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実は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
神無月―葵禁忌の葵と邪悪な雫―決戦編―【完結】

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蒼の焔――お前たちだけは、絶対許さない




―――屋上へ続く階段



澪斗みなとあおを幻術から救い出したその直後。


二人は息を切らしながら、屋上へと続く最後の階段を駆け上がっていた。



その途中で――



あおが、ふと止まる。


あお

「……今の、神気……」


途中まで感じていた、

あの凄まじい火の童子の神気が消えた。


嫌な予感に胸をかき乱されそうになるが、

蒼は強く首を振る。


火の童子かのこどうじ

『アタイは強いから大丈夫や! 蒼は自分の役割を果たしとき!』


昨夜、

悪戯っぽく笑いながら胸を張ったあの小さな背中。


あおは小さく呟いた。


あお

「……火の童子なら大丈夫……」



火の童子かのこどうじが負けるはずがない。

そう自分に言い聞かせ、

屋上の扉を押し開けた。



そして――



視界に飛び込んできたのは、

あまりにも残酷な "終焉" の光景だった。


屋上を覆っていた強固な結界は粉々に砕け散り、コンクリートの床は黒く焼け焦げ、


そこに広がっていたのは――


まるで、すべてが焼き尽くされた後のような光景だった。


澪斗みなと

「なんで……なんで!! どうして、こんなことに……!!」


澪斗みなとが悲痛な叫びを上げ、駆け寄る。

その先には、

倒れる静音の姿があった。


いつも凛として、

誰よりも頼もしかった姉が、

今はただ糸の切れた人形のように動かない。


抱き起こす。


澪斗みなと

「……姉さん!目を開けてくれ!」


だが――返事はない。



澪斗みなとが必死に呼びかける傍らで、


大和が膝をついていた。



ボロボロになった大和は、

両手で何かを守るように抱えている。



その掌の中には、

今にも消えそうな、小さな焔。


かつて、


火の童子かのこどうじだった存在。


そして――


大和のすぐ隣には、


彼を庇うようにして倒れた真白ましろがいた。


――あまりにも、無残だった。


守りたかった絆が、

踏みにじられた。


澪斗みなとの視線が、中央に佇む男を射抜く。


澪斗

「どうして……なんでだよ……!! あおい兄さん!!」


喉が裂けるほどの絶叫。

だが葵の瞳に、

かつての温かさは微塵もなかった。



蒼は静かに大和へ近寄る。


あお

「……大和」



大和は顔を上げる。



その目から、

ぽろぽろと涙が溢れていた。


大和

あお……ごめん……ごめん……火の童子が……」



そして、

震える手の中。



今にも消えそうな焔。



あおはそれを見た瞬間――


時間が、止まった。


全身の血が沸騰する。


あおの中で "何か" が


音を立てて千切れた。



大和の涙混じりの謝罪は、

もう蒼の耳には届かない。


ただ――


心の底から沸き上がるどす黒い衝動が、

全身を青い熱へと変えていく。


あお

「……う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


激昂と共に、

あおの身体から青い焔が爆発した。

それは温度という概念を置き去りにした、


純粋な殺意の輝き。


そして、

あおあおいしずくへ向かって飛び出した。


あおいが咄嗟に水の防壁を展開する。

だが、蒼の突進は止まらない。


一瞬の

ジュッ!!!っという音と共に、

最強を誇るはずの水の壁が蒸発した。


あおい

「なっ……!?」


あおいの瞳が見開かれる。


防ぎきれなかった焔が葵を焼き、

その身体が大きく後退する。


あおの焔は止まらない。



しずくが黒い槍を放つ。


だが、


あおが放つ青い焔に触れた瞬間、

槍は影も形もなく消滅した。



しずくが顔を引きつらせ、

黒い神気の槍を次々と投射する。


しかし、


あおの焔に触れた瞬間――

すべての槍が一瞬で塵となって消えた。


邪悪なしずく

「なっ!なんなの、こいつ! さっきの焔とは桁違いじゃない……!」




焦ったあおいしずくは、


真白ましろ静音しずねから奪い取ったばかりの神気を自身の黒い力に混ぜ合わせ、

巨大な一撃を放つ。


あおはそれを焔の盾で弾くが、

混ざり合っていた神気のせいで、

軌道が歪み、


逸れた一本の槍が大和の元へと牙を剥いた。


あお

「っ! 大和! 間に合わ――」


絶望が走ったその瞬間、


キィィィィィィン!


金属音が響き、銀光が走った。

 

大和の命を刈り取るはずだった槍が、


弾き飛ばされる。


優羽ゆうは

「遅れてごめんなさい!こっちは任せて!」


優羽ゆうはだった。


彼女は大和を背に庇うと、

背後の紡に鋭く指示を飛ばす。


優羽ゆうは

「紡! 真白様の様子を見て!」


「は、はい!」



紡が駆け寄り、

真白の容態を確認する。


命に別状はない。

だが、神気を極限まで絞り出した形跡に、


紡の目から涙が溢れた。


「真白様、最後まで大和さんたちを……」


優羽ゆうは

「紡! 泣いてる場合じゃない! ここからは、私たちであいつらを倒して、皆を助けるのよ!」



優羽ゆうはの言葉に、


紡ははっとして涙を拭い、


強く頷いた。


その間も、空中ではあおと、


あおいしずくが激しい火花を散らしている。



一方、


澪斗みなと静音しずねの状態を確認していた。



澪斗みなと

(……良かった、姉さんも神気切れだ。

 なら、今一番助けが必要なのは――)


