髪は長ーいお友達……というお話。
「クスクス……。お姉様とのお忍びデート♪」
「いや、デートじゃないからね?ってか、こんなデートやだよっ!」
私は目の前に迫る凶刃を、スラナイフで受け止め、弾き飛ばす。
背後で、いやんいやんと楽しそうにしているイーリスを庇いながらでも、これくらいなら対処できるくらいには、私も強くなっている……と言いたいところだけど、本当は全部アイテムとマリアさん、マイナちゃんの魔法のお陰だったりする。
イーリスを中心に、マリアさんの防御結界が張られ、更には、マイナの身体弱化の補助魔法が作動しているため、結界内では私達以外の者は普段より80%程能力が低下している。
そもそも、この結界内に入り込めるというだけで、かなりの強者の筈なんだけど、弱体化のお陰で、私でも対処できるぐらいまで弱くなっているから何とかなっているんだけど……。
今、私達は、敵の襲撃を受けている。
なのに、イーリスがなぜ余裕を見せているのかというと、この襲撃が初めてではないからだ。
まぁ、襲撃に慣れた……のかもしれない。
イーリスの試練に協力する事になって1週間が過ぎた。
あれからイーリスは、すぐに伯爵に手紙を出し、イーリシアを選んだこと、1か月後を目安にダイチの街を発ち現地へ向かうことなどを報告した。
手紙はすでに伯爵の元に着き、今は色々な手続きをしているに違いない。
その手続きがおえ、確認が取れたところで、私達は出発する……そういうことになっていた。
しかし、現実には私の意見で、先駆けて現地へ向かう事にする……しかもお忍びで。
だってね、「お姫様ですぅ、今日からここを統治しますぅ」って言っても、相手は戸惑うだけでしょ?
さらに言えば、色々隠していて協力的じゃないかもしれない。特に、問題が起きていること、都合の悪そうなことは隠そうとするに違いない。
だから、色々伝わる前に、実際の現地の様子を見ておけば、何か問題が起きていればすぐに分かるでしょ?
そう提案したのだが、イーリスも考えていたことなのか、すぐに乗ってきたのだ。
「ふふ~んッ、お姉様とお忍びでぇと♪」
……いや、「お忍び」と言うのに浮かれているだけかも?
まぁ、そんなわけで、お忍びで予定より、約1ヶ月ほど早く、イーリシアに向けて旅立ったってことなんだけど……。
旅に出て、今日は二日目。
街道から外れた途端、出てくるわ出てくるわ、野盗の皆様。
襲われるのは今回で4回目。そのすべてを簡単に蹴散らしてきたから、流石になれるよねぇ。
・
・
・
「カナミ、遅くなってごめんなさい。って、何やってるの?」
リィズが戻ってくるが、転がっている敵を踏みつけているイーリスの姿に、少し引いている。
「あ、ううん。こっちは大丈夫。それより、リィズの方は?怪我とかしてない?」
「うん、全員片付けた。向こうに埋めてあるけどどうする?」
「あー、どうしようか?」
私は、嬉々として、踏み付けを続けているイーリスに視線を向ける。
「えいっ!えいっ!お姉様との逢瀬を邪魔する奴は蹴られてもしょうがないのですよっ!……ん?どうかしました?」
私達の視線に気が付いたイーリスが、キョトンとした表情でこちらを見る。
「あ、ウン。向こうに何人か埋めてあるらしいけどどうする?」
「どうしましょうかぁ……。お水あげれば、芽が出て、葉が出て、花が咲くでしょうかぁ?」
「……お水あげなくても、めもはもはなも出てるけどねぇ。」
「めんどくさいから放置したいけどぉ?」
イーリスがチラッとマリアさんの方を見る。
「お嬢様、今は少しでもお金が必要なときです。ちゃんと回収しましょう。」
「だって。お姉様お願いできますか?」
「うーん、仕方がないかぁ。じゃぁリィズと一緒に行ってくるよ。」
私は、特別製の荷馬車と共に、リィズの案内で、野盗を埋めてある場所へと向かう。
うん、野盗の皆様だよ?
