極貧生活 その2
「ジェガモ……ですかぁ?」
イーリスが嫌そうな声を出す。
私が苦労して見つけてきた食物なのに……。
「なんでそんなに嫌そうなのよ?」
「だって、お姉さま、ジェガモですよ?家畜のえさにもならない’無駄作物ですよ?」
「そうですね、成長が速く、ゴブリンが好んで食べるので、魔物除けとして以外には何の役にも立たない食物です。」
マリアさんがそう言う。その顔は平静を保ってはいるが、どことなく嫌そうだった。
「あのね、カナ姉。ジェガモは、固いし、焼いても焦げるだけだし、毒もあってお腹が痛くなるの。」
ミィナがとてもつらそうな声で言う。
なんでも、以前に食したことがあるらしい。ミィナも決して楽な生活をしてきたわけではなので、口に入るものならとりあえず食べる、という生活を送ってきたという。
その中の一つがジェガモで、味に我慢すれば食べられなくはない。ただ、かなりの割合で毒に当たるという。
「そうは言うけどねぇ……、」
私は手にしたジェガモを改めて見つめる。
……うん、どう見てもジャガイモだ。
実際に、モモコに解析してもらい、女神の手帳でも確認したから、間違いはない。
地球のジャガイモと違う点としては、まず、栄養価が高いこと。人が生きていく上での必要な栄養素はすべて詰まっているといっていい
それから成長速度が異常に早い。土地の差もあるが、植えてから2週間から1か月ぐらいで収穫ができる。しかも連作障害は起きないという優れもの。正確に言えば、連作障害など関係なしに、その場にある養分のみで生育する。つまり、どれだけ枯れた土地であっても、肥料があれば、その肥料分だけは生育するから、必要最低限の収穫ができるらしい。
他には、収穫時に気を付けないとダメージを追うとか……これはよくわからないね。
後、一番大きな違い……ジェガモは植物型の魔物だってこと。
これが一番の問題かと思っていたんだけど、イーリスも、マリアさんも、マイナもリィズもみんなそのことに関しては何も思っていないらしい。
というか、今回のことで初めて知ったんだけど、私が野菜だと思っていたもののほとんどは魔物だっていう話。
あのキャベツも大根もごぼうも、みんなよく似た魔物なんだって……。私、この世界に来て、初めてショックを受けたよ……。
まぁ、魔物だということに目をつぶれば、ほとんどジャガイモと変わらない、しかも、生育が早く、収穫力も多い、その上栄養価抜群なミラクルな食べ物ってわけ。これを中心にs建てさせれば、2~3か月で当面の食糧問題は解決できる……のだけどなぁ。
みんなが苦い顔でジェガモを見つめる。
「あのね、これは工夫次第でおいしくなるのよ?」
私がそう言っても、皆、信じられなという表情を崩さない。
「お姉ちゃん、でも毒があるのよ?」
マイナが心配そうに言う。
「うん、わかってる。毒はね、この芽の部分にあるのよ。」
私はそう言ってジェガモを切ってみせる。
「この、芽が出始めている部分が少し変色しているでしょ?これが毒の部分。だから芽が出る前に、この部分を取り除けば、大丈夫なの。」
私はそう言いながら、芽の部分を繰り抜きそぎ落としていく。
「それでも、まずいことには変わりないわよ?」
リィズは、よりわけた大丈夫な部分をひとかけら口の中に放り込み、すごく苦い顔をする。
「ジェガモは生食できないからね。」
私は、用意しておいた「せいろ」の中にいくつかのジェガモを入れる。
他のジェガモはスティック状に切り、これまた用意しておいた、火にかけた油の中へと放り込んでいく。
蒸すより、すでに適温となっている油で揚げる方が早く出来上がる。
頃合いを見て油から引き揚げた、スティック状のジェガモを油切用の草の上に置き、塩をパラパラと振りかけていく。
この塩は、近くの海から汲んだ海水から精製したものだ。
海水からの塩の精製は、試作段階ではうまくいっている。今はドラインさんが中心となり、大掛かりなシステムを構築しているところだが、なかなかうまくいかないらしい。
まぁ、そう簡単にいくとは私もイーリスも考えていない。施策がうまくいって、塩が出来るという事実が大事なのだ。3年以内に、流通に乗せれるだけの精製が出来れば大成功だとイーリスは言う。
だけど私は……ですかぁ?」
イーリスが嫌そうな声を出す。
私が苦労して見つけてきた食物なのに……。
「なんでそんなに嫌そうなのよ?」
「だって、お姉さま、ジェガモですよ?家畜のえさにもならない’無駄作物ですよ?」
