第33話 リレイラさんのデート前
〜ダンジョン管理局 課長 リレイラ〜
PC画面をスクロールする。掲示板サイト「6ちゃんねる」のダンジョン板。その中のあるスレではブリッツアンギラ戦の話題が持ちきりだった。
ヨロイ君達が攻略した品川ダンジョン。その動画もかなり反響があるようだな。何故かこのスレの住人はブリッツアンギラのことが好きみたいだが……世の中は広い。変わった者もいるものだ。
「それにしても……品川まで生態系が変わっているとは」
別ウィンドウでホームページを立ち上げる。この12年間、私が偽名で運営を続けた東京のダンジョン攻略情報サイト。
あらゆるダンジョン配信に目を通し、そこで得た情報と持ち得る知識で更新してきたが……それも通用しなくなってきたな。
「やはり……新情報を都度更新していかないと」
今はまだ、スキル特化による無双攻略が通用しているがいずれは……5年間続いたダンジョンでの死者「0」の記録が破られた時がターニングポイントか。
「う〜！ なんとかしないとな〜！」
伸びをしてメガネを外す。ブルーライトのせいか目が乾燥している気がする。私も、もっと体を労らないとな。
スマホのアラームが鳴る。ダンジョンのことを考えるのはここまでにしておこう。
頭を切り替えよう。せっかく昨日勇気を出したんだから。
「ふふっ。休みにヨロイ君と会えるなんて」
まさか自分からそんな誘いができるとは思わなかった。ヨロイ君の探索準備を見たいと言ったが……これは、デ、デートみたいな、ものだよな？
「うぅ……ドキドキする……」
くっ。最近は感情を表立って出してしまう時があるから困るな。
鏡を見る。鏡の中の私は笑いを堪えているような顔をしていた。うっすら赤くなってる頬。ヨロイ君のことを考えるだけでこんな風になってしまうなんて。
やはり私は……いや、考えないようにしよう。この言葉は認識しちゃダメだ。彼に迷惑だから。
頭を振って鏡の前で服を合わせる。白い春用ニットにパープルのシースルースカート。こういう時の為にと買っておいたけど……似合ってる……かな？
ヨロイ君、こういう服は好きだろうか？ いつもスーツばかりだったし、新鮮に思ってくれるかな？
私に……あ、ダメだ。これ考えてたらずっと止まらないヤツだ。
「今日はこの服にするって決めたじゃないか。早く着替えて、行こう。ヨロイ君を待たせてしまう」
でも、準備をしようとすると色々なことが頭をよぎってしまう。
どうしよう。その後ヨロイ君の家に行くとか言う流れになったら……し、下着も変えた方が……いや！！ 何を考えているんだ私は！！ さっき迷惑だからとか思ったばかりだろ！
恥ずかしさでベッドに倒れ込んでしまう。こういうのには慣れてないからなぁ……。
……。
結局無駄に準備に迷ってしまい、気が付いたら待ち合わせの時間ギリギリになっていた。
「え！？ もうこんな時間か！？」
急いで準備して家を飛び出す。
ヨロイ君にとってはいつもの日常かもしれないけど、そこに一緒にいられると思うと、すごく嬉しい。
私も今日くらい夢見ても、いいよね？
次回はリレイラと461さんのデート？の様子をお届けします。