いくら、素人にはあり得ないくらいの見事な連携が取れていても、冒険者ギルド証らしきものを持っていたとしても、装備にお金がかかっていても、その装備にどこぞの貴族の紋章らしきものがあったとしても……野盗は野盗なのですよ。
その野盗の皆様に襲われ続けて、流石に飽きて来たからね、扱いがぞんざいになっても仕方がないと思うの。
「って聞いてる?」
私は、一番偉そうな態度をとっていた、野盗のリーダーに声をかける。
彼らは現在、リィズによって埋められていて、首から上だけが地面から出ている状態だ。
遠目で見れば、生首に話しかけている女の子に見えなくもない……非常にシュールな絵柄だと思う。
「くぅっ!……リトアニア条約に基づいた捕虜の正統なる扱いを要求する!」
「はぁ?野盗に対して捕虜という概念は適用されないんだよ?」
「違っ!我々は・・・・・・ぐふぁぁっ!」
何かを言いかけたリーダーの顔をリィズが蹴り飛ばす。
「野盗はカスだ、ゴミだ、汚物だ。汚物は消毒すべき!」
炎を吹き出す魔道具を手にしたリィズが、その噴射口を生首に向ける。
「ひぃっ!」
「まぁまぁ、リィズ、落ち着いて。」
私が止めると、リーダーの男が明らかにホッとした表情を見せる。
「さて、あなたは色々と知っていそうね?」
「話すと思っているのか?」
私はそんなリーダーに笑顔を向けるけど、相手の態度はつれない。
「うーん、きっとしゃべりたくなると思うよ?」
私はそう言いながら、腰に付けたポーチからあるスライムを取り出す。
「この娘はねぇ、人の体毛が大好物なの。肌に傷一つつけず、体毛だけを溶かして吸収するの。だから永久脱毛に使えないかと思って色々試しているんだけどねぇ……。」
この世界でも、女の子の美容に対する思い入れの深さには、怖いものがある。
だから美容関係で一儲けできると考えた。この『脱毛スライム』はそのうちの一つなんだけど……。
モモコに頼んで、このスライムを呼び寄せたのはいいのだけど、本当に効果があるのか、試す必要があったのね。
それで悩んでいたら、丁度マリアさんがいて、話を聞いたマリアさんが実験台になるって言いだしたのよ。
私は、流石に……と断ろうとしたんだけど、マリアさんもお年頃……相談しづらい悩みを抱えているのだとか。
それが、この『脱毛スライム』で解決できるかもしれない、と聞かされれば、断ることも出来ずに……ね?
因みに、マリアさんの悩みと言うのは……まぁ、簡単に言えば「ムダ毛処理」なんだけど、こっちの世界では、中々難易度が高いらしくてね。
で、イーリスがこれから向かうイーリシア地方は、そこそこに気温が高いらしく、普段着も、薄着で露出が高いと聞いているから、そりゃぁ、気になるよねぇ?
だから、気持ちはわかるので、脱毛スライムを貸したんだけどね。
結論から言えば、この脱毛スライムは完璧でした。
脱毛したい箇所にスライムを乗せるだけ。範囲や量にも拠るけど、大体1分から5分ぐらいで綺麗に脱毛。毛根迄溶かしてしまうので、二度と生えてこないから、定期的に繰り返して使用、なんてわずらわしさもない。……まぁ、一回の使用で終ってしまうのは「商品」としては微妙なんだけどね。
難点を言えば、スライムを肌に触れさせることへの抵抗感、ぐらいのモノだけど、マリアさんが言うには、慣れの問題だとか。
一度使用すればその後は気にならなくなるらしい。
まぁ、それは置いといて、マリアさんも無事ムダ毛の処理が出来てよかったよかった……と言えたらよかったんだけどねぇ。
マリアさんも、その効果に驚いてね、見えるところの処理だけで済ませばよかったのに、欲を出しちゃったのね。
何でも「ハイレグが……」とか呟いていたんだけどさぁ。
で、そのデリケートな場所の処理をしようとして……手を滑らせたらしく……。