「そうですね、成長が速く、ゴブリンが好んで食べるので、魔物除けとして以外には何の役にも立たない食物です。」
マリアさんがそう言う。その顔は平静を保ってはいるが、どことなく嫌そうだった。
「あのね、カナ姉。ジェガモは、固いし、焼いても焦げるだけだし、毒もあってお腹が痛くなるの。」
ミィナがとてもつらそうな声で言う。
なんでも、以前に食したことがあるらしい。ミィナも決して楽な生活をしてきたわけではなので、口に入るものならとりあえず食べる、という生活を送ってきたという。
その中の一つがジェガモで、味に我慢すれば食べられなくはない。ただ、かなりの割合で毒に当たるという。
「そうは言うけどねぇ……、」
私は手にしたジェガモを改めて見つめる。
……うん、どう見てもジャガイモだ。
実際に、モモコに解析してもらい、女神の手帳でも確認したから、間違いはない。
地球のジャガイモと違う点としては、まず、栄養価が高いこと。人が生きていく上での必要な栄養素はすべて詰まっているといっていい
それから成長速度が異常に早い。土地の差もあるが、植えてから2週間から1か月ぐらいで収穫ができる。しかも連作障害は起きないという優れもの。正確に言えば、連作障害など関係なしに、その場にある養分のみで生育する。つまり、どれだけ枯れた土地であっても、肥料があれば、その肥料分だけは生育するから、必要最低限の収穫ができるらしい。
他には、収穫時に気を付けないとダメージを追うとか……これはよくわからないね。
後、一番大きな違い……ジェガモは植物型の魔物だってこと。
これが一番の問題かと思っていたんだけど、イーリスも、マリアさんも、マイナもリィズもみんなそのことに関しては何も思っていないらしい。
というか、今回のことで初めて知ったんだけど、私が野菜だと思っていたもののほとんどは魔物だっていう話。
あのキャベツも大根もごぼうも、みんなよく似た魔物なんだって……。私、この世界に来て、初めてショックを受けたよ……。
まぁ、魔物だということに目をつぶれば、ほとんどジャガイモと変わらない、しかも、生育が早く、収穫力も多い、その上栄養価抜群なミラクルな食べ物ってわけ。これを中心にs建てさせれば、2~3か月で当面の食糧問題は解決できる……のだけどなぁ。
みんなが苦い顔でジェガモを見つめる。
「あのね、これは工夫次第でおいしくなるのよ?」
私がそう言っても、皆、信じられなという表情を崩さない。
「お姉ちゃん、でも毒があるのよ?」
マイナが心配そうに言う。
「うん、わかってる。毒はね、この芽の部分にあるのよ。」
私はそう言ってジェガモを切ってみせる。
「この、芽が出始めている部分が少し変色しているでしょ?これが毒の部分。だから芽が出る前に、この部分を取り除けば、大丈夫なの。」
私はそう言いながら、芽の部分を繰り抜きそぎ落としていく。
「それでも、まずいことには変わりないわよ?」
リィズは、よりわけた大丈夫な部分をひとかけら口の中に放り込み、すごく苦い顔をする。
「ジェガモは生食できないからね。」
私は、用意しておいた「せいろ」の中にいくつかのジェガモを入れる。
他のジェガモはスティック状に切り、これまた用意しておいた、火にかけた油の中へと放り込んでいく。
蒸すより、すでに適温となっている油で揚げる方が早く出来上がる。
頃合いを見て油から引き揚げた、スティック状のジェガモを油切用の草の上に置き、塩をパラパラと振りかけていく。
この塩は、近くの海から汲んだ海水から精製したものだ。
海水からの塩の精製は、試作段階ではうまくいっている。今はドラインさんが中心となり、大掛かりなシステムを構築しているところだが、なかなかうまくいかないらしい。
まぁ、そう簡単にいくとは私もイーリスも考えていない。施策がうまくいって、塩が出来るという事実が大事なのだ。3年以内に、流通に乗せれるだけの精製が出来れば大成功だとイーリスは言う。
だけど私は、それまでの時間を無駄にする気はない。同時進行でやりたいことや作ってもらいたいことが山ほどある。
この一部でも軌道に乗れば、イーリスの助けになるのは間違いない。何より、町が活気づけば、皆の暮らしも楽になる。そのために、私は自重というものをペイって放り出すことにしたのよ。
とはいっても、先立つものがないことにはねぇ。そして、おなかがすいていてはね……。
だから……フライドジェガモちゃん、うまくできていてよね。
