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異世界猫

猫ギルドのギルマス、猫を虐待していると追放されたが、今更帰って来いと言われても、もう遅いを猫から見た感じの話

作者: 山田 勝

 ☆☆☆ドリルの街



「シャアアアアーーーーーー」

「ウニャー!」


 オイラは猫ちゃんだぜ。猫ギルドの期待のエース、トラ将軍だ。


 最近の若い猫は、なってない。

 ネズミを捕るのに、『シャアア』だの、やるんか?ステップを使っている。


「ニ゛ァ」(みておけ)

「「「ニャン」」」(親分)


 ほほ、子犬ぐらいの大きさのネズミだ。


「チュー!」


 ゆっくり、近づいて、全体を見る。

 お、逃げるな。


 スッ~


 バッ!


 捕まえたぜ。


「「「ニャー!ニャー!」」」(スゲー!スゲー!)

「ニ゛ァ、ニ゛ァー」(演練せよ。やる)



 狩りを出来ないママにお裾分けをしに行っても、大きな猫は、ネズミを食べないと気がついた10回目の春の日、オイラは、絶望したぜ。

 多分、傷つけないように、捨てていたな。


 さあ、抱っこされにいくか?


 おろ?ママが、取り囲まれている。


「ジェニー!追放する。このドリルの街に、猫を虐待する者はいらない。猫を置いて、出て行け!」


「フフフフ、私が、貴方の猫ちゃんの世話を引き受けます」


「あ、貴方は・・・」


「転移聖女の緑よ。この領都を、猫ちゃんに優しい街にします。猫ギルドで、猫を働かせるなんて、動物虐待ですわ」




 ・・・何だ。ママが虐められている。オイラたちは、定期的にあちこちに行って、ネズミの狩りをしているのだ。



「そ、そんな」


「猫ちゃんには、街でゆっくり過ごしてもらいます。今まで、貴方のギルドに払っていたお金を財源にあてますわ」




 ・・・・・



 猫ギルドで、ママが、オイラたちに、お別れをしたぜ。


「・・・今まで、有難うございました。これからは、街で、ゆっくり過ごせるそうですわ。皆様、お達者で・・」


「「「ニャー!ニャー!ニャー!」」」

「「「ミャー!ミャー!」」」



 俺たちの腹は決まっている。猫集会で決まった。

 オイラ達のご師匠、モフ爺以外は、ママについて行くぜ。


 もう、老齢で、この街の馴染みの魚屋で、天寿を全うしたいと言っていたぜ。


「ミャー、ミャー」(お前達、ママをよろしくな)


「「「ミャン!ニャー!」」」(はい!モフ爺)



「「「「ニャー!ニャー!」」」(ママについて行くぜ)


「皆様・・・こんなに沢山・・・ダメよ」


「ニ゛ャ!ミャン、ミャー!」(数は力だよ。ママ!)




 ドリルの街の猫は、モフ爺だけになった。

 長毛種の18歳になる猫だ。



「ヒィ、何で、こんな、毛で目が隠れるような猫一匹!これじゃ、猫が沢山いる街、観光で呼べないじゃない」


「まあ、よい。これで、猫に支払う金をカット出来たぞ」




 ・・・・・



 その後、オイラ達は、行く先々で、仕事をした。


「すまない。ネズミが増えた。一週間だけいてくれ」


「分かりました。猫ギルドです。料金は頂きます」



「「「ウミャー!」」」(任せろ。ママ)



 オイラたちは、農場や、酒造所を回り。ネズミ狩りで、ママの仕事に協力したぜ。


「チュー!」


 バシ!


 しかし、ネズミ多くないか?

 猫、少なくないか?

 地元の猫と話をした。


(すまねえ。ブクブクの)

(おう、しかし、ここは5猫だけか?)

(急に、ネズミが多くなって、俺たちだけじゃ対処できないんだ。狩りを知っているのは、俺だけだ)



 中には、のれん分けで、農場に住み着ついたりもした。



「ブチちゃんと、10猫、ここで、暮らしてもらいたいと?」


「ああ、頼む。お金を出す・・・」


「お金はいりません。これは、養子です。猫ちゃんとの信頼関係を構築した方に、養子に出しますわ。

 いいですか?しばらく、私が監視します。ご飯は必ずあげること、ネズミだけでは、猫ちゃんの栄養は足りません・・」


「分かった。さあ、ブチよ。よろしく」



 ほお、さすが、ママだ。オイラがボス猫だから、くすぶっているとっぽい若手に独立させる。


 しかし、ママの側近は、俺だぜ!


「ニ゛ァ」



 こうして、猫ギルドの仕事をしながら、各地を転々し、


 狩りの出来ないママのために、狩りとかをして、


「まあ、トラ、鳥を、すごいわ」



 褒められたり。抱っこされたり。



 時々、ドリルの街に残ったモフ爺と通信する。


 ジィーーーーー



「まあ、トラ、何もない空間をみつめて・・・」



 猫テレパシーだ。


 案の定、猫がいなくなって、ネズミが増えているそうだ。

 モフ爺は、魚屋に養子になっているそうだ。

 猫を集めようにも、どこも、猫は貴重で、養子に出さないそうだ。

 ざまぁか?



