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いきなり召喚! ふざけんなぁッ!!

某日某所にて……。


「「ごめんなさいっ!」」

ミシェイアとアスティアは、ミルファースの前で土下座をしていた。

箱庭宇宙の管理でミスをしてしまったのだ……それも、今回は絶対にしてはいけないと言われていたことを……。

「はぁ……よりによってカナタユニットを……ねぇ……。」

ミルファースは大きなため息を吐く。

この時点で、この箱庭宇宙(リトルコスモス)は失敗に終わったとミルファースは諦める。

それでも、せめて……。


「はぁ、仕方がないですね。この案件はあなた達に任せます。出来るだけ当初の結果に近づける努力をしてみなさい。

……まぁ、難しいでしょうが……とミルファースは心の中でつぶやく。

それでも、()()さえ動かさなければ、まだ……。

その時、ミルファースの思考を遮るように、甲高い悲鳴が聞こえてくる。


「どうしたの、ミィル?」

「あ、ミル姉様、あのユニットがぁ……。」

ミィルがミルファースの姿を認めると、飛びついてくる。

「ミィル、落ち着いて。あのユニットってまさか……。」

「そのまさかですぅ!あのワイルドカードのカナミユニットが、どこかに……」

……まさか……ね。

ミルファースは、ミシェイアたちがやらかした箱庭宇宙のログを確認する。

「……ミィル、カナミユニットが見つかったわ。」

ミルファースはそう言いながら、箱庭宇宙を指さす。

ミィルはそれを確認し、近くで小さくなっているミシェイアとアスティアを睨みつける。

「……犯人はお前らかぁっ!」

「「ひぃっ!」」

「ミィル。お仕置きは後。管理はその二人に任せるにしても、とりあえず初期設定を調整しないと。」

「そうですね……カナミユニットとの相性が悪い世界に……って、これ以上はむりぃっ!」

泣きながら調整をするミィルと、苦笑しながらも、その作業スピードを落とさないミルファースを見ながら、ミシェイアとアスティアは、ますます小さくなるのだった。




◇-◇-◇‐◇*◇-◇-◇‐◇*◇-◇-◇‐◇


 プロローグ 異世界召喚??


◇-◇-◇‐◇*◇-◇-◇‐◇*◇-◇-◇‐◇



大好きな先輩がいなくなった……。


トラックに跳ねられたと聞いた……。


私に告白したその日に……。


センパイのバカ……言い逃げなんてズルいよ……。


せめて、答えを聞いてほしかったよ……。



「カナ……大丈夫?」

隣の席の鈴音が声をかけてくる。


「うん、大丈夫だよ。」

そう答えると、鈴音はほっとした様に微笑む。


「ならいいけど……カナまで元気なくしたら、私……。」

「大丈夫、大丈夫。」

私は鈴音をギュッと抱きしめる。

自分だってお兄さんを無くしたばかりで悲しいはずなのに、こうして人の心配をしてくれる……本当に優しい子なのだ。


「鈴音の方こそ……何ならキスしてあげよっか?」

「ば、バカッ!」

顔を真っ赤にして飛び退く鈴音。この手の冗談には弱いのをよく知っている。


……まぁ、鈴音相手なら冗談じゃなくキスしてもいいかとも思っているけど。

私にとっては、それだけ特別な存在なのだ。鈴音と、その兄である彼方センパイは……。


「そう言えば、カナは訊いた?」

「あ、ウン、あのバカげた噂だよね?」

彼方センパイは、「異世界に転生」したのだと、バカげたことを言っているのは、3年のラノベ同好会の人達。

アイツらはラノベの読み過ぎで、脳みそが発酵しているに違いない。


「本当に……にぃにをバカにして……」

鈴音がこぶしを握り締める。

「鈴にゃん、落ち着いて。」

私はそんな鈴音を背中から抱きしめて宥める。

あのバカどもは今度シメてやろうと思いながら。


「異世界転生なんてあるわけないよね。そんなのがあるなら、私をセンパイのいる世界に転生させてよ……。」

「そうだね……。」

私の呟きに、鈴音がそう答える。



ホント、センパイに会えるなら異世界でもどこでも行きたいよ……



「……って、確かにそう言ったけどさぁッ!」

私は粗末な作りの部屋のベッドから身を起こして叫ぶ。


出来の悪いログハウスの様な壁。いかにも手作りといった感じの机と、ベッド。

木綿のざらっとした肌触りのシーツ……うん、私の部屋じゃないのは分かる。


ベッドから起き上がる……って私下着!?

