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カナみんクエスト ~魔王を倒せ!?……イヤだよ、めんどくさい~  作者: Red/春日玲音


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魔王様と転移者 後編

「私……初めて……なの……優しく……してくれる?」

ベッドの上に座りこんだエレナが、もじもじしながら言う。

「あー、そういうのいいから。」

レイフォードがめんどくさそうに言う。

「あーっ!、そういうのって言ったぁっ、乙女の恥じらいを一言で切り捨てやがったですよ、この人っ!」

じたばたと暴れるエレナ。


『騒ぐなよ。本当に犯すぞ?』

レイフォードが()()()で、そう告げると、エレナがピタリとおとなしくなる。


「日本語……じゃぁ、やっぱり……、」

何かを期待するように見つめてくるエレナに、レイフォードは頷いてやる。

「う、う、うわぁぁぁ~~~~んっ!日本人だぁっ、やっと会えたぁぁっ!!!!」

エレナが飛びついてきて、レイフォードを抱きしめ……というかしがみついて、その胸に顔をうずめて泣き出す。

「お、おいっ………はぁ、仕方がないなぁ。」

レイフォードは仕方がなく、エレナの背中に手を回し、落ち着くまで優しく撫でてやるのだった。



「落ち着いたか?」

「あ、うん……ごめんね。」

エレナが少し恥ずかしそうに顔を背ける。

「いいさ、気持ちはわかるからな。」

レイフォードも、召喚された直後はともかくとして、ある程度この世界になれると、無性に日本が恋しくなったものだ。

特に二度と戻れないと考えると、どうしようもなく寂しくなり気が狂いそうになったこともある。

レイフォードの場合、そんなときにカミラと出会い、彼女のおかげで気を持ち直したのだが、エレナにとってのレイフォードは、その時のカミラみたいなものなのだろうと納得していた。


「ごめんね……もう二度と帰れない場所だと思っていたから……まさか日本語が聞けると思ってなかったから……。」

推移ながら、エレナはぽつりぽつりと自分のことを話し出す。


エレナこと江崎麗奈は、日本に住む女子高生。

年は、生前のレイフォードの妹より一つ年下だという。

……あいつの一つ下か。

レイフォードの心がチクリと痛む。

レイフォードはそんな心の痛みを押し殺しながらエレナの話を聞き続ける。


その時、エレナは、流行りのネトゲをしていたそうだ。

そのタイトルは、ちょうどアップグレードしたばかりで、新しいクエストに、心躍らせログインしたという。

クエストの説明を聞いて、装備を確認し、クエストの場所へ転移しようとした瞬間、目がくらむような光があふれだして、エレナはそのまま気を失ったという。

そして、気づけば宿のベッドで寝ていたという。


「最初はねぇ、言葉も分からないしパニックだったの。でも、話を聞いているうちに、なんとなく言葉の意味が分かるようになって……それで余計わからなくなっちゃたのよ?ここはどこ?ってかんじ??」

エレナの言葉に、レイフォードもうなづく。自分が同じ立場だったら同じ感情を持つと思ったからだ。

幸いにもレイフォードの場合、目覚めてすぐ、ナビゲートしてくれる存在……ファーリースと出会てたので、さほど混乱はしなかったのだが、死の危険と隣り合わせの樹海の奥深くで目覚めたレイフォードと、周り全部が見知らぬ人であり、言葉も通じないけど、少なくとも身の危険の心配のない宿屋で目覚めたエレナと、どっちがマシなのだろうか?


「ここはゲームの中?って疑ったんだけどねぇ、それにしては感覚がリアルすぎるでしょ?でも、私の装備、USOの……ゲームのままなんだよね。……ねぇ、ここはいったいどこなの?」

エレナが真剣な眼差しでレイフォードを見つめる。


「ここかぁ。……俺の知っている情報だとな、ここは女神さまが管理する世界なんだと。で、その世界にs刺激を与えるため、定期的によその世界から「勇者」を召喚してるのだとさ。」

「えっと、じゃぁ、私はその勇者?」

「かもしれんし、そうじゃないかもしれん。」

「どゆこと?」

「ついこの間、俺の前に現れた女神を名乗るものの話ではな、俺がこの世界に来たのがそもそもミスなんだと。さらにそのミスに巻き込まれる形で、いくつかの召喚事故が起きたって話だ。」

「何それっ!」

エレナの顔に怒りの表情が浮かび上がる。

「ひでぇ話だろ?しかも、ミスならさっさと戻せって言ったらそれはできないってよ。」

「じゃぁ、なに?私は、単に巻き込まれただけで、しかも帰れないってこと? 」

「お前さんの前に女神が現れていないなら、そういうことだろうな。女神の話だと、ちゃんとした召喚者には事前説明しているってことだったからな。」

「酷い……。」

エレナは顔をしかめて、またレイフォードに抱き着こうとするので、レイフォードはさっとよける。

「なぜ逃げるのよっ!」

「お前こそ、なぜ、見ず知らずの男に抱き着こうとする。」

「うぅぅ……私は、今、とても傷ついてますっ!」

「そうは言われてもなぁ……」

「だから同郷のあなたには、私を甘やかして慰める義務があるのです。」

「なぜそうなるっ!」

「うぅぅっ、いいじゃんかぁっ!甘やかせよぉっ!!優しくしろよぉっ!でろでろに甘やかして、レナ、愛してるよって、耳元で甘く囁けよぉっ!!!」

ポカポカポカと叩いてくるエレナ。

冗談めかしているが、そうでもしないと、心が折れて立ち上がれなくなるとわかっているのだろう。

それがわかるから、レイフォードも本気で突き放せずにいる。

「……たくっ、赤ずきんちゃんはおおかみさんに食べられちゃうんだぞ?」

そう言いながらエレナを抱き寄せる。

「私……赤ずきんちゃん?……狼さん、食べちゃう?」

少し小悪魔のような笑みを浮かべて見上げてくるエレナ。

「いや、あとが怖いからな……。」

「えぇーーーーーっ!なんでだよぉ、食べちゃいなよぉ……っていうか私が食べるっ!」

そう言ってレイフォードの唇を奪うエレナ。


……その後、レイフォードが狼さんになったかどうかは、ここでは割愛しておく。

ただ、サロンに戻ったエレナは終始ご機嫌な顔で、しかもレイフォードにべったりと寄り添っているため、セシルから疑惑の目を終始向けられていた、ということだけは記しておく。







転移者との邂逅です。

ちなみに麗奈が遊んでいたネトゲのタイトルはUSOであり、レイフォードが遊んでいたUSOと同一のものです。

USO内で二人はあったことはないですが、エレナのメインウェポンである魔法剣は、レイフォード作というつながりがあったりします。


※ 書き溜めストックが尽きたので、今後の更新は週2~3回になると思います。楽しみにしていただいている皆様、ご迷惑をおかけいたします。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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