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【実は狐の眷属です!真白と紡ぎの神社日誌】  作者: 稲荷寿司
【豊穣の舞に遺された想い】

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26/50

【終章】・真白という名

いつもお読みいただきありがとうございます。

(*´∀`*)

今回のお話は、

静かな時間と、胸に灯る想いを大切にして書いた回になります。


もしかしたら、 言葉にできない気持ちを抱えている方や、 優しさに触れたい気分の日に、 そっと寄り添えるお話になっているかもしれません。


よろしければ、

物語の空気ごと、受け取っていただけたら嬉しいです


願いの核は光へと変わり、白から淡い金へ、

そしてすぐにまた白へと輝きを変え……


白く、やわらかな光は、

まだ定まらぬ形のまま、ゆらゆらと揺れている。


けれど、そこに宿るものは確かだった。


巫女の祈は、

稲人への想い、

村に生きる人々への願い。


それらすべてを、ぎゅっと抱きしめるようにして、

光は、あたたかさを宿していく。


「……あなたは、とても

 純粋な願いから生まれました」


女神様の声は、光の奥へと、そっと染み込んでいった。


「誰かを想い、

 誰かを守ろうとし、

 自らのすべてを捧げた願い——

 その核が、あなたなのです」


白い光は、女神様の胸の中で、かすかに揺らめいた。


……とくん。

……とくん。


返事をするように。


女神様は、やさしく微笑み、

白い光へと、そっと手を伸ばす。


「あなたは——

 この地を見守るために、

 祈りを抱いて生きるために」


「“眷属”として、生まれるのです」


白い光は、ふわりと広がり、

女神様の胸元から、ゆっくりと宙へと浮かび上がった。


その時——

光の輪郭が、わずかに変わり始める。


やわらかな白が、

しなやかな曲線を帯び、

次第に、ひとつの“かたち”を結んでいく。


耳のような、

尾のような——

小さな気配。


白金の光の中で、

小さな四つの足が、かすかに動いた。


そこに生まれたのは——

まだ幼く、

純白の温もりを宿した存在。


女神様は、その小さな命を、

胸にそっと抱き寄せた。


微かなぬくもりが、応えるように震える。


女神様の目が、やさしく細められた。


「……なんと、やさしい子……」



---


次の瞬間。


その純白の温もりは、

ひとつの光へとほどけるように、

巫女の魂のもとへ——静かに引き寄せられていった。


言葉などなくても、

心は、すでに知っていた。


その小さな存在は、

巫女の魂のそばへと寄り添う。


触れれば壊れてしまいそうなほど、

けれど、確かに通じ合う距離で。


巫女の魂は、静かに、やわらかく輝いていた。


その光に包まれるように、

その存在の内に、あたたかいものが流れ込んでくる。


(……ありがとう……)

(……もう大丈夫……)

(……あなたの願い、受け取った……)


声にならない声が、

胸の奥で、そっと響いた。


その奥で——

“巫女の願い”が、静かに脈を打つ。


愛しき人を守りたい。

村の未来を救いたい。

繋を幸せに……

どうか、この村に光を……


それらすべてが、

ゆっくりと、その命の奥へと溶け込んでいく。


——その、ぬくもりの中で。


その存在は、生まれて初めての“息”を、

静かに、吸い込んだ。


冷たくもなく、

苦しくもなく、

ただ——やさしい光に満ちた世界。


そしてもう一度、

巫女の魂へとそっと身を寄せ、

別れの代わりに、祈りを重ねた。


やがて——


その小さな命は、

女神様のもとへと、静かに還っていく。


女神様は、やさしく微笑む。


「……よく、受け取りましたね」


その声は、

包み込むようで、讃えるようで——

どこか、母のようにあたたかかった。


女神様は、その存在を見つめて、

静かに告げる。


「……そなたに、名を与えましょう」


「名とは——

 魂が、この世界に“在る”ための印」


「そして、名を得たとき——

 そなたの力も、目を覚ましますでしょう」


女神様はそっと両手を重ね、

祈るように、祝福するように——言葉を選ぶ。


「純粋な魂から生まれた……

 まっしろな願い……」


そして、

世界へ向けるように——


はっきりと、告げた。


「——真白」


その名は、

祈りと祝福を抱いて——

小さな命へと、静かに落ちていった。


ここまでお読みくださり、ありがとうございました。


この回は、

言葉にしきれない想いや、

見えない“何か”が確かにそこに在ることを

大切にしながら綴りました。


感じ取っていただけたものがあれば、

それだけでとても嬉しいです。


次回は、

この出来事の“余韻”と、

そこから広がっていく想いを描いていく予定です。


またお付き合いいただけましたら幸いです。


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