裸じゃないだけましだけど……。

キョロキョロとみまわすと、壁にかかっている服を見つける。


……うん、他に着るものないし。

私はその服……ワンピースを身に着ける。

布が良くないのか、あまり肌触りがいいとは言えないが、他にないし、この際、贅沢は言えない。

他に何かないか、部屋の中を物色していると、ガチャッと扉が開く。


「あ、目覚めたのね。よかったぁ。」

人のよさそうな笑顔を振りまく少女……誰?

「あ、自己紹介してないよね?私コミィ。森で倒れているあなたをここまで運んできたんだよ。」

「そうなの?ありがとう……っていうべきなのかな?っていうか、ここはどこなの?」

ここで「始まりの村」なんて言ったら暴れるぞコノヤロウ……


「ここ?ここはマリーの村だよ?」

……ほっ、よかった。


「ところで、カナミ。目が覚めたなら村長さんのところに挨拶に行きたいんだけど、大丈夫?」

コミィの言葉に違和感を覚えたけど……まいっか。

「うん、大丈夫だよ。」

私はコミィの後についていく。


「おぉ、お目覚めになられましたか。カナミ殿。ささ、こちらへ。」

そう言ってなぜか上座へ案内される。目の前にはおいしそうな料理が……。


くぅ……。


料理を見た途端、お腹が……。

私は顔を赤くしながらお腹を押さえる。


「ははっ、どうぞ召し上がってくだされ。話は食事の後にでも……。」

「あ、すみません……いただきます。」

折角なのでご飯を頂くことにする。


……おいしい……と言いたいけど、少し微妙。

決して不味くはないんだけどね。味付けが……ね。

なんて言えばいいかなぁ……。そう、海外産のクッキー。あの微妙な何とも言えない味が一番感覚が近いかなぁ。勿論好きな人は好きなんだろうし、気にしない人も多いんだろうけどね。


それに……。


「どうしたんだい、カナミ。あ、コッチのもおいしいよ。」

「いやいやカナミにはこっちのを食べてほしいぜ。」

「カナミ、飲んでるか?」



なぜか男が近くにいる……はっきり言ってウザい。

「あのぉ……。」


「ン?何だい?」

「カナミ、なにか?」

「何でも言ってくれ。酒か?今取り寄せて……。」


「ウザいっ!これ以上食事を不味くしないでっ!」

私ははっきりと言ってやる。うん、私はNoと言える日本人なのだ。


男たちは一瞬たじろいだようだが、こそこそと何か話し合い、そのまま部屋を出ていった。


「ふぅ……。」

私は食事をつづける……と言っても、あまり好みの味じゃないので、デザートに手を付ける。

見た目はライチのような感じ、皮を割ると、これまたライチのような白い実が顔を出す。

味は……


パクッとその身を一口齧る。


・・・・・・・・・・・・・・。


うん、見た目に引っ張られるとダメだね。

不味くはなかった。というか、出された料理の中では一番まともだと思える。


味は、何というか、イチゴと桃を足して2で割った感じ。

見た目がライチだから、ライチだと思って齧ると違和感バリバリなのだが、目をつぶって、純粋に味だけを堪能すれば、適度な甘酸っぱさと豊富な水分が口の中に広がり、味覚をいい感じに刺激してくる。

うん、これはいけるね。


「お姉さまはこれがお好きですか?私もなのですよ。」

気づいたら、8~12歳ぐらいの少女3人に囲まれていた。


一人が必死に話しかけ、一人は、そのライチに似た果物の皮をむき、一人が、その果実を私の口へと運ぶ……。


うーん、なんだろうね、これは。


まぁ、さっきの男たちみたいにウザくないからいいか。

私はその三人の少女にお世話をされながら食事を進めるのだった。



「食事はいかがでしたかな?」

食後、私は村長とコミィの3人で顔を合わせていた。


「え、ま、まぁ……オイシカッタデスヨ。」

うん、不味くはなかったからね。


「ところで、勇者カナミ殿にお願いがあるのじゃが。」


「は?」

思わず素で返してしまう。

勇者ってなんの事よ?