…………まぁ、これ以上は「クスクス……。お姉様とのお忍びデート♪」
「いや、デートじゃないからね?ってか、こんなデートやだよっ!」
私は目の前に迫る凶刃を、スラナイフで受け止め、弾き飛ばす。
背後で、いやんいやんと楽しそうにしているイーリスを庇いながらでも、これくらいなら対処できるくらいには、私も強くなっている……と言いたいところだけど、本当は全部アイテムとマリアさん、マイナちゃんの魔法のお陰だったりする。
イーリスを中心に、マリアさんの防御結界が張られ、更には、マイナの身体弱化の補助魔法が作動しているため、結界内では私達以外の者は普段より80%程能力が低下している。
そもそも、この結界内に入り込めるというだけで、かなりの強者の筈なんだけど、弱体化のお陰で、私でも対処できるぐらいまで弱くなっているから何とかなっているんだけど……。
今、私達は、敵の襲撃を受けている。
なのに、イーリスがなぜ余裕を見せているのかというと、この襲撃が初めてではないからだ。
まぁ、襲撃に慣れた……のかもしれない。
イーリスの試練に協力する事になって1週間が過ぎた。
あれからイーリスは、すぐに伯爵に手紙を出し、イーリシアを選んだこと、1か月後を目安にダイチの街を発ち現地へ向かうことなどを報告した。
手紙はすでに伯爵の元に着き、今は色々な手続きをしているに違いない。
その手続きがおえ、確認が取れたところで、私達は出発する……そういうことになっていた。
しかし、現実には私の意見で、先駆けて現地へ向かう事にする……しかもお忍びで。
だってね、「お姫様ですぅ、今日からここを統治しますぅ」って言っても、相手は戸惑うだけでしょ?
さらに言えば、色々隠していて協力的じゃないかもしれない。特に、問題が起きていること、都合の悪そうなことは隠そうとするに違いない。
だから、色々伝わる前に、実際の現地の様子を見ておけば、何か問題が起きていればすぐに分かるでしょ?
そう提案したのだが、イーリスも考えていたことなのか、すぐに乗ってきたのだ。
「ふふ~んッ、お姉様とお忍びでぇと♪」
……いや、「お忍び」と言うのに浮かれているだけかも?
まぁ、そんなわけで、お忍びで予定より、約1ヶ月ほど早く、イーリシアに向けて旅立ったってことなんだけど……。
旅に出て、今日は二日目。
街道から外れた途端、出てくるわ出てくるわ、野盗の皆様。
襲われるのは今回で4回目。そのすべてを簡単に蹴散らしてきたから、流石になれるよねぇ。
・
・
・
「カナミ、遅くなってごめんなさい。って、何やってるの?」
リィズが戻ってくるが、転がっている敵を踏みつけているイーリスの姿に、少し引いている。
「あ、ううん。こっちは大丈夫。それより、リィズの方は?怪我とかしてない?」
「うん、全員片付けた。向こうに埋めてあるけどどうする?」
「あー、どうしようか?」
私は、嬉々として、踏み付けを続けているイーリスに視線を向ける。
「えいっ!えいっ!お姉様との逢瀬を邪魔する奴は蹴られてもしょうがないのですよっ!……ん?どうかしました?」
私達の視線に気が付いたイーリスが、キョトンとした表情でこちらを見る。
「あ、ウン。向こうに何人か埋めてあるらしいけどどうする?」
「どうしましょうかぁ……。お水あげれば、芽が出て、葉が出て、花が咲くでしょうかぁ?」
「……お水あげなくても、めもはもはなも出てるけどねぇ。」
「めんどくさいから放置したいけどぉ?」
イーリスがチラッとマリアさんの方を見る。
「お嬢様、今は少しでもお金が必要なときです。ちゃんと回収しましょう。」
「だって。お姉様お願いできますか?」
「うーん、仕方がないかぁ。じゃぁリィズと一緒に行ってくるよ。」
私は、特別製の荷馬車と共に、リィズの案内で、野盗を埋めてある場所へと向かう。
うん、野盗の皆様だよ?
