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爪のように、心は再生する

作者: ごはん

彼女は窓辺に座って、指先を見つめていた。


少し前、無理に剥がしたネイルの跡がまだ残っている。

ところどころ薄く、ところどころガタガタで、触れると少しだけヒリついた。

けれど、その痛みは、どこか安心できるものだった。


「私の心も、こんな感じかもしれないな」と、ふと思った。


一見整っていたけれど、無理をしていた。

色を塗って、光らせて、何かを隠して――

でもある日、それが剥がれた。いや、自分で剥がしたのかもしれない。


そのあとは、ヒリヒリした。

風が吹くだけで沁みたし、何も触れたくない日もあった。

それでも、日々は少しずつ過ぎていった。


気づけば、爪の表面は前よりも平らになっていた。

完全ではない。けれど確かに、**「何かが育ち直している感覚」**があった。


何度も剥がれて、整って、また剥がれて――

その繰り返しの中で、彼女の心も、静かに再生を始めていた。


「もう、塗らなくてもいいかな」

そう思ったとき、彼女はふと笑った。


それは、何かを隠すための笑顔じゃなかった。

何も塗られていない、むき出しの爪のように、

ただそこにあるだけの、静かで強い存在としての笑顔だった。


外から見える変化は、ほんのわずかかもしれない。

でも、彼女の内側では、今日も確かに、

新しい心が、少しずつ伸びていた。


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