第5章 愛は世界を変える!
掟を変えるかどうかの議論する間、茜たちは議場の外で待つしかなかった。
茜は落ち着かない。
「もし掟が変わらなかったら……悠斗、どうしよう」
彼は彼女の手を握り、言い含めるように言った。
「茜、俺たちは鬼門を止めたんだ。長老だって、俺たちの気持ちを無視できないよ。一緒に信じて待とう」
議論は数時間に及んだ。
議場に再び招かれた茜たちの前に、焔牙が姿を現した。
「評議会の結論が出た。茜、悠斗、お前達の愛は鬼門を封じ、両世界の均衡を守った。これは鬼界の歴史に刻まれる偉業だ。よって、掟を以下のように改める――」
焔牙の声が議場に響く。
「鬼と人間は互いの心を認め、愛し合うことを許す。鬼界と人間界は交流を深め、新たな時代を築く。茜、汝を両世界の『大使』に任命する」
議場に歓声が上がった。
茜は目を丸くして、飛び跳ねた。
「やった! 悠斗、掟が変わった! 私たち、一緒にいられるよ!」
叫んだ勢いのまま、悠斗に抱きつき涙を零した。
悠斗は笑いながら彼女を抱き返した。
「茜、ほんと……お前らしい結末だな」
蒼は静かに微笑んでいた。
長老たちも、焔牙を除いてほのかな笑みを浮かべる。
「茜、鬼界の誇りを忘れるなよ。人間との絆を、新たな力に変えるのだ」
「任せなよ、焔牙の長老! 鬼界も人間界も、もっと楽しくするぜ!」
茜は鬼界と人間界を行き来する「大使」に任命された。
悠斗の恋人として、新生活もまた始まった。
美咲は幸せそうに過ごす2人を見て、「次は私の恋よ!」と意気込んでいる。
蒼は茜を見守りつつ、鬼界の戦士として修行の旅に出ることを決めた。もっと強くなりたいと願って。
「悠斗! 次は鬼界で鬼ごっこデートするぞ! 負けたら罰ゲームだからな!」
茜の声はお台場のジョイポリスに響いた。
「ははは、茜らしいな。でも、俺も負けないぞ」
室内ジェットコースターに身体を左右に揺らされながら、2人は手を重ね合わせた。
茜の角は髪飾りがないままだった。堂々としていれば、見ている人はコスプレと勝手に勘違いしてくれる。
悠斗はそれを愛おしそうに見つめるのであった。
茜は心の中で呟く。
「母ちゃん、恋って……最高だな!」