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カナみんクエスト ~魔王を倒せ!?……イヤだよ、めんどくさい~  作者: Red/春日玲音


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愚兄賢妹……よくある話と言えばそれまでよ。

「……というわけなんだ。これで全部だっ!だからこれを…。」

今にも泣きだしそうな野盗のリーダーの頭の上で心地よさそうにしている『脱毛スライム』を引き剥がしてポーチにしまう。

結構ふさふさしていた彼の髪の毛は1/4ぐらいまで減っていた。

うん、毛根は無事のようだよ、ヨカッタネ?


「オイっ、全部喋ったんだから………」

「うるさい、黙れ。」

「ヒィッ!」

私はリーダーの目の前にスライムをポンッと投げる。


インセクトスライム……虫に擬態して、仲間だと、もしくは餌だと思って寄ってきた矢小動物を捕食する生体を持つスライム。

人に対して害をなさないが、見た目が最悪でSAN値が削られる場合がある。


そのグロテスクな形をしたスライムが、目の前で牙を研ぐのを見て、リーダーは黙る。

……うん、静かになった。これでゆっくりと考え事が出来るね。


私は、さっきのリーダーの話を頭の中で整理してまとめてみる。


まず、イーリスたちを襲ってきたこの男たちは、イーリスの実兄である、ニア・コーザ・アイゼンブルグの手のモノらしい。

イーリスには、同じ母の子である実兄と母親違いの義兄がいるが、今回動いたのは実兄であるニアの方。

イーリスがお忍びで旅することを知ったニアは、街のチンピラや冒険者、果ては、自分の指揮下の兵を、イーリスへの刺客として送ってきた。

一応殺害までは考えていなかったらしいが、死んでも構わないとは思っていたらしい。

実の妹を殺そうとするなんてねぇ……。


同機は単純。イーリスが試練を受けると言い出したので、自分が伯爵位を継ぐ障害になると思ったらしい。

ニアは、アイゼンブルグ伯爵家の長男であり、余程の瑕疵がなければ次期アイゼンブルグ伯爵となる予定だった。

4年前に、試練も受けて合格しているし、何も問題はないはずだった。

しかし雲行きが怪しくなったのは、昨年、次男である、サン・ニイケ・アイゼンブルグが試練を果たしてからだった。

サンは、幼いころから聡明で、将来を有望視されていたのに対し、ニアは、人より少し力が強いこと以外は、何事にも凡庸なため、成長したサンと比べるものが出て来たらしい。


サンは、それでも「ニアを補佐する」という態度を崩さないでいたが、それが却って、ニアを支持する派とサンを擁立しようとする派の対立を煽ったという。

そして、ニアも、サンに対する警戒を強めていたところに、イーリスの試練を受ける宣言を聞く。

それがニアの目には、自分に対する敵対行動……ひいては、伯爵の座を狙っていると映ったんだろうね。


で、牽制行動として襲わせたというわけ……。まぁ、よくある話ではあるんだけどねぇ。狙われた方は堪ったもんじゃない、と。

でも、そんな事はどうでもいいのよ。問題なのは、「誰」が情報を漏らしたか?ってこと。


正直、襲ってきたこの人たちの事は、そのバックに何があろうと、ただの野盗として処理するつもりだったし、話を聞く必要も感じていなかった。

それなのにわざわざ話を聞いたのは、その『裏切り者』を特定する為だったりする。

そんなのが身内に居たんじゃ、今後に差しさわりがあるからね。



「……ってことで、裏切り者は、執事見習いのコーザラ、ってことなんだけど?」

どうする?と私は視線でマリアさんに尋ねる。

「まさか……彼が……。」

マリアさんは驚きを隠せないという表情でつぶやく。

彼女が言うには、コーザラという男は、イーリスの幼馴染であり、マリアさんも幼いころから知っている気安い関係なのだそうだ。

「彼は、正直に言えば、お嬢様に好意を寄せていますので……裏切るような真似をするとは……。」

マリアは信じられないといった様子で俯いてしまう。


「はぁ、イーリスの事を好いているからって言って、裏切らないって保証はないでしょうに。そもそも、そのコーザラってやつは、イーリス様を裏切っているって自覚がないかもね。」