 ・・・猫、日本の戦国時代、京の都では、猫は室内で、綱をつけて、暮らしていたそうだ。

 時の為政者は、猫を放し飼いにして、ネズミを捕らえさせよと、法令を出したぐらいだ。


 また、中世ヨーロッパでは、魔女狩りの余波で、猫は狩られ、ペスト大流行の一つの要因になったことも事実である。



 転移聖女緑は、自分の狭い視野で、ジェニーが猫を虐待していると判断した。



 ‘’もう、最後の通信じゃ。皆によろしくな’’


 モフ爺、元気でな。



 更に、オイラたちは放浪を続けた。



 森での出来事だ。

 兵士たちが、魚や鶏肉を掲げて、奇妙な行動を取っていた。



「猫殿、お魚でございます!」

「猫殿、鶏肉でございます」

「「「どうか、姿を見せて下さい!」」」


 荷台にオイラ達は載っている。籠の中だ。逃げられない。ママはすぐに見つかった。


「おお、猫殿をつれた娘がいるぞ!」

「荷台に猫殿が沢山おられる」


「ヒィ、貴方たちはなんですか?」



 ・・・話を聞くと、奴らの街に、ネズミが大発生をした。

 猫にネズミをとってもらおうにも、その都市の猫は、狩りを知らない。

 失伝をした。

 ネズミを怖がる猫もいるそうだ。


 だから、森の中、狩りで暮らしているワイルドな野生の猫をスカウトに来たそうだ。



「ええ、まあ、お仕事なら行きます」


「「「有難い!」」」




 ☆ルルドの街



「「「チュー!チュー!」」」


 おお、ドブネズミが沢山いるぜ。



「あのネズミです。子犬ほどの大きさがあります」


「犬に追わせようにも、すぐに、溝に隠れます」

「まあ、トラにやらせるわ。トラ、お願い」


「ニ゛ァ、ニャン!」(任せな。抱っこよろ!)



「ニ゛ァー」(鑑定)


 目が光るぜ。オイラの予想が正しければ、あれは、魔法ネズミだ。


 お、あいつも気がついたな。


「ニ゛ァー! ニ゛ァー!」(スキル!威圧!)


 ピカッ!


 目が光ったぜ。


「チュー!チュー!」(スキル、逃走!)


 させるかよ。


 オイラは、モフ爺から教わった自然体の狩りを披露した。


 まるで、トイレに行くように、近づいて、猫パンチからの~


 バチン!


 首筋をカプッだ。


 カプッ!


「チュー!チュー!」



「「「「オオオオオーーーーー」」」」

「あの猫殿、剣の達人みたいだ」

「一秒・・・たってないよな」



 オイラ達は、街で大歓迎され、ママは、この街で猫ギルドを開業した。




 ☆5年後


 気がつけばモフ爺と同じ年齢になったぜ。

 ママは、この街の領主の息子と結婚をした。



「トラちゃん。一緒に、寝るの~」


「まあ、マーシー、トラはお年寄猫よ。静かにさせてあげなさい」


「ニ゛ァ」(大丈夫だぜ)


「まあ、くれぐれも、トラに負担をかけないでね」


「は~い。トラちゃん、大好き!」


 寝台で、熱くガシ!と抱かれたぜ。

 将来が楽しみだ。


 オイラの妹だ。

 そのまま眠りについたな。



 ピカッ!


 スキル悪霊退散だ。


 この子についていた黒い影を追い払うぜ。


 オイラの全生命力を使えば、いける。

 これさえしのげれば、レディになれるぜ。



「ニ゛――ニァン!ニャー!」(我が猫生に、一片の悔いはなし!)


 ピカッ!


 最期のニャンニャンビームだぜ!




 ・・・・・



「まあ、ドリルの街が・・・」

「ああ、魚屋以外は、全滅だ。病気が大流行した。聖女殿の個別対応も間に合わなかった。根本的な解決策は、君の猫ギルドだった。

 その魚屋がこの都市にたどり着いたのだ。君が追放された街だったな」


「まあ・・・」


「お父様、お母様!お母様!トラちゃんが、トラちゃんが、グスン!グスン!」


「え、そ・・そんな」

「あの英雄殿が・・」


 トラ、享年18歳であった。英雄として、街葬が行われた。

 その顔は、晴れ晴れとした猫相だったと皆が、お別れをした。





最後までお読み頂き有難うございました。


信じてもらえないと思いますが、野生の猫を見たことがあります。人家のない管理釣り場です。

筋骨隆々で、前足の間に、筋肉がついているようでした。


猫パンチで、トラウトをしとめ。くわえて、草むらに消えて行きました。

当たり前の話ですが、小型の肉食獣なんですね。

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[良い点] 面白かったです [気になる点] ママは何者? すっごく気になりました [一言] 富岡製糸場には猫を祀った祠があったんですよ NEWリアルで撤去されましたけどね 明治からの代表的な産業であ…
[良い点] トラ男前でかっこいい [気になる点] 捨てずにハンバーガー屋に卸していた可能性も? [一言] ルドルフとイッパイアッテナで育ったので賢いネコ大好きです 流れ星銀牙で育ったので必殺技使うネコ…
[良い点] 自分の行先を自分で決めているのが猫らしいなぁ、と。 人間とこんだけ一緒にいるのに家畜化されてないそうですからね、猫。 格好よかったです。 [一言] 猫の視点からの人間はどんくさデカ猫らしい…
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