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カナみんクエスト ~魔王を倒せ!?……イヤだよ、めんどくさい~  作者: Red/春日玲音


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そのころ、魔王は?

ぴちゃぴちゃ……

薄暗い部屋の中で、淫靡な水音が響く。

「ま、魔王様ぁ……お慈悲をぉ……」

蕩けたような顔で甘えた声を出してくる女騎士。

めんどくさそうに慈悲を与えてやると女騎士は満足しきった顔で昇天してしまう。


「クスクス、もはや手慣れたものねぇ、魔・王・様・♪」

くすくすと笑いながら頭の周りを飛び回る、小さな人の姿をした何か。


「うるさいぞファーリース。」

「クスクス。照れちゃってぇ。」

ファーリースと呼ばれた小さな妖精は、それでもからかいの視線を崩すことはなく、魔王に告げる。

「ところで、魔王様……っと、レイフォード様とお呼びした王がいいですかぁ?」

魔王、という言葉にレイフォードが顔をしかめたのを見て、ファーリースは面白そうに言いなおす。

「それともぉ、カナタ様がいいですかぁ?」

「……今の俺はレイフォードだ。」

「はいはい、じゃぁ、レイちゃん、お仕事よぉ?」

「急になれなれしくなったなぁ。まいっか。それで?」

「3Aダンジョンに侵入者よ。すでに4階層を抜けたようね。」

「3Aダンジョンか。確かあそこの守護者は……」

「5階層にミノちゃん、10階層にカミラ様が暇つぶしに行ってます。」

「相手は?」

「自称、勇者パーティ。勇者を名乗る剣士と、大楯使いの騎士、遊撃担当の魔法剣士と、僧侶の4人パーティですね。」

「バランスはとれてるなぁ……ちなみに……。」

「わかってる。魔法剣士と僧侶は女の子よ。年のころは二人とも16~18ってところかしら?ちなみに二人とも男性経験なし。」

なぜそこまでわかる!?と突っ込みたいのをこらえて、レイフォードは指示を出す。


「ミノちゃんには無理をするなと伝えておいてくれ。こんなところで失いたくはない。まぁ、相手にもならないようなら、男二人は好きにしていいと。でも女の子はダメだぞ。」

「相変わらず、女の子には優しいのね。」

「当たり前だろ?女の子には優しくするもんだ。」

「ふ~ん。その割には扱いが雑じゃない?」

ファーリースは地面に転がって愉悦の表情を浮かべて気を失っている女騎士に視線を向ける。

「こいつらは女の子じゃない。ただの雌犬だ。それに、こんなんにしたのはカミラであって、俺はそれに付き合わされているだけだ。」

「ふ~ん、その割にはかなりお楽しみのようだったけどぉ?」

「グっ……し、仕方がないだろ。それに俺の最愛にはもう手が届かないんだよっ!すこしぐらい自棄になってもいいだろっ!」

レイフォードは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。


レイフォードには前世の記憶がある……というか、こっちの世界に来る直前まで、日本にいたのだ。

ある日、ずっと思い続けていた彼女に告白した。

突然のことで彼女も答えが出ないだろうと、返事は明日でいいから、と逃げるようにその場を後にした。

正直に言えば、Noといわれるのが怖くて逃げだしたのだったが、あとになって思えば、あの時逃げずにちゃんと答えを聞いておけばよかったと後悔する。


というのも、その直後、トラックに轢かれそうになった幼い少女をかばい、代わりに跳ね飛ばされ、気づけば、このわけのわからない世界で、「魔王」と呼ばれていたのだから。


周りの状況や、目覚めた時から付き添っていたファーリースからの説明を聞き、ここは異世界なんだと理解してからは、彼は「レイフォード」と名乗り、魔王レイフォードとして生きていくことを決意した。

ちなみに「レイフォード」という名前は、生前?ネトゲのキャラにつけていたものであり、ゲームに似た様なこの世界では元の名よりふさわしいだろうということと、生前の名を名乗っていては、いつまでも未練を引きずるような気がして嫌だったという理由もあった。


