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カナみんクエスト ~魔王を倒せ!?……イヤだよ、めんどくさい~  作者: Red/春日玲音


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これがチート能力?うそでしょ??

「はぁ……世知辛いわぁ。」

私はとぼとぼと草原を歩く。


昨晩、コミィの家に帰ったらすごい呆れた顔をされた。

更に食事代と宿代として5G取られた。


コミィが言うには「宿代より安いでしょ?」とのこと。

確かに村の宿に泊まれば、一晩8G、朝夕の食事で8G、合わせて16Gかかることを考えれば……。

っていうか、私一応勇者って事になってるよね?

それなのにこの扱い、ひどすぎない?


……っと、やっと見つけた。


私は足を止め、そっと獲物を窺う。


少し向こうに「スライム」の姿が見える。


この世界のスライムは、アメーバーみたいなべちゃぬめッとしたものではなく、ゲームによく出てくるような雫型をしている。


プルンっとしていて、突っついたら弾力があり、移動するときは、ポヨンポヨンと跳ねる……正直にいえば愛くるしい。見てるだけで癒される。

あんな姿で「ボク、悪いスライムじゃないよ」なんて言われたら……うん、仲間にしたくなる気持ちはよくわかる……が、相手はモンスターなのだ。

倒すべき敵なのだ。それに何より……倒さなければ今夜は野宿することになる。


私の所持金は『勇者セット』に入っていた50G。そこから昨日買った黒パンの代金3Gが引かれ、コミィに払った「宿代」が5G引かれて、残り42G。


昨日の状況から、せめて刃物がないと無理と判断した私は、武器屋に行ったけど、一番安い「青銅のナイフ」でも180Gもするから全く手が出せない。


仕方がなく、ヒノキの棒よりはマシだろうと、手持ちで買える一番いい武器「こん棒」を30Gで買ったのだけど、残りが12Gになってしまった。


そして、武器屋の親父さんに頼み込んで「折れたナイフの刃先」を10Gで譲ってもらう事に成功した。

正直心もとないけど、これでもないよりはマシ……だと思いたい。


そんなわけで、今の所持金は2G……黒パンすら買えやしないのよ。


そして、装備を整えた私が向かった先は、森の手前の草原。そこにある湿地帯にはスライムが生息していると聞いたのよ。

そう、ゲーム序盤のスライムたたきは、定番中の定番でしょ!


とはいっても、ゲームのように、スライムを倒して経験値とお金が手に入る、なんて簡単にはいかないことは理解しているの。っていうか、スライムを倒したからと言って、経験値はともかくとして、どこからお金が出てくるのよ?


全ての答えは、「女神の手帳(ゴッディスノート)」が教えてくれたわ。


あの時、ミルファース様から頂いた手帳。

昨晩、思い出して取り出してみたのよ。


結論からえば、この手帳は、メモでもあり辞書でもある万能ツールだという事が分かったの。


どういうことかって言うと、私が、見聞き、経験、推測したことはすべてこの手帳に自動筆記される。だから、思い出したいことがあれば、そう願うだけで、該当する事柄が、手帳に浮かび上がるのよ。


また、一般的な事柄であれば、私が知りたいと念じれば、その答えが返ってくるの。辞書や図鑑を引くようにね。


例えば、「始まりの村近辺に生息する魔物」と念じれば、近辺に生息する魔物の種類や分布などが現れるし、それら魔物の詳細、と念じれば、一般的にわかってる範囲で、その魔物の詳細が分かる。さらに言えば、私自身がその魔物と相対し、知った内容が書き足されるっていう優れものなの。

つまりこの手帳があれば、この世界の一般常識などは大体理解できる。


そうそう、コミィが言った「マリーの村」は通称で、正式には「ハジ・マリーの村」というらしいのね。

ハジマリーの村、……ハジマリの村……始まりの村……。

うん、思わずそこにあったツボを叩き壊しましたよ。


……っと、それは置いといて、同時に理解した私自身の事。


私……というより、異界からの召喚者全体に言えることなんだけどね。


まず、この世界には「異界から召喚」された人物はそれなりにいる(いた?)らしいのよ。


魔王を倒して欲しい、と意図的に召喚されたものから、単なる事故に至るまで、様々な理由でこの世界に来た異邦人たちには、女神様からの「お詫び」として、特異能が与えられるのね。


それは過ぎたる強化能力だったり、伝説と言われる武装だったり、アイテムだったり……と。

皆、その与えられた力を十全に発揮して、この世界で「伝説」を作り上げていった……という事らしいの。


そして、私に与えられたのは「制限解除(リミットブレイク)」と「女神の加護」……何がなんだかわけわかんないんだけど、詳細は「女神の手帳(ゴッディスノート)」が教えてくれた。


まず「制限解除(リミットブレイク)」はあらゆる制限を受け付けない力。

これだけじゃどういうことか分からないよね?


