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第8話 461さん、迷いの森のボスに挑む 【配信回】


 扉の奥は一際広い空間だった。木々に囲まれた草原。それが抱いた印象。その視線の先に黒い影が見えた。木の上に止まったデカいカラス(・・・)のようなシルエットが。



〈さーてボスは何かな〜?〉

〈代々木のボスと言えばグロウムクロウ。雑魚ガラス達の親玉:wotaku〉

〈コメにID晒してるヤツがいるwww〉

〈そんなの初めて見たw〉

〈ダンジョン配信大好きのウォタクさんやぞ〉

〈ウォタクさん来てんのかぁ〉

〈ウォタクくん見てる〜?w〉

〈461さん気になったから来た:wotaku〉

〈この返しよw真面目かwww〉

〈グロウムクロウはモルデンクロウのデカい版:wotaku〉

〈弱そうw〉

〈無双期待〉


「あれが……グロウムクロウっていうボス? コメントで言ってる人がいるわ」


 アイルが木の上に止まるボスを指す。


 グロウムクロウ……?


 何かが違う。モルデンクロウを巨大化させただけのグロウムクロウとは何かが。


 やがて霧が晴れ、その全容が見える。その鳥型モンスターは想像の1.5倍ほどの大きさを持っていた。



「いや、アレは……違うぞ」



「キュアアアアアアアアアァァァァァァァ!!」



〈!!?!?!?!?〉

〈え、グロウムクロウってこんなに怖えの?〉

〈デケェ!?〉

〈ウォタクくん知ってるぅ〜?〉

〈ペラゴルニス……Bランク探索者が何人も殺されてるヤツだ:wotaku〉

〈マジ!?〉

〈東京では見たこと無い:wotaku〉

〈ヤバすぎでしょ〉

〈アイルちゃん死なないでぇ〉

〈初見の461さんビビり散らしてるやろなぁw〉



 巨大な黒鳥が翼を開く。その両翼のサイズは7メートルは超えている。カラスとは違う歯の生えた黄色い(・・・・)クチバシに意思疎通の取れなさそうな瞳……これはアイツだな。



