守り星の違和感
今回もお読みいただき、本当にありがとうございます。
皆さまがページを開いてくださるそのひとつひとつが、
私にとって大きな励みになっています。
《小さな守り星》で登場したユッキーが、
ご主人の身に起きた異変に胸を痛め、勇気を振り絞って駆け込んできました。
ユッキーが抱えていた不安、
そして真白・縁・紡ぎの三人が、
小さな精霊の気持ちに寄り添い、そっと支え励ましていく——
そんな場面を描いています。
今回も、ゆっくりと物語をお楽しみいただけたら幸いです。
いつも本当にありがとうございます。(*´∀`*)
ユッキー・真白・縁の三人は、
ユッキーのご主人に何が起きていたのか、
黒いモヤが現れる前のことから順番に聞き取っていた。
ユッキーは胸の前で小さな手をぎゅっと握りしめながら話す。
「──普段のあの子はね、感情豊かで素直な子よ!
怒ったり落ち込んだりすることもあったけど……
そんな時は、あたしが“あなたはよくやってるわよ”って思いを込めると、
次の日にはけろっと元気になってて……いつも穏やかだったの。」
縁は、その言葉のひとつひとつにそっと耳を傾けていた。
「だけど……少し前からずっと、イライラしてるみたいで……。
悲しそうで、何をしてても楽しそうじゃなかったの。
それでも励ませば元気になってくれてたのに……
帰ってくる頃には、また同じ状態に戻っていて。
だから今日も、いつものように励ましてあげようと思ったら──
突然、あの黒いモヤが現れて……」
ユッキーの声が小さくしぼんでいった。
縁はそっとユッキーを見つめ、小さくうなずいた。
「そして、はじき出されてしまったと……なるほど。
ユッキーちゃんは“念じることで浄化するタイプ”の精霊なんだね。」
「そ、そうなんですか!?」
ぱちぱちと瞬くユッキー。
真白はユッキーの不安を和らげるように、やわらかく微笑む。
「ええ。あなたが込めてきた強い想いが、
ご主人の心に溜まっていた“穢れ”をそっと祓い、
ずっと守ってきていたのでしょうね。」
その言葉にユッキーの胸がふるりと揺れた。
(……あたしの想いが……あの子を守ってた……?
……そんな………じゃあいつも苦しそうだったのは……
やっぱり、あの黒いモヤに気付けなかったせい……?)
ユッキーは言葉を失い、小さな手をぎゅっと握る。
気づけば、自分を責める考えに沈み込み、
真白の問いかけにも気づかないほどだった。
「……さん。……ユッキーさん!」
「はっ! ご、ごめんなさい! な、なんでしょうか……?」
真白は心配そうに目を細める。
「大丈夫ですか? ユッキーさん」
「……あたし、あの子を守るために精霊になれたはずなのに……。
黒いモヤが来るまで、気づいてあげられなくて……
それに……あの黒いのに負けちゃうなんて……」
真白が口を開こうとした、その時。
「そんなことないです!!」
元気な声が割り込む。
三人が顔を上げると、
手当てを終えた紡ぎが息を弾ませて戻ってきていた。
「ユッキーちゃんは、ご主人を助けるためにここまで走ってきたじゃないですか!!
それって……すごく勇気がいることなんですよ!!」
真白も優しく微笑む。
「ええ。すぐに僕たちへ知らせに来てくれましたね。
遅くなんてありません。
あなたの行動は、ご主人を救うための“最初の一歩”でした。」
しかし、ユッキーは眉尻を下げ、震える声を漏らす。
「でも……
あたしがあの黒いモヤを消す事が出来てたのなら、
今日ももっと強く想いを込めていれば……
あの子をあの黒いモヤから守れたのかもしれないのに……
あの子……大丈夫かしら……」
ユッキーの瞳に涙がにじむ。
それを見て、縁はそっと首を横に振った。
「いいえ、ユッキーちゃん。精霊の力は本来とても強いものです。
そのあなたでさえ“弾かれた”というのなら……
相手にしていたのは、かなり強い『穢れ』だったのでしょう。」
真白も穏やかに続ける。
「それに……もし無理に祓おうとしていたら、
あなた自身が精霊の身では耐えきれず……
消えてしまっていたかもしれません。」
ユッキーの小さな体がふるりと震えた。
縁は表情をゆるめ、そっと身をかがめる。
「ユッキーちゃんが消えてしまっていたら、
ご主人は穢れに心を奪われ、戻れなくなっていたかもしれないよ。
でもね……」
優しく微笑む。
「ユッキーちゃんがずっと寄り添ってきたから、
今こうして“助けられる道”が残っているんだ。」
真白はそっとユッキーの手に触れる。
「それに……ご主人にとって、あなたは“唯一無二の守護精霊”です。
必ず、あの黒いモヤから救い出せます。
だから……自分を責める必要はありません。
弱気になれば、その隙を“穢れ”に与えてしまいます。
いまは、あなた自身が強くいなくてはいけません。」
ユッキーの目がうるうると揺れ、小さな胸が震えた。
紡ぎも力強く頷く。
「そうですよ!
ユッキーさんはご主人のためにここまで走ってきた、立派で強い精霊なんです!
穢れなんかに負けちゃダメです!!」
その言葉が、ユッキーの心に火を灯した。
(……そうよ。
あたし、あの子を守るって決めたじゃない……!
ぽっと出の黒いモヤになんて負けてられない……!
あの子の笑顔を取り戻すためにも──絶対に!)
ユッキーはぎゅっと握りこぶしを作り、顔を上げた。
「み、みなさん……ありがとうございます!
どうか、あの子を元気で優しいあの子に戻すため……
一緒に力を貸してください!!」
真白・縁・紡
「もちろんです!!」
ユッキーの決意の光に、三人の声が重なった。
お読みいただき、ありがとうございます。
今回はユッキーの不安が少しずつ言葉になり、
真白・縁・紡ぎの三人がその想いを受け止める回となりました。
次回は、いよいよ“黒いモヤ”の正体に迫っていく展開になります。
ユッキーのご主人に何が起きているのか——
真白たちはどのように動き始めるのか。
よければ、次話もお付き合いいただければ嬉しいです。
いつも読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます(*´∀`*)




