青の雨が止むころ
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、激しい戦いのあとに訪れる
小さな癒しと、出会いのひとときを描きました。
少し肩の力を抜いて、
流れる空気を感じていただけたら嬉しいです。(*´∀`)
「真白様!!」
やって来た青年――
澪斗は、真白の姿に気づくなり、
勢いよく声を上げた。
「やっぱり祓いの神気は真白様だったんですね!!
あぁー!もっと早くたどり着ければ、
真白様の勇姿が見られたのにぃー!」
その様子に、
火の童子が肩を揺らして笑う。
「相変わらず、真白大好きな小僧やねぇ。
なぁ真白、鬱陶しいやろ?」
「ちょっと火の童子さま!
やめてくださいよ!」
澪斗はむっとしたように声を張り上げる。
「真白様は、あなたと違って
お優しい方なんですから!」
「まぁまぁ、火の童子」
大和が、やんわりと間に入った。
「澪斗様。
なぜこちらに?」
澪斗は、いつもの調子で答える。
「そりゃあ、この地域は
我が龍神神社の土地ですからね!
瘴気の強い気配がすれば、
確認に来るのは当然ですよー!」
そこまで一気に言ってから――
澪斗は、はっとしたように視線を落とした。
「……って!
優羽さんボロボロじゃないですか!!」
慌てたように駆け寄り、
優羽の状態を確認する。
「これはまずいですよ!
先に治療しないと!」
真白は一歩前に出て、澪斗へ向けて静かに頭を下げた。
「澪斗さん。
お願いしてもよろしいでしょうか」
「真白様のおねがい…っ!」
澪斗は、ぱっと顔を輝かせる。
「もちろんですよ!!
むしろ任せてください!!
すぐに治しますから!!」
そう言うと、澪斗はもう優羽の方へ視線を向けていた。
それから、優羽の傍へ静かに膝をつき、
そっと手をかざした。
地面に、五芒星陣が描かれる。
次の瞬間――
その陣の上に、ぽつり、と雫が落ちた。
静寂を破るように。
やがて、
やわらかな雨が降り始める。
「……雨の癒しを」
澪斗の声が、静かに響く。
雨が、淡い青の光を帯びて
優羽の身体に降り注いだ瞬間――
折れていた脚も、
静かに、元の形へと戻っていく。
真白は、その光景を静かに見守っていた。
雨が止むころには、
優羽の呼吸は、穏やかに整っていた。
「……よし」
澪斗が、小さく息を吐く。
「これで大丈夫です。
骨も、傷も――ちゃんと治りました。」
澪斗の言葉に、
その場の空気が、ほっと緩む。
その様子を見て、
ユッキーの光が、ふるりと震えた。
(……よかった……)
「ん?」
澪斗は、そこでようやく
真白の胸元に寄り添う小さな光に気づいた。
「……ところで、真白様。
この小さい方は、何ですか?」
不思議そうに首をかしげる。
「今さらですけど……
もしかして、使いですか?」
「いえ」
真白は、やんわりと首を振った。
「あちらで倒れている笑成さんの
守護精霊のユッキーさんです」
そう言って、そっと光へ視線を向ける。
「少し事情があって……
今は、僕の中にいてもらっています」
その言葉を聞いた瞬間――
(守護精霊……
しかも、真白様の中……!?)
澪斗は、言葉を失ったまま――
ただ、じっとユッキーの光を見つめていた。
「…………」
沈黙が、ほんの一拍、落ちる。
その視線を受けて、
ユッキーの光が、びくっと小さく跳ねた。
(……えっ?
な、なに……?)
(も、もしかして……
怒ってる……?)
(それとも……
変だった……?)
理由が分からず、
小さく慌てた気配が揺れる。
(……えっと……えっと……)
ユッキーの光が、
おずおずと前に出た。
(は、はじめまして……!
ユッキー、です……)
(あの……
笑成の、守護精霊をしています……)
遠慮がちに、
それでも一生懸命に名乗る。
「……あ」
澪斗は、はっとして我に返った。
「い、いえ!違います!
怒ってるとかじゃなくて……!」
慌てて手を振る。
「えっと……
僕は澪斗です。
龍神神社に仕えてます」
「よろしくお願いします、ユッキーさん!」
その様子を見て、
火の童子が、くすっと笑った。
「なんや澪斗。
顔に全部出とるで。
真白に寄り添ってもらってるユッキー見て、
羨ましくてたまらんのやろ?」
大和も、穏やかに目を細める。
「……微笑ましいですね」
ユッキーの光が、
少しだけ――ほっとしたように揺れた。
(……よ、よかった……
怒ってたわけじゃなかったのね……
よろしく、お願いします……)
小さな公園には、
戦いの後とは思えないほどの、
やさしい空気が流れていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
守る者、支える者、そして新たに繋がる縁――
それぞれの想いが、静かに重なる回になったと思います。
また次のお話で、
真白たちを見守っていただけたら幸いです。(*´ω`*)