「黒鳥ペラゴルニス。グロウムクロウより格上のボスだな」


〈!!!?!??〉

〈なんで知ってる……?:wotaku〉

〈盛り上がってきましたw〉

〈攻略行けそう!?〉


「なんでそんなのがいるのよ!?」


「ここに到着するまでにモンスターの死骸が転がってたろ? ダンジョン内の生態系が変わったんだろきっと」


「そ、そんなことって……」


「群馬のダンジョンは実際変わったしな」


〈群馬www〉

〈やはりグンマー。我らの先を言っていたか〉

〈群馬ってそんなことになってたのかw〉

〈モンスター進化してるとか聞いたことない〉

〈群馬のダンジョンか……:wotaku〉



「キュアアアアアアアアアァァ!!」



 ペラゴルニスが俺達に気付く。その瞬間、アイルがガタガタと震え始めた。


「ひ……っ!? あんなのどうやって倒すのよ? ドラゴンゾンビより強そうじゃない」


「強いぜ実際」


「!? ヨロイさんは……怖くないの?」


 怖いかぁ。確かに初めて戦った(・・・・・・)時は怖かったよなぁ。



 だけど今は……。



 むしろ燃える。



「ふふふ……強敵との死闘。ダンジョン探索者冥利につきるじゃんか」



〈461さんwww〉

〈笑ってるw〉

〈おかしくなった?〉

〈普段から鎧着てるヤツがまともなはず無い〉

〈あーあ〉

〈今回こそ終わったわ〉

〈ボス来た瞬間終わったわwww〉

〈また懐かしいものをw〉


「気合い入れろよアイル。家に帰るまでがダンジョン探索だぜ?」


 腰のナイフを掴む。


 あの位置。あの威嚇(いかく)。全部覚えてるぜ。



 なら最初の攻撃は……。



 ペラゴルニスが羽ばたき、こちらへと滑空してくる。


「アイルは離れて魔力を貯めろ。合図したら電撃魔法ライトニング撃て」


「わ、分かったわ!」


 二手に分かれようとしたタイミングを見計らったかのように、アイルへと狙いを定めた。



「キュァァァァァァァ──っ!!」



〈アイルちゃん危ない!〉

〈アイルちゃん狙われてる!?〉

〈アイルちゃん逃げてぇええ!?〉

〈ちょ!? なんとかしろって!〉



「オラァッ!」



 腰からナイフを引き抜き、ペラゴルニスへ投げ付ける。その刀身が、黒鳥の右目に深々と突き刺さった。



「キュア゛ッ!?」



「お前の相手は俺だぜ!」



「ギュウウウアアアアア!!!」



 ペラゴルニスが俺へと狙いを定める。


 左右の強靭(きょうじん)な脚で俺を狙う。それをローリングで回避し、引き抜いたショートソードで右脚を攻撃する。


「ギャアッ!?」


〈近い!?〉

〈461さんインファイト好きよなw〉

〈でもやっぱ地味www〉

〈あれ?ドラゴゾンビより弱くね?〉

〈461さん嘘ついた?〉



「ギャアウウウウ………ッ!!」



 黒鳥がその翼に魔力を集める。翼の周囲の大気が震え、広場を取り囲む木々がザワザワと揺れた。



 あ、これヤベェヤツだな。



「伏せろアイル!!!」


「え? え?」


「早く!!」


 叫ぶのと同時に大地へと飛び込む。それを真似するようにアイルも地面へと伏せた。



「ギャアウッ!!!」



 ペラゴルニスが翼を薙ぎ払う。



 次の瞬間。



 頭上に真空の刃が放たれ、何十という木々を切り裂いてしまう。バキバキという音と共に周囲の木々が倒れていく。



「な、何よこれえええええ!?」



〈ヤベェエエエエエエ!!!?〉

〈誰だよ弱いなんて言ったの!?〉

〈ごベぇぇぇぇん゛〉

〈お前船降りろ〉

〈当たったら一撃……っ!?〉

〈どうなってんのウォタクく〜ん!〉

〈ペラゴルニスは風の上級魔法「ストームブレイド」を使う:wotaku〉

〈早く言えよ!〉



「ギャウギャウギャウッ!!」



「うおっ!?」


 鋭い牙の生えたクチバシから放たれる連続攻撃。それを転がって(かわ)しながら(すき)(うかが)う。


「ギャウ!!」


 クチバシが真っ直ぐ俺を(とら)える。


 この速度……避けられないな。


〈逝ったあああああ!!〉

〈これはダメだろ〉

〈おぉ461さん。死んでしまうとは情けないw〉

〈アンチ沸いてる〉


 けど、この攻撃も経験済み(・・・・)だ。


 ショートソードでペラゴルニスの一撃をいなす。ヤツのクチバシが地面に深々と刺さった瞬間、体勢を立て直し、その背中へと飛び乗った。


〈はぁ!!?!?!??〉

〈なんで避けられるん!?〉

〈なんか登ってるしw〉

〈振り落とされるでしょww〉



「ウオオオオオオ!!」



 ショートソードを振りかぶり、全力でペラゴルニスの胴体へと突き刺す。



「ギャアアアアァァァァァァァ!!!?!?」



「あっぶね!」



 暴れ回るペラゴルニスにしがみ付き、アイルへと目を向ける。彼女は既に起き上がり、杖をペラゴルニスへと向けていた。脚はガタガタと震え、目は涙目だったが。


 一瞬アイルと目が合う。彼女は俺の合図を待つように真っ直ぐ俺を見つめていた。


 思わず笑みを浮かべそうになる。アレは自分の役割が分かってる顔だ。



 いい探索者になるだろうな、アイルは。



「いいぞ! 撃て!!!!」



 叫ぶと同時にペラゴルニスから飛び降りる。アイルは、杖を構えてペラゴルニスに狙いを定めていた。その杖の先端で、電撃のエネルギーが(ほとばし)る。



「く、食らいなさい! 電撃魔法ライトニング!!」



 アイルの杖から電撃の球体が放たれる。バリバリという音を轟かせながら、その球体はショートソードに吸い寄せられるように直撃した。


「ギャギャギャギャアアアアッ!?」


 ペラゴルニスが盛大にダウンし、大地をのたうち回る。


〈うおおおおおお!!?〉

〈アイルちゃんやる〜!〉

〈ボス感電してるじゃん!〉

〈今いけるやろ!〉

〈攻撃しろ!〉



「アイル! 俺の合図でもう一度電撃魔法(ライトニング)撃て!」



「任せて!」



 アイルが魔力を貯めるのを横目に、ダガーでペラゴルニスに5連撃を浴びせる。ヤツが脚で攻撃した瞬間をローリングで回避し、再びアイルに電撃を撃たせる。



「ギャギャギャギャアアアアッ!?」



 再びペラゴルニスが盛大にダウンした。



〈お……?〉

〈こりゃあ……?〉

〈もしかして〉



 アイルが魔力を貯めるのを横目に、ダガーでペラゴルニスに5連撃を浴びせる。ヤツが脚で攻撃した瞬間をローリングで回避し、再びアイルに電撃を撃たせる。



「ギャギャギャギャアアアアッ!?」



 ペラゴルニスが盛大にダウンした。



 アイルが魔力を貯めるのを横目に、ダガーでペラゴルニスに5連撃を浴びせる。ヤツが脚で攻撃した瞬間をローリングで回避し、再びアイルに電撃を撃たせる。


〈wwwwww〉

〈パターン入ったww〉

〈ボスw涙目www〉

〈ハメ殺しやんけw〉



 ……。



 …。




「ギャギャギャギャアアアアッ!?」



 6度目のハメ攻撃の最後に、ペラゴルニスの頭部へとダガーを突き刺した。



「うおおおぉぉぉ!!」



 盛大に飛び散る血飛沫。のたうち回るペラゴルニス。苦しむ黒鳥から距離を取る。



「ギャアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!?」



 一際大きな鳴き声を挙げた後、迷いの森の主はゆっくりと崩れ落ちた。



〈うああああああああああ!!〉

〈勝ったああああああ!!〉

〈ハメ勝ちじゃんwww〉

〈SUGEEEEE!!〉

〈ドラゴンゾンビより強いんだろ!?〉

〈ヤババッ!?〉

〈面白いヤツだな:wotaku〉



 森全体に響き渡る断末魔の咆哮。その後、ダンジョンの主、黒鳥ペラゴルニスは息絶え、帰るための転移魔法が現れた。






 次回に1話アイルちゃんの話を挟みまして、その次は掲示板回です。


 楽しかった、続きが少しでも気になる思われましたら


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あー……もしかしてゴリ押しで倒されるからモーション対策されなくて強化されないのかな……
[良い点] ペラゴルニス「は、ハメはウチのシマじゃ禁止だったから対応出来なかっただけだし(負け惜しみ」
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