リィズの言葉に、マリアがキョトンと首をかしげる。

「そゆことかぁ。……あのね、……。」

私はリィズの言葉の真意をマリアさんに伝える。


元々、イーリスが試練を受けることについて、積極的に賛同しているのはマリアさん一人であり、他の者達はあまりいい顔をしていなかった。

そもそも、伯爵家の娘ともあれば、政略結婚は当たり前のことであり、イーリスが試練を受ける受けない関わらず、先の事は決まっているようなものなので、試練なんてものに係るだけの時間と労力が無駄だと、大半のモノが考えていたからだ。


それに加えて、私達のような、()()()()()()()()()()()()重宝されるというのも面白くないというのが正直なところだろう。


そして、件のコーザラは、イーリスに惚れているというから、そのイーリスが私を頼りにしているという現状が面白くないのだろうという事は容易に想像がつく。

そんなところに、「イーリスがイーリシアに行くのを諦めさせればいい」などと囁かれたら?

「道中ちょっと脅すだけだから、イーリスに危険はない」などと言われれば、案外あっさりと情報を漏らすのでないだろうか?

道中、怪しいものに襲われる。一応護衛についている私達が倒され排除される。イーリスは怖い目に遭ったからと、もう二度と試練を受けるなどとは言わなくなる。ついでに昇進のイーリスを慰めて好感度アップ………そんな事を考えていたのではないだろうか?


ちょっと怖い目に合うけど、長い目で見ればこれもイーリスの為、なんて考えで情報を流したという事は大いに考えられる。


「……そうですね。その可能性は大いにありそうです。」

マリアさんは私の説明に納得する部分があるのか、大きく頷いてくれる。

「それでカナミ様、どうなさるおつもりで?」

「どうもしないよ?捕まえた野盗たちは、次のシキの街で衛兵に突き出すぐらいかな?」

「あの……コーザラの処分は?」

「うーん放っておけばいいんじゃない?下手に事を荒立てると面倒が起きそうだし。それに、元々イーリシアの屋敷では、今までの人を使うつもりはなかったしね。」

「どういう事でしょう?」

「うーん、あのね、……マリアさん、屋敷の人たちがリィズに対してどんな態度をとっていたか知ってる?」

「えぇ……まぁ……。」

「マイナちゃんへの事は?」

「それも……ごめんなさい。」

「あ、ううん。謝ってほしい訳じゃないの。ただね、アレがこの世界の普通なんだなぁって。でもね、私が考えているイーリシア発展計画には、そう言う常識は害にしかならないの。最低限、種族、身分に対する差別意識を無くしてもらわないと……せめて、仕事は仕事と割り切れる人じゃないとね。」


この話は、現地についてからゆっくりとしようと思ってたんだけどねぇ。ま、いっか。


「イーリスは、街を発展させるための手段として、塩の生成をあげた。でも、それだけで発展すると思う?」

「え? だめなの? 塩って“白い金”って呼ばれるくらい大事なんでしょ?だったら十分なんじゃぁ?」


「一部は間違ってないよ?でもね、塩だけに頼ると危ういのよ。例えば他の地域で大量生産されたら値崩れするし、塩しか売りがなければ、人が長く定着する理由にはならないよ?」


「なるほど……確かに、塩を作るだけの街じゃ、住みたいって思う人は少ないかも」


「そうそう。だから大事なのは“塩をきっかけに広げる”こと。塩を使った保存食や料理を発展させたり、交易路を整えたり、塩を求めて来る商人たちを受け入れる市場を作ったり……そうすれば街は自然に賑わっていく……のだけど……。」


「何か問題が?」


「そもそも、イーリスは塩の生成方法を知ってるのかな?塩だけじゃない。他の産業を発展させるための知識とか技術とかは?」


「そ、それは……知っている人を探す?」

イーリスが途端に視線を彷徨わせ始める。

どうやらそこまでは考えていないようだった。


「私もね、一応知識はあるけど、技術的にはどうしていいかわからないわ。だからイーリスの言うように、知っている人材の確保が必要なんだけど……アテはあるの?」

私の問い掛けに、イーリスは黙り込んでしまう。

でも、まぁ、ここまでは想定の範囲。だからこそ、私が考えていたプランが必要になる筈なのだ。


「うぅ……確かに、イーリシアには人はいなさそうですぅ。かといって王都で募集開けても……どうしたらいいんですかぁ。」

イーリスは、本日何度目かの涙目で縋ってくる。


「うん、だからね、亜人の技術者を探そうと思うの。」

「亜人!?」

私の言葉にイーリスが……そして、黙って私たちの会話を聞いていたマリアさんやリィズまでもが驚きの声をあげるのだった。







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