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【実は狐の眷属です!真白と紡ぎの神社日誌】  作者: 稲荷寿司
【小さな守り星再び!】

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37/50

原因を探して

いつもお読みくださり、ほんとうにありがとうございます。お時間のある時に、ゆっくり楽しんでいただけましたら幸いです。(*´∀`*)




真白が静かに問いかける。


「ユッキーさん。ご主人の中にいた時……

 “いつもと違う”と感じたことはありませんでしたか?」


ユッキーははっと顔を上げる。


縁も腕を組みながら頷いた。


「確かに。守護精霊なら主人の内側で見守っていたわけだから、

 何かしら変化を感じていてもおかしくないね。」


紡も会話に加わり、少し首をかしげる。


「普段の穢れは、ユッキーちゃんが祓ってたんですよね?

 祓った翌日は元気だったのに……

 最近は帰ってくる頃にはまた穢れが溜まって、

 元気がなくなってたってことになりますよね?」


真白はその分析にうなずき、ユッキーへ向き直る。


「つまり……“帰宅するまでの日中”に

 原因がある可能性が高い。

 ユッキーさん、何か思い当たることはありませんか?」


ユッキーは小さく首をかしげながら考え込む。


「変わったこと……」


(元気がなくなる前のあの子は……

 朝眠そうに起きて、朝ご飯食べて……

 それから“会社”って所に行って……)


はっ、とユッキーの目が大きく開いた。


「そうよ! “会社”って所よ!!

 あの子、最近そこに行くと胸が苦しくなるって言ってたわ!

 前までは全然そんなことなかったのに……どうしてかしら……?」


紡が心配そうに眉を寄せる。


「会社に行くと……胸が苦しくなる……?」


縁は静かに目を細めた。


「ふむ……その“胸の苦しさ”が、

 穢れの蓄積と関係している可能性は高いね。」


真白もゆっくり頷く。


「おそらく、ご主人は“会社”で

 何らかの強い負の念……もしくは、穢れを受けているのでしょう。」


ユッキーが不安そうに見上げる。


「じゃ、じゃあ……あの子を苦しめているのは……

 その“会社”って場所……?」


真白は落ち着いた声で答えた。





真白

「可能性は十分にあります。

 あとは──“その正体”を確かめる必要がありますね。」


「ユッキーちゃん、ご主人はだいたい何時ごろ

 会社から帰ってきたかわかりますか?」


ユッキー

「えっと……“空の端っこだけオレンジ色で、

 ほかは夜みたいに青くなってくる頃”かしら。


 あと……“どこかの家から夕ご飯の匂いがして、

 お腹が鳴りそうになる頃”!」


「なるほど。今はもう神無月が近いし、

 その様子だと夕刻の──おそらく17時前後だね。」


真白

「だとすると……今日は確かめに行くにしても、

 すでに時間は過ぎていますね。


 ……そういえばユッキーさん。

 今日は夕刻前にはこちらに来ていましたが、

 今日は会社には行かなかったのですか?」


ユッキー

「今日は行かない日なの!


 あの子、会社に5回行ったら、

 2回はお家にいたり、お友達とお出かけしてたわ!


 今日は“お家の日”の2回目だから、

 明日からまた会社に行く日よ!」


「そっか。ユッキーちゃんのご主人、今日はお休みだったんだね。

 そして明日は……会社に行く予定の日、と。」


ユッキー

「そうなの……なのに、あたし、あの子の体から

 弾き出されちゃって……。

 あの子……大丈夫かしら……。」


真白

「もし穢れの原因が会社にあるのだとしたら……


 守護精霊の守りを失った今、

 明日“いつも通りに会社へ向かえるか”は確かではありませんね。」


「じゃあ……今できることは無いってことですか?」


真白

「ええ。残念ですが、今日は動ける手段がありません。

 ですから──明日から動きましょう。」


「うん、それが一番だと思うよ。

 まずはユッキーちゃんのご主人のご自宅に行って……


 明日、本当に会社へ向かうのかどうか、

 様子を確かめよう。」


真白

「ユッキーさん。すぐに動けず申し訳ありません。

 ですが……明日から、一緒に頑張りましょう。」


「さて──明日から動く方針が決まったところで、

 次は“ユッキーちゃん自身のこと”を考えないとね。」


ユッキー

「えっ……? どういうことですか?」


「ユッキーちゃんは今、守護精霊として

 ご主人と繋がれていない状態だよね。


 その間……外に出ているだけで、

 力を消耗してしまっているんだ。」


ユッキー

「えっ……? あ、あたし……力、減ってるの……?」


真白

「本来、守護精霊というのは

 “守護対象と心が繋がり、魂を共有する存在”です。


 主人を守るのと同じように──

 主人の魂が守護精霊の存在も支えているのです。」


ユッキーはよく分からず、小さく首をかしげる。

横で紡も同じように首を傾けた。


「えっと……それってユッキーちゃんの力の消耗と、

 どう関係があるんです?」


真白

「簡単に言うと……


 ユッキーさんが精霊になれたのは、

 ご主人の深い愛情と、ユッキーさん自身の愛が

 “互いに繋がった”からです。」


「だから守護精霊は、主人の魂の中に居ることで

 存在が安定し、力も満ちるようになっているのです。」


紡ははっと目を見開く。


「じゃあ……ご主人の体から追い出されちゃったユッキーちゃんは……

 存在を維持できなくなるってことですか!?」


ユッキーはびくっと震え、

小さな手を胸の前でぎゅっと握りしめた。


ユッキー

「そ、そんな……あたし……消えちゃうの……?」


縁は慌てて首を横に振る。


「大丈夫。普通なら危なかったけど……


 ユッキーちゃんは運良く、この神社にたどり着けた。」


「ここには神気が満ちているから、力が安定する。

 だから──“ここにいれば”消える心配はないよ。」


縁はそう言ったが、

ユッキーの胸の奥に走った不安は、まだ消えていなかった。





最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

皆さまに読んでいただける事が、毎回とても励みになっております。

次回も心を込めて執筆いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。(。>﹏<。)



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