いくら、素人にはあり得ないくらいの見事な連携が取れていても、冒険者ギルド証らしきものを持っていたとしても、装備にお金がかかっていても、その装備にどこぞの貴族の紋章らしきものがあったとしても……野盗は野盗なのですよ。
その野盗の皆様に襲われ続けて、流石に飽きて来たからね、扱いがぞんざいになっても仕方がないと思うの。
「って聞いてる?」
私は、一番偉そうな態度をとっていた、野盗のリーダーに声をかける。
彼らは現在、リィズによって埋められていて、首から上だけが地面から出ている状態だ。
遠目で見れば、生首に話しかけている女の子に見えなくもない……非常にシュールな絵柄だと思う。
「くぅっ!……リトアニア条約に基づいた捕虜の正統なる扱いを要求する!」
「はぁ?野盗に対して捕虜という概念は適用されないんだよ?」
「違っ!我々は・・・・・・ぐふぁぁっ!」
何かを言いかけたリーダーの顔をリィズが蹴り飛ばす。
「野盗はカスだ、ゴミだ、汚物だ。汚物は消毒すべき!」
炎を吹き出す魔道具を手にしたリィズが、その噴射口を生首に向ける。
「ひぃっ!」
「まぁまぁ、リィズ、落ち着いて。」
私が止めると、リーダーの男が明らかにホッとした表情を見せる。
「さて、あなたは色々と知っていそうね?」
「話すと思っているのか?」
私はそんなリーダーに笑顔を向けるけど、相手の態度はつれない。
「うーん、きっとしゃべりたくなると思うよ?」
私はそう言いながら、腰に付けたポーチからあるスライムを取り出す。
「この娘はねぇ、人の体毛が大好物なの。肌に傷一つつけず、体毛だけを溶かして吸収するの。だから永久脱毛に使えないかと思って色々試しているんだけどねぇ……。」
この世界でも、女の子の美容に対する思い入れの深さには、怖いものがある。
だから美容関係で一儲けできると考えた。この『脱毛スライム』はそのうちの一つなんだけど……。
モモコに頼んで、このスライムを呼び寄せたのはいいのだけど、本当に効果があるのか、試す必要があったのね。
それで悩んでいたら、丁度マリアさんがいて、話を聞いたマリアさんが実験台になるって言いだしたのよ。
私は、流石に……と断ろうとしたんだけど、マリアさんもお年頃……相談しづらい悩みを抱えているのだとか。
それが、この『脱毛スライム』で解決できるかもしれない、と聞かされれば、断ることも出来ずに……ね?
因みに、マリアさんの悩みと言うのは……まぁ、簡単に言えば「ムダ毛処理」なんだけど、こっちの世界では、中々難易度が高いらしくてね。
で、イーリスがこれから向かうイーリシア地方は、そこそこに気温が高いらしく、普段着も、薄着で露出が高いと聞いているから、そりゃぁ、気になるよねぇ?
だから、気持ちはわかるので、脱毛スライムを貸したんだけどね。
結論から言えば、この脱毛スライムは完璧でした。
脱毛したい箇所にスライムを乗せるだけ。範囲や量にも拠るけど、大体1分から5分ぐらいで綺麗に脱毛。毛根迄溶かしてしまうので、二度と生えてこないから、定期的に繰り返して使用、なんてわずらわしさもない。……まぁ、一回の使用で終ってしまうのは「商品」としては微妙なんだけどね。
難点を言えば、スライムを肌に触れさせることへの抵抗感、ぐらいのモノだけど、マリアさんが言うには、慣れの問題だとか。
一度使用すればその後は気にならなくなるらしい。
まぁ、それは置いといて、マリアさんも無事ムダ毛の処理が出来てよかったよかった……と言えたらよかったんだけどねぇ。
マリアさんも、その効果に驚いてね、見えるところの処理だけで済ませばよかったのに、欲を出しちゃったのね。
何でも「ハイレグが……」とか呟いていたんだけどさぁ。
で、そのデリケートな場所の処理をしようとして……手を滑らせたらしく……。
…………まぁ、これ以上はマリアさんの為にも察してほしい。
一つだけ言えることは、マリアさんは今後永久にパ……ひぃっ!
どこからともなく殺気が飛んできたよ……。
怖いからこの話題はお終い。
で、まぁ、何が言いたいかって言うと……。
私は、その脱毛スライムを、リーダーさんの頭の上に置き、その特性を説明してあげる。
「髪の毛、残っているうちに、全部話した方がいいと思うけど?」
私はにっこりと微笑んでそう言ってあげる。
「くそぉっ、この悪魔ぁぁぁっ!!」
男の叫びが、森中に響き渡った。
お坊さんとかには重宝されそうなスライムですよねぇ。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。
 