この世界に限らないけど、世の中には、必ず「制限」というものが存在するのよね。

分かりやすく、能力だけに限定して話をすると、例えば、物理攻撃を主体とする「戦士」達は「魔法」を苦手とするの。

これは、特殊金属を除いて、金属全般が「マナ」の動きを阻害するから、金属製の鎧や武器を装備する戦士たちは魔法が使えない。


逆に、魔法使いたちは、その身に金属を纏わせると魔法が使えなくなる。だから、魔法使いはミスリルなどの特殊金属を除いて、例え、ナイフのような小さなものでも、金属製の装備は身に付けない。


他に、魔法ひとつとっても、相克関係にある属性はダメというのもある。


簡単に言えば火属性が得意な魔法使いは、水属性の魔法を使えないか、使えたとしても、初級のごくわずかなものぐらいで効果も低い、といったように。


そんな感じで、あらゆる「制限」に縛られているこの世界だけど、その制限に縛られないのが「制限解除(リミットブレイク)」という能力。


簡単に言ってしまえば、私は金属の剣を持ちながら魔法が使えるし、ファイアーボールもウォータウォールも使える……覚えれば……という事なの。


そしてもう一つの「女神の加護」について。

これも説明し始めるとかなり面倒なんだけど、簡単に説明するとね……。


この世界の人々には「ギフト」と呼ばれる特殊な力を持つ人々が多数いるの。

勿論持っていない人も大勢いるけどね。

割合とすればギフトを持つ人は5人に1人といった感じかな?


とはいっても、そのギフトは様々で、「剣士の極み」とか「賢者の魔導」といった一流の戦士や魔導師に匹敵するものもあれば、「毒草感知」とか「方向感覚」など、持っていれば少し便利、持っていなくても特には困らない、といったモノまで様々。


その中でも「~の加護」というのはかなり有用な上位に入る部類のモノで、加護を受けた相手の特性に応じてかなりの能力を発揮するんだって。


例えば「水精霊の加護」だと、水属性に対して大きな耐性を持つ上、水属性の魔法の威力が、加護を持っていない人に比べて20~30%ほど上がるんだとか。

これが「水大精霊(ウンディーネ)の加護」になると、水属性の魔法を無効にし、自分の水属性の効果は80%上がる。さらには時間制限はあるけど水中で呼吸が出来るようになるんだって。


そして、その最上級なのが「女神」の加護ってわけ。


私の場合は、土の属性を持つ、慈愛と豊穣の女神ミルファース様の加護と、水の属性を持つ、時空神ミィル様の加護を得てるから、水と土の属性に関しては最大級の加護を、ついでに時空魔法の適正を持つことになるの。

と言っても、適正と使える魔法は違うからね、私が魔法を使おうと思うなら、魔法を覆えなきゃいけないのよ。


長々と語っちゃったけど、結局何が言いたいかというと、将来性はともかくとして、今現在の私にとって、身に着けたギフトは何の役にも立たないって事。

目の前にいるスライム相手でさえ、自分の素の力で立ち向かわなきゃいけないのよ。


そんな私にとって、もっとも役に立つのが、やっぱり「女神の手帳(ゴッディスノート)」なの。


目の前にいるスライム、その特性を手帳で調べてみると……


「レッサースライム」

・スライム種の中でも最弱の存在。

・スライム全体の特性である耐物効果も弱い為、力づくでも倒せなくはないが、胎内にある「核」を潰すのが良い。

・体表にあまりダメージを与えずに「核」を通した場合、「スラクレイ」と呼ばれる体表を残す。

・稀に変異種である「ベロウスライム」が混じっていることがある。

 特殊能力

「捕食」「融解」


……うん、要は核を潰せばいいわけね。

………なんかね、加護だのなんだのより、この手帳が一番役に立ってるよねぇ。

私は何となく釈然としない気持ちを抱えながら、こん棒を片手に、スライムに突撃するのだった。



「はぁはぁはぁ……もぅダメ……。」

私はその場に崩れ落ちる。


「はぁはぁはぁ……経験値も、はぁはぁ……レベルも……上がったでしょ……はぁはぁはぁ……。」

そう呟くけど、経験値だとかレベルが目に見えるものではない以上、あがったと自己判断するしかなく……。


「はぁはぁはぁ……たったこれだけかぁ……。」


落ちている「スラクレイ」を拾い集める……その数7個。


スライムは数えていただけでも30以上は倒した。実際には100近く倒していると思う。

なのに戦利品がこれだけというのは……。


原因は分かってる……こん棒だ。


柔らかな弾力のあるスライムの上からこん棒を振り下ろしても、核はにゅるッと逃げる為、何度も何度も叩き潰す必要があった。結果として必要以上のダメージを表層に与えることになり、アイテムとして残らないのだ。


かといって、こん棒以外でダメージを与えることのできる武器はなく……。


……ん?

視界の端に動くモノが見えた。

私は立ち上がり、こん棒を構える。


『待って……ボク、悪いスライムじゃないよ?』

頭の中に声が響く。


「お前が喋っているの?」

私は目の前の薄ピンクがかったスライムを見つめる。


『そうだよ。ボクが役立つ証拠を見せるよ。』

そういうや否やスライムから触手みたいなものが伸びて私が手にしていた「スラクレイ」を奪っていく。


「あっ、キサマっ!」


『明日には出来てるからぁぁ……』

そんな声が頭の中に響くが、薄ピンクのスライムは、すでに姿を消していた。


……はぁ……帰るかぁ。


私はとぼとぼと村に戻ることにした……。



出る予定の無かった謎のスライム。

というか、このスライム退治の予定もなかったのですが(><)

最初のプロットでは、バーサクベアーをサクッと倒して旅に出る……はずだったんですけどねぇ。

冷静に考えて、ヒノキの棒でバーサクベアーを倒しに行くなんて自殺行為でしょ?


ってか、推定Lv1のカナミが、推定Lv15(ぐらい?) のバーサクベアーを倒すには、どれくらい強くなればいいんですかねぇ?



ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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