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【実は狐の眷属です!真白と紡ぎの神社日誌】  作者: 稲荷寿司
【豊穣の舞に遺された想い】

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17/50

プロローグ ── 朝霧の刻、巫女となる

こんにちは稲荷寿司です(*´∀`*)

今回は、

六百年前の“ある巫女”のお話です。

まだ何も知らず、ただ村のためだけに祈り続けていた少女が、

どのような日々を過ごし、どのように人々に寄り添っていたのか──

面白く読んでいただけたら嬉しいです!


静かなはじまりの一編を、どうぞお楽しみください。


---


六百年前──。

山あいの静かな村。


夜明け前の空気はひどく澄んでいて、

社の境内には薄い朝霧がたなびいていた。


その静けさの中、

白衣をまとった一人の娘が、

石畳の上で静かに膝をついていた。


今日、長い修行を終え、

正式に「巫女」として任じられる日。


胸はわずかに高鳴っていたが、

その瞳は揺らぐことなくまっすぐだった。


やがて神官がゆるやかに歩み寄り、

朝霧に吸い込まれるような落ち着いた声で告げる。


「この日より、あなたは神と村人の橋渡し。

 祈りを捧げ、人々を守る者となります。」


娘は深く頭を下げた。

白衣の袖が床に触れ、かすかに音を立てる。


「……精一杯、お務めいたします。」


その言葉に呼応するように、

霧の向こうから朝日が差し込み、

娘の白衣をやさしく照らした。


この瞬間、村に新たな巫女が誕生した。

風がそっと彼女の髪を揺らし、

祝福するように流れていく。



---


巫女としての日々は、

清らかで——そして驚くほど忙しかった。


夜が明けきらぬうちに、

彼女は白衣を整え、社の前へ向かう。


霜を含んだ石畳がひんやりと足裏に伝わり、

その冷たさが気を引き締めてくれる。


少し遅れて童女が小走りで追いついてくる。

眠たげな目元のまま、巫女の前に立つと背筋を伸ばすのが愛らしい。


「巫女さま、御神水……汲んでまいりますね」


童女は小さな桶を抱えて湧き水へ向かい、

巫女は竹箒を手に、境内を掃き清め始める。


霧の中で箒が「さら、さら」と音を立て、

空気が少しずつ澄んでいく。


(この場所を清めることで、

 今日も村が守られますように……)


心の中で静かにそう祈りながら、

巫女は丁寧に落ち葉を集めていく。


やがて童女が戻り、

霧が薄れはじめた境内に朝日がこぼれていた。



---


社殿に戻ると、巫女は

一つひとつの神具を布で拭き清める。


鈴の金色、榊の緑、鏡の冷たい光。

それらを磨くたび、心の淀みまで澄んでいく気がする。


童女は榊を新しい葉へ替え、

供物を整え、灯明の油を注ぐ。


準備が整うと、巫女は神前に立ち、

朝の祝詞をゆっくりと読み上げた。


静かでありながら、確かな力を宿した声だった。



---


祈祷だけが巫女の務めではない。


村人が訪れれば、

巫女は一人ひとりの悩みに耳を傾けた。


「子が夜泣きをしてしまって……」

「畑がどうにも育たなくて」

「夫の病が心配で……」


不安な表情が、

巫女と話すうちにふっと緩んでいく。


祈祷を行い、薬草の場所を教え、

赤子には小さなお守りを渡すこともあった。


袖が土で汚れることさえある忙しさ。

それでも巫女の表情に疲れの色はない。



夕暮れの行灯が揺らめく中、

巫女はそっと手を合わせた。


(今日も誰かのために動けた……それだけで十分)


「どうか、この村の人々の日々が平穏で、

 互いに優しさを忘れず過ごせますように」


その願いひとつが、

彼女の胸の奥に静かな光を灯していた。


白衣の裾が夕風に揺れ、

宵闇へと静かに溶けていく。


小さな社に灯る祈りは、

この日も変わらず村を照らしていた。


お読みいただき、ありがとうございました。


六百年前の巫女の日々は、

静かでありながら、確かに誰かを支える光でした。


この先、彼女の想いがどのように変わり、

どのような運命へ向かっていくのか──


続きもどうぞ見守っていただければ嬉しいです。

(*´∀`*)

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