原因を探して
いつもお読みくださり、ほんとうにありがとうございます。お時間のある時に、ゆっくり楽しんでいただけましたら幸いです。(*´∀`*)
真白が静かに問いかける。
「ユッキーさん。ご主人の中にいた時……
“いつもと違う”と感じたことはありませんでしたか?」
ユッキーははっと顔を上げる。
縁も腕を組みながら頷いた。
「確かに。守護精霊なら主人の内側で見守っていたわけだから、
何かしら変化を感じていてもおかしくないね。」
紡も会話に加わり、少し首をかしげる。
「普段の穢れは、ユッキーちゃんが祓ってたんですよね?
祓った翌日は元気だったのに……
最近は帰ってくる頃にはまた穢れが溜まって、
元気がなくなってたってことになりますよね?」
真白はその分析にうなずき、ユッキーへ向き直る。
「つまり……“帰宅するまでの日中”に
原因がある可能性が高い。
ユッキーさん、何か思い当たることはありませんか?」
ユッキーは小さく首をかしげながら考え込む。
「変わったこと……」
(元気がなくなる前のあの子は……
朝眠そうに起きて、朝ご飯食べて……
それから“会社”って所に行って……)
はっ、とユッキーの目が大きく開いた。
「そうよ! “会社”って所よ!!
あの子、最近そこに行くと胸が苦しくなるって言ってたわ!
前までは全然そんなことなかったのに……どうしてかしら……?」
紡が心配そうに眉を寄せる。
「会社に行くと……胸が苦しくなる……?」
縁は静かに目を細めた。
「ふむ……その“胸の苦しさ”が、
穢れの蓄積と関係している可能性は高いね。」
真白もゆっくり頷く。
「おそらく、ご主人は“会社”で
何らかの強い負の念……もしくは、穢れを受けているのでしょう。」
ユッキーが不安そうに見上げる。
「じゃ、じゃあ……あの子を苦しめているのは……
その“会社”って場所……?」
真白は落ち着いた声で答えた。
真白
「可能性は十分にあります。
あとは──“その正体”を確かめる必要がありますね。」
紡
「ユッキーちゃん、ご主人はだいたい何時ごろ
会社から帰ってきたかわかりますか?」
ユッキー
「えっと……“空の端っこだけオレンジ色で、
ほかは夜みたいに青くなってくる頃”かしら。
あと……“どこかの家から夕ご飯の匂いがして、
お腹が鳴りそうになる頃”!」
縁
「なるほど。今はもう神無月が近いし、
その様子だと夕刻の──おそらく17時前後だね。」
真白
「だとすると……今日は確かめに行くにしても、
すでに時間は過ぎていますね。
……そういえばユッキーさん。
今日は夕刻前にはこちらに来ていましたが、
今日は会社には行かなかったのですか?」
ユッキー
「今日は行かない日なの!
あの子、会社に5回行ったら、
2回はお家にいたり、お友達とお出かけしてたわ!
今日は“お家の日”の2回目だから、
明日からまた会社に行く日よ!」
縁
「そっか。ユッキーちゃんのご主人、今日はお休みだったんだね。
そして明日は……会社に行く予定の日、と。」
ユッキー
「そうなの……なのに、あたし、あの子の体から
弾き出されちゃって……。
あの子……大丈夫かしら……。」
真白
「もし穢れの原因が会社にあるのだとしたら……
守護精霊の守りを失った今、
明日“いつも通りに会社へ向かえるか”は確かではありませんね。」
紡
「じゃあ……今できることは無いってことですか?」
真白
「ええ。残念ですが、今日は動ける手段がありません。
ですから──明日から動きましょう。」
縁
「うん、それが一番だと思うよ。
まずはユッキーちゃんのご主人のご自宅に行って……
明日、本当に会社へ向かうのかどうか、
様子を確かめよう。」
真白
「ユッキーさん。すぐに動けず申し訳ありません。
ですが……明日から、一緒に頑張りましょう。」
縁
「さて──明日から動く方針が決まったところで、
次は“ユッキーちゃん自身のこと”を考えないとね。」
ユッキー
「えっ……? どういうことですか?」
縁
「ユッキーちゃんは今、守護精霊として
ご主人と繋がれていない状態だよね。
その間……外に出ているだけで、
力を消耗してしまっているんだ。」
ユッキー
「えっ……? あ、あたし……力、減ってるの……?」
真白
「本来、守護精霊というのは
“守護対象と心が繋がり、魂を共有する存在”です。
主人を守るのと同じように──
主人の魂が守護精霊の存在も支えているのです。」
ユッキーはよく分からず、小さく首をかしげる。
横で紡も同じように首を傾けた。
紡
「えっと……それってユッキーちゃんの力の消耗と、
どう関係があるんです?」
真白
「簡単に言うと……
ユッキーさんが精霊になれたのは、
ご主人の深い愛情と、ユッキーさん自身の愛が
“互いに繋がった”からです。」
「だから守護精霊は、主人の魂の中に居ることで
存在が安定し、力も満ちるようになっているのです。」
紡ははっと目を見開く。
紡
「じゃあ……ご主人の体から追い出されちゃったユッキーちゃんは……
存在を維持できなくなるってことですか!?」
ユッキーはびくっと震え、
小さな手を胸の前でぎゅっと握りしめた。
ユッキー
「そ、そんな……あたし……消えちゃうの……?」
縁は慌てて首を横に振る。
縁
「大丈夫。普通なら危なかったけど……
ユッキーちゃんは運良く、この神社にたどり着けた。」
「ここには神気が満ちているから、力が安定する。
だから──“ここにいれば”消える心配はないよ。」
縁はそう言ったが、
ユッキーの胸の奥に走った不安は、まだ消えていなかった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
皆さまに読んでいただける事が、毎回とても励みになっております。
次回も心を込めて執筆いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。(。>﹏<。)