澪斗みなとは大和の元へ駆け寄り、 


隣に膝をついた。


大和は、


自分が傷だらけになってもなお、


掌の中の小さな火種を守り続けていた。


澪斗みなと

「大和くん、頑張ったね……ここからは、二人で守ろう」


澪斗みなとの温かい言葉に、


大和は絞り出すように答えた。



大和

「……っ!澪斗みなと、さん……ありがとうございま 

 す、ありがとうございます……っ」



澪斗みなとの治療術が、


小さな焔を包み込む。


澪斗

「あっちは、優羽ゆうはあおに任せて大丈夫だから」



大和も必死に神気を流し込む。


大和

「っ……火の童子かのこどうじ……頑張って……」



今、自分たちがすべきは、


この尊い命を繋ぎ止めること。



その時。



あおいの水の防壁が、あおの焔を押し返した。


あおに隙が生まれる。


水の向こう側から――


しずくが勝ち誇った顔で黒い槍を突き出す。


あおの死角を突いた一撃。


だが、


その槍があおに届くことはなかった。


優羽ゆうは

「調子に乗ってんじゃないわよ!

 この半端者が!!」



ドゴォン!!


横から飛び込んできた優羽ゆうはの拳が、


しずくの顔面に叩き込まれた。


骨の砕けるような音と共に、


しずくが地面へと叩きつけられた。


あおい

しずく!!」



あおいが叫びながら、

しずくの元へと駆け寄ろうとするが、 


その隙を蒼は見逃さない。


あおの瞳から感情が消え、


ただ凍てつくような冷徹さが宿る。



あお

「絶対に逃さない……お前も……あいつも……

 必ず燃やし尽くす、塵も残さない」


その静かな宣告に、


あおいの背筋に戦慄が走った。


あおい

「ふ、ふざけるな! この落ちこぼれがぁ   

ぁ!!」


あおいが全神気を込めた水の激流――

水鉄砲の如き収束された一撃を放つ。


それに対し、

あおはただ右手を突き出した。


放たれたのは、高純度の青い焔。


水と火。


本来なら火が不利なはずの相性が、


圧倒的な "質" の差によって逆転する。


じりじりと、


あおの焔が水の激流を押し返していく。


あおい

「なぜだ! この術には雫の黒い神気も入っているはずなのに!」


あおい

「まだだ……まだ終わらせないッ! しずくは、雫だけは誰にも渡すものかぁぁ!!」


あおいが絶叫し、

その身を引き裂くほどの神気を解き放った。


空気が悲鳴を上げ、


屋上に溜まっていた雨水、


大気中の湿気、


果ては真白たちの結界を構成する神気さえも強引に引き寄せられていく。


激流が渦を巻き、


天を衝くほどの巨大な

 

"水龍" が顕現した。


その双眸は濁った殺意に染まり、


あおいの全霊、そして命そのものを燃料とした、


最後の一撃。


水龍が蒼へと牙を剥く。


凄まじい水圧が周囲のコンクリートを粉砕し、逃げ場のない死の波動が蒼に迫る。


だが――


あおは、避けない。


恐怖も、迷いも、

その瞳には一欠片も存在しなかった。


ただ、静かに一歩。


火の童子かのこどうじが守り抜いた、


その誇りを踏み締めるように前へ出た。



あおの全身から、


音もなく "蒼い焔" が溢れ出した。


それは熱さえも超越した、


絶対的な青い炎――


あお

「焼き尽くす……火の童子かのこどうじの焔を……

踏みにじった罪、お前ら二人で償え……」


低温から一瞬で数万度に達するような、

青い焔の爆発。


次の瞬間――


ドォォォォォォォォォォンッ!!!



激突の衝撃音さえ、

空間が蒸発する音に掻き消された。


あおいが放った渾身の水龍は、


あおの焔に触れることさえ許されず、


霧になる暇もなく『虚無』へと還された。


困惑するあおい


あおい

(な、なぜだ!黒い穢れの神気も入っているはずなのに)



そして、あおいは気づいた、


あおの背後で、


紡が浄化の神気を、


流し込んでいたことに。


あおい

「しまった、あいつは――」


言い切る前に、

青い焔があおいの視界を塗りつぶし、



断末魔すら上げられず、

あおいは焔の渦に飲み込まれて崩れ落ちた。


邪悪なしずく

「なんなの……なんなのよ、あの焔は!!」


満身創痍で立ち上がった雫が戦慄する。


逃げなければ。


そう思った瞬間、


一気に距離を詰めてきた、


優羽ゆうはに胸ぐらを掴まれた。



そして耳元で優羽ゆうはが静かに告げた。


優羽ゆうは

「逃がすわけないでしょうが……」


邪悪な雫

「はっ……!?」


優羽ゆうはは、


言い終わると同時に、

雫を地面に叩きつけた。


雫は、衝撃で動きが止まる。


優羽ゆうはがとどめの剣を振り下ろすが、

雫は必死にそれを転がって避けた。


しかし、


逃げた先、その足元には――



いつの間にか立ち上がっていた真白と、


紡と澪斗みなとが、


が三位一体となり、


強固な "拘 束" の陣を展開していた。


指一本動かせない。


邪悪な雫

「まさかっ!あの女狐に、誘導されたっ!?」


気づいた時には、


頭上から蒼が舞い降りていた。


逃げ場はない、

慈悲もない。


そして、


あおが火力を最大まで引き上げる。


視界が、


世界が、


青一色に染まっていく。


燃え尽きる意識の中で、


雫の脳裏に火の童子かのこどうじの勝ち誇ったような声が響いた。



――あおの焔を存分に味わえ――



邪悪な雫

(……こんなの……勝てるわけないじゃない……)


邪悪な笑みを浮かべていた、


少女の形をしたモノは、


欠片さえ残さず、


蒼い焔の中に消えていった。


その蒼い焔だけが、


屋上の闇を静かに燃やし続けていた。



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