神の眷属その本領
皆さま、本日もお読みいただき本当にありがとうございます。
少しでも面白く読んでいただけたら幸いです!
(*´∀`*)
結界が砕け散った。
その反動で、
真白の身体が吹き飛ばされる。
「真白様!!」
気づいた時には、
笑成が真白の胸ぐらを掴んでいた。
黒い影が、
ユッキーを引きずり出そうとする。
だが――
その影を、
真白の手が掴み取った。
「……その程度ですか」
真白の声は、静かだった。
けれど、その奥に滲んだものは、
紛れもない――怒りだった。
次の瞬間、
真白の身体から、抑え込まれていたかのような
強烈な白光が溢れ出す。
白光が走った瞬間、
空気が張り詰め、世界が一拍、静止した。
――直後。
闇が、弾き飛ばされた。
黒い影は悲鳴のように歪み、
触れた箇所から、音もなく崩れ落ちていく。
離れようとしたその足を、
足元に浮かび上がった五芒星の陣が、絡め取る。
逃げ場を失った闇へ、
真白は静かに歩み寄った。
そして――
一気に、光を解き放つ。
強力な穢れを浄化する力。
――逃げられない。
そう悟った瞬間、
闇は初めて、“恐怖”を知った。
白光に灼かれ、
どんどん飛散していく黒い影。
その中で――
それは、最後の悪あがきを選んだ。
「……いだい……っ
やめて……苦しい……」
掠れた声。
それは、確かに――笑成のものだった。
痛みに喘ぐような叫びが、
真白の耳を打つ。
「……っ!」
一瞬、
真白の意識が、揺らぐ。
その刹那。
黒い影は、音もなく形を変え、
距離を取るように後退した。
「……チッ……
ただの人間じゃないとは思っていたが……
その祓いの力……狐か!」
黒い影が、すっと距離を取る。
「真白様!!」
「大丈夫です」
その一言に、
ユッキーの光が、ほっとしたように揺れた。
(……騙されましたか。
随分と、狡猾な手を使う……許せませんね)
真白は、静かにその感情を押し殺した。
今、優先すべきものは――
倒れた優羽だった。
(優羽さんの状態を……
一刻も早く、確かめなければ)
五芒星陣を抜けられた。
――ならば。
今、できることはひとつだけ。
(隙を作り、
優羽さんを結界で守り、
浄化の光で祓う)
そのためには――
(笑成さん……
あなたに、戻ってきてもらわなければ)
ユッキーの声が、
魂そのものを震わせた。
「笑成!!!もう辞めなさい!
あたしよ!!
ユッキーよ!!」
小さな光が、
必死に、必死に叫ぶ。
「笑顔で、成し遂げる人になるって……
あなた、あたしに言ったじゃない!!」
「あなたのお母さんとお父さんが……
そう願って付けてくれた名前だから――」
「名前の通りの人になりたいって、笑って……
そう言ってくれたじゃない!!」
「しっかりしなさいよ、笑成!!」
ユッキーの声が、
魂の奥まで、届いた。
その瞬間――
笑成の動きが、
ぴたりと止まった。
荒れていた呼吸が、止まった。
「……ユッキー……」
かすれた声。
今度は――確かに、笑成の“意志”が宿った声だった。
「笑成!!」
――戻った。
「……ごめんね、ユッキー……
わたし……弱くて……
もう……抑えきれない……」
「だから……お願い……
逃げて……」
「笑成!!」
――その刹那。
笑成の内側で、
黒い気配が、確かに押し留められた。
ほんの一瞬。
ほんの、刹那の抵抗。
だが――
その一瞬は、真白が優羽の元へ向かうには十分だった。
「真白様……今です!
優羽ちゃんの所へ!」
真白はすぐに、
倒れた優羽のもとへと駆け出した。
しかし、次の瞬間――
再び、黒い気配が笑成を覆う。
「優羽さん、大丈夫ですか?!」
「真白……様……
申し訳、ございません……
油断、しました……」
その声を聞いた瞬間、
真白の胸に、安堵が広がった。
――生きている。
だが、次の瞬間。
視界に入った優羽の姿に、
その思いは、すぐに掻き消えた。
……重傷だった。
次の瞬間――
再び悪鬼に主導権を奪われた笑成が、
真白のもとへと迫る。
拳が、結界に叩きつけられた。
「よこせ……!
その小さな精霊を、よこせぇ!!」
「くっ……
さっきより勢いを増してる……
これじゃ、結界を張り続けるしか……」
その中で――
ユッキーの光が、小さく揺れた。
(……わたしが、
真白様の中にいるせいで……)
結界の向こうで、
必死に抗う真白と、倒れた優羽の姿が脳裏に浮かぶ。
(真白様……
優羽ちゃん……)
(守ってくれて……
ありがとう……)
その想いが、
ユッキーの胸を静かに満たしていく。
(……わたしも、
ふたりを……
笑成を、守りたい……)
「ユッキーさん!」
真白の声が、鋭く響いた。
「何をするつもりですか?!」
(……だから……)
(……今度は、
わたしが……)
「ユッキーさん、だめです!!」
真白の声に、
はっきりとした焦りが混じる。
「出て行っては、だめです!!」
――その直後だった。
「――焼き尽くせ!!
(かのこどうじ)火の童子」
凛とした声が、空気を裂いた。
轟音と共に、
青い炎が天を衝く。
「――ぁあああッ!!」
燃え上がる笑成の身体。
「笑成!!!!」
ユッキーの悲鳴が、響いた。
炎の向こうから、
一人の人影が歩み出る。
「……真白様。
ご無事ですか」
真白は、目を見開いた。
「……あなたは……
焔神社の――」
炎が揺らめく中、
新たな局面が、静かに幕を開けていた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
読んでいただけたことが、とても嬉しいです!
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
(。>﹏<。)