それからの日々は、まさしく激動といっていいものだった。

まず、衣食住すべて何もない。

森の中を彷徨い、ファーリースに食べられる植物を教えてもらって食つなぐ日々。

魔王といっても戦い方など知る由もなく、角ウサギ相手に重傷を負いながら戦い方を体で覚え、角ウサギを食料にすることが出来るようになるまで3か月という日々を費やした。

安住の地を求めて、ファーリースと彷徨っているうちに見つけたのが小さな廃棄されたダンジョン。

その奥に半死の状態で封印されていたのがヴァンパイアハーフのカミラ。


色々と弱っていたレイフォードにとって、カミラとの出会いは行幸であった。

カミラの封印を解いた後、弱っていたカミラは本能の赴くままにレイフォードを襲いその血をすする。

半裸の美少女にのしかかられたレイフォードは、どうしていいかからずオロオロするばかり。

レイフォードから血の供給を受け、我に返ったカミラは、オロオロするレイフォードを挑発する。


「真っ赤になっちゃって……ひょっとして童貞?」

「ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

思わず見栄を張るレイフォード。

そしてカミラに挑発(誘惑)されるままに、カミラと契りを結ぶ。

色々誘惑してくる割に、カミラも初めてだったため、事後のカミラが可愛く、レイフォードの獣が本性を現したのは、今となっては笑い話ではある。 

あるのだが……いろいろ、口に出すのも憚れることもあり、レイフォードは、カミラには弱いのだ。


そして、カミラは女の子が大好きなうえSである。

だから、襲い掛かってきた女騎士や冒険者を、捕らえて心ゆくまで恥辱を合わせるというのが、最近のマイブームであるらしく、その「恥辱を与える」一環として、「好きでもない男に散々弄ばれる」を体感させるため、その相手をレイフォードが務めている、というわけだ。


そのことにレイフォードも思うところがないわけじゃない。

先程、ファーリースにも言ったように、レイフォードは、基本フェミニストであり、「女の子は大事にするもの」という考えが根にはある。

しかし、カミラもそのあたりは心得ているようで、レイフォードのところに送り込んでくるのは、高慢な性格だったり、身分をかさに着て弱い者いじめをするようなものだったりと、いわゆる「性格ブス」な者たちばかりだったりする。

彼女たちのせいで、罪のない可愛い娘たちがひどい目にあってきたと考えれば、扱いが雑になるのは仕方がないことだろう。


ちなみに、襲ってくるものの中にはまともな女の子……レイフォードが「大事にするべき」と考えている女の子たちもいる。

彼女たちについては……


「レイ様、カミラ様から通信が……お邪魔でしたかっ!」

地面に転がっている女騎士が視界に入った少女が顔を真っ赤にする。

「いや、終わったから……、」

「そうですか、じゃぁ、お口直しを……。」

少女は、そう言っておずおずと近寄り、口づけをしてくる。

少女の柔らかな唇と舌を堪能した後、ゆっくりと体を話し、顔を真っ赤にしている少女に語り掛ける。

「なぁ、シェラ、何度も言っているが、無理にキスしなくていいんだぞ?」


彼女の名前はシェラ。

クズたちの盾として無理やりダンジョンに連れてこられた、奴隷の少女である。

クズたちの実力では、ダンジョン踏破などできるはずもなく、2階層で、あっさりとパーティは瓦解。シェラを囮として置き去りにして、早々に逃げ出した。

その様子を見ていたカミラは、シェラを確保し、逃げ出したパーティメンバーのうち女騎士と女魔法使いをとらえる。

その二人がどうなったかというのは……まぁ、言わなくても分かるだろ?


ちなみに、シェラは、カミラと対峙した時、健気にも与えられた命令、すなわち、死んでも時間を稼げ、……に従って、カミラに抵抗したのだ。

シェラはそれなりに強かった。

技術が、というより、その信念が強かった。

奴隷でも心はある。ただの囮かもしれないけど、それでも一矢報いる。ただで死んではあげない……と。そして、その信念通り、カミラの腕に傷をつけるまで抵抗した。


そんな少女に、カミラもレイフォードも、心が動かないわけがなかった。

特にカミラはいたく感激し、常にシェラをそばに置いておくようになった。

今では、シェラも心を許し始めてきたようにも思う。


ちなみにシェラがレフォードにキスをするのは、「シェラ、レイは私のお願いを聞いて、やりたくもないクズの相手をしているの。だから、その後は、あなたが慰めて癒してあげて。」というお願いをされたからなのだが……。


「いいえ、私がしたいのです……おいやですか?」

「そんなわけないだろ?」

その可愛らしい仕草に、レイフォードの中の獣が頭をもたげる。

「ファー、一時間ぐらい部屋にこもるから。」

レイフォードはそう言ってシェラを抱きかかえ、部屋へとダッシュしようとしたと悪露に、放置してあった通信の魔道具から叫び声が聞こえる。


『待ちなさいよぉっ!』


カミラの声だった。


『非常事態よっ!早くこっちに来なさいっ!』


カミラはそれだけ言って、通信を一方的に切る。


レイフォードは、うんともすんとも言わなくなった通信機を見て、それから抱えてるシェラを見る。

そして……そのまま黙って部屋に入っていくのだった。



いきなり魔王サイドです。 

一応、カナミの事情はキリが付いたので、一方で、魔王サイドでは?、ということです。

これからカナミが倒さなきゃいけない魔王……倒すよね?勇者だもんね?……倒してくださいっ!

その魔王も色々複雑な事情があって……

って感じなのですよ



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