「最近、恵の森に現れたバーサクベアを退治してほしいのじゃ。」

しかし村長は私の戸惑いなど関係なく要求を突き付けてきた。


「はぁ、だからちょっと待ってよっ!」


「なになに、勇者殿ならバーサクベアなんぞ、片手でちょちょいのチョイじゃろう?」


「だから待ってってばっ!その()()って何のことよっ!」


「ほっほっほ……隠さなくてもよいのじゃよ、勇者カナミ殿。」


「だからぁ、私は勇者じゃないってばっ!」

私がそう怒鳴り立ち上がろうとすると、コミィがその袖を引っ張る。


「カナミ様、わが村にはこんな神託が伝わっているのです」

コミィはそう言うと、その神託を口ずさむ


『魔王現れ、国が乱れし時、始まりの村の北東、恵みの森に、異世界の日本という国より、救いの主

カナミが現れる。そのもの勇者なり。』


……なに、そのピンポイントな神託。


そして、その神託を聞いて、違和感の正体に気づく。

コミィも村長も私の名前を知っていた……自己紹介もしていないのに……。


「な、なんの事かなぁ……私の名前はカナみんだよ?」

「……そうですか。」

コミィの私を見る目が冷たい……。


「ところでカナミ様、つかぬ事をお伺いしますが「ガクエンセイカツ」は楽しいでしょうか?」


なんでいきなり?

そうは思ったが、一応答える。


「ま、まぁ、楽しいって言えばたのしいかな?」


「そうですか。「クラブカツドウ」などもされておられるとか?」


「誰よそんなこと言ったの。私は帰宅部よ。クラブには入っていないわ。」


「そうですか。「ガクエンガエリニハンバーガーヲタベル」のが楽しいとか。」


「ハンバーガーだけじゃなくドーナッツもいいけどね。なんなら今度一緒に……。」

そこまで言って私ははっと我に返る。

余りにも自然な会話だったのでつい答えてしまったけど……。


「お気づきになられたようですね。そう「ガクエン」とか「クラブ」とか「ハンバーガー」などという言葉は私達には未知のモノです。今度詳しく教えていただけると嬉しいですわ、カナミ様。」


……やられた。

この世界で未知のモノに対して、あれだけ流暢に応えるという事は、未知のモノが未知でないという証拠に他ならない。


「で、でも……勇者って言われたって、知らないわよそんなの。」

私が必死に抗弁すると、いままでだまっていた村長が口を開く。


「カナミ殿はイチモの実が気に入った様子でしたなぁ。」

イチモの実?……あぁ、あのライチに似たやつ?


「先ほどの食事の際には30個も召し上がっておられて……。」

……だから何よ。何が言いたいの?


「最近バーサクベアのせいで、イチモの実が手に入らなくなっておりましてなぁ。先ほどのでもう最後なのじゃよ。村の者もイチモの実は大好きなものも多いのじゃが、勇者様に食べていただけるなら、と、とっておきのモノを出してもらったのじゃ。……買うと一粒50Gはするので、もう口にできないかと思うと……よよよ……。」


……なにが、よよよ……だ。爺さんがしたって気色悪いだけでしょうがっ!


……ま、要は、勇者じゃない、バーサクベアを倒さない、というなら歓待した料理の金を払えってことね……ボッタクリバーかッ!!


「はぁ……分かったわよっ!」


こうして、訳が分からないまま、バーサクベアなどという、見たことも聞いたこともない化け物退治をすることになったのでした。



新作です。

古典RPGのテンプレを踏襲するつもりなのですが、早くも怪しげな雲行きに……。


ちなみに、カナミが今現在いる村の正式名称は「ハジ・マリーの村」ですw



ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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