【エピローグ】・真白――白き願い、未来へ
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は真白目線でのエピローグになります。
切ない展開が続いた巫女編ですが、
このエピローグ〈真白編〉では、少しでも温かく、
そして未来へつながる光を感じていただければ幸いです。(*´∀`*)
どうぞ、最後までゆっくりとお楽しみください!
二人がようやく想いを伝え合い、
語り合い、涙を分かち合っていたその少し離れた場所で——。
純白の光を纏った小さな影が、
静かに二人の再会を見守っていた。
秋穂の「願い」から生まれた眷属——真白である。
そのそばで女神は、
まるで幼い子をあやすように笑みを浮かべた。
「真白、母となった魂を取られたようで……寂しいのですか?」
真白は小さく首を振った。
「いいえ、主神様。
我が母なる魂が……ようやく願いを叶え、
幸せそうにしておられるのを見て……胸のあたりが、ぽかぽかするのです」
「ほう……それは人の世で言う“幸せ”や“嬉しい”という感情ですよ。
嫌いですか?」
「いいえ……むしろ、とても心地よいです。
ですが——あの二人がやっと想いを伝え合えたのに、
共にいられるのは……ほんの少しだけ。
そう思うと……胸のあたりが、ぎゅっと痛むのです」
女神は細めた瞳で真白を見た。
「それは“哀しみ”や“寂しさ”というものです。
……好きですか?」
「いいえ……とても苦しいので……なくしてしまいたいです……」
「ふふ……真白なら、簡単に出来るはずですよ。
その苦しみを、何か別の“形”に変えてごらんなさい」
真白は胸の奥に生まれた黒い痛みを見つめ、
意識を集中させた。
「主神様! 黒い……もやもやした影のようなものが現れました!」
「では真白、その黒いもやを……
そなたの白い光で包んでみなさい」
「はい!」
真白は白光を広げ、黒い影を包み込む。
「主神様……包みました!」
「では、そのまま——
黒い影が消えるほどの光で包み、祓いなさい」
真白は白い光を中心に収束させる。
——瞬く間に、黒い影は霧散した。
「主神様! 黒いもやが消えました!
胸の苦しみも……なくなりました!」
女神は静かに頷く。
「それが浄化です、真白。
そなたは人の魂の“願い”から生まれた唯一の眷属。
ゆえに——人の心の穢れを祓い、感情に寄り添える力を持っているのです」
真白は胸に手を当て、そっと息を整えた。
「……人とは、こんな苦しいものを抱えて生きていたのですね。
その想いを……抱え続けるのは、きっと辛いのでしょう……」
「だからこそ、そなたが救ってやりなさい。
それが眷属として生まれた使命」
「はい。
人が穏やかに生きられるよう……この力で必ず救ってみせます」
女神は優しく微笑む。
「頼もしいですね、真白。
いずれ現世へ降りるその日まで……ここで、ゆっくり力を育てなさい」
真白は再び、寄り添う秋穂と稲人へ目を向けた。
「主神様……
我が母なる魂の秋穂様は、もうこの空間に留まる理由がなくなりました。
再会できたそのすぐあとに離れさせてしまうのは……
あまりにも可哀想ではありませんか……?」
女神は慈しむ眼差しで応えた。
「心配はいりません。
二人の語らいが終われば——
来世では必ず結ばれるよう、転生が定まっています」
「来世で……結ばれる……」
「ええ。
今世では悪鬼が強く、あまりにも辛い道を歩んでしまいましたからね。
せめて来世では——平穏な世に生まれ、
幸せな夫婦として生を始められるよう取り計らっておきましょう」
真白の瞳に光が灯る。
「主神様……ありがとうございます……!」
胸の奥がふわりと温かく満たされた。
母なる魂・秋穂が、来世でようやく稲人と幸せになれる——
その事実が、たまらなく嬉しかった。
(……これが“嬉しい”というものか。
いいものだな……)
真白は胸に手を当て、そっと目を閉じた。
そして、ゆっくりと瞼を開く。
寄り添い語り合う秋穂と稲人の姿が、
優しい光に包まれていた。
真白はその光景を、
まるで宝物を見守るように静かに見つめていた。
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
このエピローグ〈真白編〉をもちまして、
真白が誕生するまでの物語を無事に完結させることができました。
ここまで読んでくださる皆さまの存在が、何よりの励みでした。
心より感謝申し上げます。
切ない展開が続いた巫女編でしたが、
このエピローグ〈真白編〉で少しでも温かな気持ちになっていただけたら嬉しいです。
もし「真白シリーズ、好きだな」と思っていただけましたら、
ブックマークやいいねで応援していただけると、次の物語づくりの大きな力になります(*´∀`*)
これからも、真白たちの物語をどうぞよろしくお願いいたします。
稲荷寿司




