第49話 鎧 vs 武者【ボス戦配信回】
〜461さん〜
ショートソードを叩き付ける。しかし武者の刀に阻まれ、反撃の斬撃が放たれた。それを剣で受け流し、ショートソードを斬り上げる。だがそれも僅かに兜を掠めるだけで、ヤツの本体を捉えることはできなかった。
「うおおおぉぉ!!!」
「ぬおおおぉぉ!!!」
同時に放つ剣撃。刃が交じり金属音が響いた。ショートソードと刀が交わりギリギリと鍔迫り合いに持ち込まれる。力は僅かに武者の方が力が強いか。
「ひさびさのたけきたたかひなり!!」
「たけきってなんだよ!!」
〈鎧vs武者じゃん!〉
〈熱いw〉
〈てか461さん勝てんの?〉
〈人型と戦うの初めて見る〉
〈ボコボコにされちゃうねぇ……〉
〈またアンチかよ〉
武者の足を払い、それと同時に刀をいなす。バランスを崩したヤツの面に拳を叩き込んだ。
「オラァ!!!」
「ぐぬぅっ!?」
倒れ込む武者。その首すじにショートソードを突き刺そうと振り下ろす。が、武者は大地を転げ回り俺から距離を取った。
「これはかわせるか!?」
飛び起きた武者。ヤツが背中の弓を構える。どこから現れたのか黒い矢をつがえ、ギリギリと弦を引いた。
「くっ!!」
咄嗟にナイフを武者へと投げ付ける。ヤツは半身だけ逸らすと、軌道を読んでいたかのように紙一重でナイフを躱す。攻撃察知能力が高い……隙を狙うしかないか。
「われにかようなとびどうぐはきかぬ!!」
放たれた矢を走って避ける。連続で放たれた矢が俺のすぐ足元へと突き刺さる。ギリギリの位置……というかどうやって次弾装填してんだよ。早過ぎるだろ。
「にげるとはひきょうなり!」
「うるせぇ!!」
盾を構え武者へと突撃する。再び放たれた矢が、盾に突き刺さる。耳が痛いほどの金属音。ちっ。グランチタニウムの盾を突き破る威力かよ。
〈うわあああああ!?〉
〈弓矢強すぎワロタw〉
〈金属の盾突き破る威力とか〉
〈てか461さん盾装備してたっけ?〉
〈今回初めて見たんだ!〉
〈盾役立って無いやんけwww〉
一瞬、意識が盾に向かってしまう。ヤツはその瞬間を待ち構えていたかのように再び飛び込んで来た。
「しねぃ!!」
「うおっ!?」
袈裟斬りの剣線。それを体捻って躱わすが、すぐさま武者が刀を返し横薙ぎの斬撃を放つ。一息での二連撃。一瞬でも気を緩めれば真っ二つにされるなこれは。
横薙ぎの一撃をバックステップで回避した瞬間、ヤツに隙が生まれた。首筋の継ぎ目、そこに狙いを定める。
「うおおおおっ!!」
ショートソードで突きを放つ。その切先が武者の首を突き刺さ──。
「あまひ!!」
武者の面の奥。その瞳がギラリと光を放ち、ヤツがショートソードの刀身を足で踏み付けた。
「お前っ!?」
ちっ。「見切り」のスキルまで持ってやがるのか。
〈はあ!?〉
〈どうなってんだよ!?〉
〈足の動きが見えなかったんだ!〉
〈思ったより柔軟で草〉
〈見切りのスキル:wotaku〉
〈なんなんだ!?〉
〈見切りは発動すると物理攻撃を1度だけ確定回避する:wotaku〉
〈なんだよそれ!〉
〈ズルイんだ!〉
〈461さん死んでしまうん?w〉
「もらったああああ!!」
両手で振り下ろされる刀。渾身の一撃。それが俺のヘルムへと迫る。
〈うあああああああ!?〉
〈無防備なんだ!?〉
〈逝ったああああああwww〉
〈今まで運だったからしゃーないw〉
〈グロそう〉
〈461さん……死なないでぇ……〉
お前がそう来るなら俺も返させて貰うぜ。
タイミングを測る。見切りのスキルは一度発動してからクールタイムがある。僅かな時間だが、その間なら確定回避はできない。
もう少し。盾を構えろ、感覚で測れ。失敗は考えるな──。
「しねぇい!!」
目の前に迫る刀。その刀身が連絡通路に差し込む光を反射し輝きを放つ。
──今だっ!!
盾でヤツの刀を弾く。全力で叩き付けられた腕は、円形の盾で軌道を逸らされあらぬ方向へと腕を弾き返される。武者はバランスを崩し、左側の首筋が無防備になった。
「うおおらああああ!!!」
押さえ付けられたショートソードを捨て腰のダガーを引き抜く。武者の首筋にダガーで一閃を放つと、その首が宙を舞った。
「ぬ"っ!?」
〈!?!!!?!?!!?!?〉
〈うあああああああ!!〉
〈逆転したああああ!!?〉
〈グッロwww〉
〈何した!?〉
〈パリィ。タイミングを測って相手の攻撃を弾き返す盾の基本技:wotaku〉
〈アレで基本!? 剣速やばかったんだが!?〉
〈できる気がしないんだ!?〉
〈誰でも使えるが合わせるのは非常に難しい:wotaku〉
〈ヤバすぎw〉
バタリと倒れ込む武者の体。静まり返る周囲……なんとかなったな。
〈たいじんせんもつよひ……〉
〈武者の真似すんなw〉
〈鎧の中……良い身体してそう……ふひっ……ジークリードとは違う魅力〉
〈女ヲタさん寄って来たw〉
〈僕もアイルちゃん達の方見に行くんだ!〉
〈マグレやろこんなん!〉
〈アンチ顔真っ赤で草〉
魔法障壁の方を見ると、アイルが氷結晶魔法でトレント達を凍らせている所だった。あれなら、ジークの波動斬でまとめて粉々にできる……考えたな。
倒れた武者の足元からショートソードを拾い上げる。
その時。
武者の手がピクリと動いた気がした。バックステップでヤツから距離を取る。
首を飛ばされた武者。その体が突然のそりと起き上がった。
〈!?!?!?!!!?〉
〈タッタアアアアアアアアアア!?〉
〈え、なんで?〉
〈アンデッドか?〉
〈首無し武者「やぁ」www〉
〈ボケとる場合か〉
武者の体はヨロヨロと起き上がり、跳ね飛ばされた首を拾うと、その首をこちらへと向けた。
「おこたりき。つぎはこうぞいかぬ」
そう言うと武者は黒い影のように変化し、周囲に溶け込むように消えていった。
〈消えた!?〉
〈影? どういう原理?〉
〈スキルかも:wotaku〉
〈どんなスキル?〉
〈シャドウバットの固有スキルに似ている:wotaku〉
〈回避に使うんですね分かります〉
〈移動しかできない。そういうスキル:wotaku〉
〈弱っ!?〉
影になって消えた……か。武者でそんなスキル持ってるヤツいたか?
その光景が、今回のダンジョンはいつもと違うと告げているような気がした。
次回はアイルちゃんサイドの戦闘です。アイルちゃんの内面に注目下さい。