように言った。


「へぇー、それはすごいですね。

 守護精霊になりたてで、真白様の神社まで

 助けを求めに行くなんて。

 ユッキーさん、見る目がありますよ」


その言葉に、

ユッキーの光が、ぱちりと瞬いた。


(えっ……?

 み、見る目……?)


少し戸惑ったように、

それでも小さく揺れる。


(あ、あの……

 真白様には、以前にも

 助けていただいたことがあったから……)


澪斗は、その様子を見て

くすっと笑った。


「ほら。

 そういうところですよ。

 ちゃんと真白様を“頼れる相手”に

 選べてるのが、すごいんです」


そんなやり取りを横目に、

大和は落ち着かない様子で

優羽のそばを離れずにいた。


治療が終わってからも、

何度もその顔を確かめるように

視線を落とし、


静かな呼吸が続いていることを

確かめては、

それでも眉をひそめる。


――目覚めない。


(もっと早く、

 辿り着けていれば……)


その思いが、

胸をよぎる。


やがて、

堪えきれなくなったように、

そっと顔を上げた。


「ところで、澪斗様」


声は落ち着いていたが、

その奥に、

拭いきれない不安が滲んでいた。


「優羽さんは、本当に大丈夫なのですか?

 治癒からしばらく経ちますが……

 まだ、目を覚まさないようですが」


火の童子かのこどうじが、

からかうように笑いながら、


「大和。

 あんたも澪斗と変わらんで、

 優羽大好きなんが、ですぎや!」


「目ぇ覚めるまで、

 そこ動く気ないやろ?」


澪斗は軽く肩をすくめながら、


「そんなに心配しなくても、

 もうそろそろ目が覚めると思いますよ。

 ほら――

 神気が、揺らぎはじめてますし」


そんなやりとりの中、


真白は、

澪斗へ向けて

静かに頭を下げた。


「澪斗さん。

 笑成さんの治療まで……

 本当にありがとうございました」


「そんな!

 真白様のお役に立てるなら、

 僕はなんでもいいんですよ!」


そのやりとりを見ながら、

ユッキーの光が、

そっと揺れた。


(澪斗さん……

 真白様のことが大好きなのね)


(……わたしも、笑成が大好き。

 だから、その気持ち、わかるわ)


「ユッキーさん……」


澪斗が、

ぱっと顔を輝かせる。


「僕たち、

 きっといいお友達になれそうですね!!」


そんな話をしながら、

皆が優羽の様子を

見守っていると――


「……っ!」


優羽が、

はっと目を見開いた。


それから、

勢いよく立ち上り、

周囲を見回す。


「……え?……?」


視界に飛び込んできたのは、

真白、

ユッキー、

そして見覚えのある顔の面々。


「火の童子様!?

 それに……

 大和君!?」


驚きに目を見開いたまま、


優羽の身体がふらりと揺れる。


「優羽さん!」


大和が、

すぐに支えに入った。


「あっありがとう、

 大和君…って

 なんでここに?」


戸惑う優羽の胸元で、


ユッキーの光が、

そっと揺れた。


(優羽ちゃん……

 ごめんね……

 わたしのせいで、

 痛い思いさせちゃって……)


真白が、

静かに口を開く。


「悪鬼は、

 火の童子様と

 大和さんが

 完全に祓ってくださいました」


言葉を選ぶように、

ゆっくりと続ける。


「優羽さんの怪我も、

 澪斗さんに

 治療していただきました」


「えっ!?

 澪斗がですか?」


優羽は

驚いたように声を上げ、

思わず

自分の脚へ視線を落とす。


気を失う前に感じた痛みは――

どこにもなかった。


「……ほんとだ……」


そのときだった。


「僕は、

 真白様にお願いされたから

 治しただけですからね」


澪斗が、

腕を組んだまま、

すんとした顔で言い放つ。


火の童子が、

優羽を覗き込む。


「優羽、

 具合は大丈夫かい?

 身体の頑丈さが取り柄みたいな子ぉやのに、

 珍しいなぁ」


「火の童子様……

 それに大和君も、

 ありがとうございます」


優羽は

素直に頭を下げ、

少し考えるように言った。


「油断したと言われれば、

 そうなんですけど……

 最初、

 悪鬼の気配が

 ほとんどなかったんですよね……

 って、

 笑成さんは大丈夫ですか?!」


真白は、

落ち着いた声で答えた。


「笑成さんは無事です。

 今は気を失っているだけで、

 怪我も軽いものでした。


 笑成さんの治療も、

 澪斗さんに

 していただきました」


「火の童子様、

 悪鬼の気配の件については」


真白が

静かに区切る。


「豊穣神社に戻ってから

 お話ししましょう。

 そろそろ……

 ユッキーさんの主が

 目を覚ましそうですし」


火の童子が、

うんうんと頷いた。


「その方がええな。

 大和も、

 それでえぇやろ?」


「はい」


大和は

穏やかに答える。


「優羽さんも心配ですし、

 僕が豊穣神社までご一緒いたしますね」


「ありがとう、

 大和君」


そのやり取りを

横で聞いていた澪斗が、

むっとした顔で

口を挟む。


「僕も、

 君の怪我を

 治したんですけど……」


優羽は

一瞬考え、

すん、とした顔で言った。


「澪斗。

 真白様への点数稼ぎとはいえ……

 治してくれて、

 ありがとう」


「うわぁー!

 嫌味きついー!」


火の童子が、

けらけらと笑う。


「澪斗と優羽は、

 相変わらずやねぇ」


大和も、

苦笑いしながら頷いた。


「本当に……」


一瞬、

張りつめていた空気がほどけ、

その場に、

軽い笑いが広がった。


「何がですか、

 火の童子様」


「ええ、

 何がですか?」


優羽と澪斗が、

同時に首を傾げる。


火の童子は、

にやりと笑いながら、


「意外と、

 気ぃ合うと思うでぇ〜」


優羽・澪斗

「辞めてくださいよ…」


思わず重なった二人の声に、

その場が、くすりと和らぐ。


小さな公園には、

昼の光と穏やかな空気が

流れていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


続きもお付き合いいただけたら幸いです。

次回もよろしくお願いします。(*´∀`*)


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