私は、スティック状の油で揚げたジェガモを一本つまむと口に入れる……うん、少しもの足りないけど、うまくできてるよ。
「ん?どうしたの?おいしいよ?」
私をじぃっと見ているみんなに声をかける。
「お姉ちゃん……大丈夫なの?」
マイナが不安そうに尋ねてくる。
「うん、大丈夫だよ。とてもおいしいけど……食べないの?」
「あ、うん……お姉ちゃんがそう言うなら……。」
マイナは恐る恐るフライドジェガモをつまみ上げ、口の中に入れる。
そして……噛んだ瞬間、目を見開き、次の瞬間には頬をほころばせる。
「……おいしいっ!」
その声に引き寄せられるように、イーリスとリィズも半信半疑で手を伸ばす。
イーリスは最初こそ慎重に口へ運んだものの、舌に広がる旨みに驚いたように小さく声を漏らした。
「なにこれ……すごく優しい味……!」
リィズは感動を隠せず、瞳を輝かせながら次々と口へ運ぶ。
「まるで口の中でとろけるみたい……止まらない!」
三人の反応に、部屋の空気は一気に華やぎ、最初の不安は嘘のように笑顔で満たされていった。
テーブルの上で、初めての料理が思いがけない幸福を運んでいる――そんな瞬間だった。
「さて、こっちもそろそろよさそうよ。」
蒸籠の蓋を取った瞬間、白い湯気がもくもくと立ちのぼり、甘やかな香りが空気を満たした。
それが、誰もが知る“あの不味い芋”――「ジェガモ」から発せられているものだと気づいた途端、一同は息を呑んだ。
「……信じられない」
イーリスが眉を寄せる。
「ジェガモは獣ですら口をつけない。どう調理しても苦く、えぐく、土臭い……そのはずよ」
「それは調理の仕方が悪いだけ……よ。」
私は迷いなく手を伸ばし、蒸した芋を割っってイーリスに渡す。
中から現れた、ほっくりとした質感、乗せたバターが熱でとろける……。彼女はそっと口に運び――。
「……っ!」
驚愕に瞳を大きく開く。
「これは……甘い。いや、ただ甘いだけじゃない。濃厚で、でも後味は……何なのこれっ!」
その様子に釣られるように、リィズも渋い顔のまま芋を手に取り、恐る恐る口へ。
次の瞬間、頬を紅潮させて叫んだ。
「な、何これ!? 本当にジェガモなの? あの泥みたいな味しかしなかった芋が……こんなに!」
マイナとミィナも顔を見合わせ、同時にかぶりつく。
「ほわぁ……やわらかい……!」
「体の中からじんわり温まる……こんなの、食べたことない!」
マリアは静かに噛みしめ、しばし黙り込んでから呟いた。
「……奇跡ね。調理法一つで、あれほど忌避されていたものが、こんな宝になるなんて」
やがて、イーリスがハッと気づいたように顔を上げた。
「……待って。この味、この量……もし本当にジェガモがこの姿に変わるなら――街の食糧難は一気に解決するわ」
言葉に、一同は沈黙した。
ジェガモは嫌われ、放置され、誰もが無価値と見なしていた作物。だが、その実りの多さだけは他の芋を凌駕していた。これまで見向きもされなかった膨大な収穫が、すなわち“宝の山”へと変わる。
「これなら……」
私は静かに頷づく。
「油も、本当は植物から知ったものを使った方がいいし、バターも、今は高級品。問題は色々あるけど、それでも……飢えに苦しむ人たちも、救える。みんなが笑顔で食卓を囲めるようになる日は近いよ」
蒸気の立つジェガモを囲みながら、一同の胸に同じ確信が宿る。
忌避された芋が、街を支える糧となる――。
その瞬間、彼女たちは確かに未来を見たのだった。
定番のジャガイモさんです。
実際のところ、イモは飢饉を救う救世主なんですね。
戦国時代、籠城に備えて城内で芋を栽培していたというし、熊本城の壁には芋の弦を埋め込んでいたというのは有名な話……。
芋ではないですが、その球根に多くのでんぷんを含む彼岸花……これからの時期、よく目にする彼岸花も、もとは飢饉に備えて植えられていたという説があります。
毒抜きをすれば食用に耐えるのだそうです。ただ、勝手に食べられないように、意図して、毒があることを強調して流したという伝承も残っているのだとか。
ちなみに、私は「彼岸花」より「曼殊沙華」と呼ぶ方が好きです。……最近は「リコリス」の方が有名みたいですけど。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
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